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マドンナ「MADAME X TOUR」ロンドン公演ライブレポート:あえて数千人規模の会場を回るポップスターの素晴らしきパフォーマンス

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Photo Credit Ricardo Gomes

2019年6月に発売されたマドンナのアルバム『Madame X』は、自身9度目となる全米アルバム・チャート1位を獲得し、女性アーティストとして全米チャート最多1位獲得記録でバーブラ・ストライサンドに次いで史上2位という記録となっている。

そんな彼女がそのアルバムをひっさげ2019年9月からワールドツアー「MADAME X TOUR」を開始。通常であれば世界中で数万人規模のスタジアムを満杯にできるマドンナだが、今回はあえて数千人規模のシアターにてツアーを実施。そのツアーのロンドン公演について、元レコード会社の社員で、現在はロンドンにある音楽スタジオ「Metropolis Studios」で働く吉岡 仁氏によるレポートを掲載します。


2020年2月2日のロンドンはちょうどBrexit(UKの欧州連合離脱)でEUからUKが離脱した直後で、ロンドン南部でテロ災害があり若干物騒で、先日のロンドンやリスボン、ニューヨーク公演のキャンセルもあったので、期待と不安、若干の身の危険も感じながら会場のロンドン・パラディウムに向かった。ロンドンのSoho近辺には大小さまざまなシアターがあり、このパラディウムもそのひとつ。2018年には渡辺謙の出演でトニー賞を獲得した「王様と私」の会場として知られる場所だ。

会場に着くとかなり入念なセキュリティ・チェックと、今回のツアーはスマホの使用を全面的に禁じていることもあり携帯電話は専用の鍵付きポーチに封じられた。案内された2階席に到着するとフロント・アクトらしき3人がギター、カホンでマドンナのヒット曲をインストゥルメンタルで演奏していて、すでに会場の一部は合唱状態。通常ならスタジアムでツアーすることができるマドンナだが、今回はあえてのホールツアーということで約2000人収容の小さな劇場内でウェーブが起こったりとファンの期待がマックスに。

ところが、、、待てどもコンサートが始まる様子はなくステージ上に天井から釣られた横断幕に投影されたXの文字を見つめながら待つこと1時間、「もしかしてキャンセル?」という不安もよぎる中、本人の声が会場に響き渡ると横断幕が上がりMadameXのマニュフェスト(今回のアルバム『MadameX』のコンセプトでもある)の映像が巨大なスクリーン、会場の壁に投影される。

Photo by Stufish

Photo by Stufish

次いでダンサーと同じ衣装(“X’の眼帯も)に身包んだマドンナ本人が登場!しょっぱなから「Vogue」で会場はアガりまくり!ハウス系の「I Don’t Search I Find」をはさみ、「American Life」でアメリカ国旗をバックに戦闘服に身を包んだダンサーがステージを盛り上げた。さらに「Coffin」、シングル・カットされている「Batuka」ではミュージック・ビデオにも登場する元ポルトガルの植民地で奴隷貿易港として有名なカーボ・ベルデ共和国からの15人のコーラスを従えBatuka(ハンドドラム)のグルーブが会場に響きわたった。

Photo by Stufish

今回のツアーセットのサイズは、シンプルな稼働式の階段が前後左右に動き回り、ブロードウェイのミュージカルを彷彿とさせる。この白い階段がテトリスのように組み合わせが変わり、その表面に映像が投影される。

ここでセット・チェンジと衣装チェンジ。マドンナはネイビー・カラーのショート・ドレスに黒髪で登場。続いて国際政治、人種差別問題を取り上げた「Killers Who Are Partying」、「Crazy」はポルトガルの酒場のような場所で夜な夜な演奏されるファド(ポルトガルを代表する民謡)の演奏者がダンサーと混ざってリスボンの古き良き週末の夜のような演出が見事。ドラムやエレキ・ギター、シンセなどはないがファド演奏するパフォーマーはライヴ・オープニング・アクトの3人だと分った。

「Crazy」の後あたりに「La Isla Bonita」のファド・カヴァーでまた往年のファンを喜ばせたと思ったら客席まで降り立ち、観客の一人のフランス人と会話。フランス語で受け答えしながら彼のビールを奪い取り「飲んであげる。STD(性感染症)に掛かっては無いわよね」とジョークを交えながら会場を笑いに包んだ。

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今回のツアーではどの会場でもこの親密感あふれる観客とのトークと本人のセルフィー・ポラロイド写真のオークションは毎回行われていた様で、この日のポラロイドは1,700ポンド(約20万円)で現金にて落札された!(この様子はMadonnaのInstagramで確認できます)

 

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インドのタブラという独時のボンゴ・ドラムのビートがマッチした「Extreme Occident」を挟み最新アルバムのファースト・シングル「Medellín」のコーラス部分の「ワン、トゥー、チャチャチャ」で会場を巻き込んで合唱。アルバムのプロモーション時にかなり話題となったコロンビアのレゲトン・アーティストMalumaはビデオ出演のみではあったがマドンナはダンスでステージ上を所狭しと動き回り、一部のツアー・キャンセルの原因となった膝の痛みを全く感じさせなったのは元々ニューヨークのダンサーとしてキャリアをスタートしたプライドであろう。

Photo by Ricardo Gomes

再度衣装チェンジがありアルバム『Ray of Light』から「Frozen」に次いでコーラス隊に混ざってソウルフルに歌い上げた「Come Alive」では「アーティストは平和をぶち壊してこそアーティストたるもの」という彼女の発言を思い出させた。本人もこの曲のパフォーマンスが一番気に入っていると言っていたのも頷けるほどカラフルな衣装と合唱に会場が包み込まれる。

本人は登場しないがミーゴスのクエーヴォをフィーチャーしたレゲエ・ビートの「Future」、そしてステージ転換があり昨年のユーロヴィジョン・コンテストでのパフォーマンスも話題となった「Like A Prayer」を「Come Alive」と同じ15名のコーラス隊を従えて会場を歓喜の渦に包み本編が終了。

アンコールでの「I Rise」ではLGBTのシンボルでもある巨大なレインボー・フラッグがステージに掲げられると会場は総立ち。こぶしを高々と突き上げながらステージからゆっくりと観客席におり立ちコーラス、ダンサーとともに練り歩きながら会場を後にした。

今回のツアーはシアターに絞ってアメリカのニューヨーク、ロサンゼルス、マイアミ、フィラデルフィア、サンフランシスコ、ラス・ベガスらの48公演に加え、ポルトガルのリスボン、ロンドンそしてフランスのパリで32公演。そのうち11公演がすでにキャンセルとなっている。現在61歳という年齢やキャリア、その体調を考慮するとキャンセルしても被害の少ないキャパの低い箱を選んだのは正解とも思えるが、生涯を通じてスタジアム・ツアーを何度も行ってきたマドンナがキャンセルなどを事前に考えてツアーを組むなどとは思えない。

ハイ・レベルのダンスとクリティブ・センス、Instagramに数多くポストされたコンサート後のセラピーも含めステージに立つというプロフェッショナリズム、決して過去のヒット曲を連発するセットリストに浸らないというアーティトとしての自覚等などを見せつけてくれた素晴らしいコンサートとなった。

Photo by Stufish

ちなみに会場を出たところでオープニング・アクトとしてや、本編でのほとんどの曲でパフォーマンスした3人に声を掛けてみたのだがそれぞれポルトガル出身で特にバンド名もない個人のミュージシャンだそうだ。高野裕子氏による本人へのインタビューで度々本人が触れていた「リヴィング・ルームセッション」で出会ったものと想像できる。

さらに今回のステージ上で見事なチェロを奏でていたのは、現在アメリカ在住でシルク・ドゥ・ソレイユやシャキーラなどのツアー・メンバーにも抜擢され活躍している村中麻里子さん。翌日お時間を作って頂き色々とマドンナとの出会い、今回の「Madame X」ツアーに参加する事になったいきさつを語ってくださった。彼女についてのプロフィールはご本人の公式サイトでぜひ

Written By 吉岡 仁(ロンドン)
* ライブ写真同ツアー別会場のもの

Photo by Stufish

Photo by Ricardo Gomes


セットリスト

Act I
– Madame X Manifesto (Video Introduction)
1. Vogue
2. I Don’t Search I Find
3. American Life

Act II
– Coffin (Video Interlude)
4. Batuka
5. Fado Pechincha (Isabel De Oliveira cover)
6. Killers Who Are Partying
7. Crazy
8. La Isla Bonita (With excerpts from “Welcome… more )
9. Medellín
10. Extreme Occident

Act III
– Rescue Me (Dance Interlude)
11. Frozen
12. Come Alive
13. Future
14. Like a Prayer

Encore:
15. I Rise


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