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リル・ベイビー(Lil Baby)のベスト10曲:カリスマと才能でシーンを席巻する若きスター
アトランタのラッパー、リル・ベイビー(Lil Baby)。彼が、2020年6月12日にBlack Lives Matterを受けて発表した新曲「The Bigger Picture」が6月23日付けの全米シングル・チャート3位に初登場し、自身のチャート記録を更新した。
この楽曲は察官による黒人男性殺害事件に対する抗議デモ、システム化された人種差別、そしてBLMムーヴメントについて訴えかけるプロテスト・ソングとなっており、曲の冒頭には、暴動、抗議デモの報道や、デモ隊が “I can’t breathe” (殺害されたジョージ・フロイドさんが何度も警察官に繰り返した言葉)と連呼する声が流れている。また、この曲の売り上げは、人種差別問題に関わる4つの団体に寄付することも発表している。
彼が2月28日に発売したセカンド・アルバム『My Turn』は全米アルバム・チャート初登場1位を獲得。約3か月後、6月11日付けの全米アルバム・チャートで1位に返り咲き、そのまま3週連続1位となる通算4週1位を記録し、ザ・ウィークエンドの『After Hours』と並び2020年の首位獲得回数記録のタイに。アルバムは123万枚を売り上げて今年アメリカで最も売れたアルバムとなっている(6月28日現在)。
また、リル・ベイビーは自身の楽曲だけではなく客演でも幅広く活躍しており、今年だけでもマネーバッグ・ヨー、リル・ウェイン、フューチャー、ブラック(6lack)、リル・モジーといったベテランから10代の若手までの楽曲にゲスト参加している。
本稿ではそんな彼の過去の楽曲についてベスト10曲を解説する海外記事をご紹介。
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生まれ持ったカリスマ性と天性のラップの才能を持ったリル・ベイビーが、消極的なヒップホップ・スターだったことは信じがたい。ヒップホップ・レーベル“クオリティ・コントロール(Quality Control)”が生んだ新進気鋭のヒットメイカーとして、いとも容易く急成長を遂げたように思われるかもしれないが、実は今の成功は緻密に計画されていたのだ。2017年に、アトランタのラップ・シーンに初めて登場した後、彼は11ヶ月で4つのプロジェクトを発表し、さらに翌年には7ヶ月という短い期間に3つのプロジェクトを着地させ、これまでにリリースしてきた最高の楽曲のための舞台を整えていった。
1994年生まれ、現在25才という人生の中で様々な経験を積んできたリル・ベイビーは、苦難続きのストリート時代に培った強い精神力を、音楽キャリアにも発揮していった。当初、彼はラッパーになるという野望を持っていなかったが、幼馴染であるヤング・サグがトラップ・シーンの大物になったことに触発され、クオリティ・コントロールの共同創設者であるピエール・”ピー”・トーマスの激励も受けながら、自らの才能を活かすことを決心した。
クオリティ・コントロールから発表した一連のミックステープやアルバムで成功を収めた後も、リル・ベイビーは、自らのスキルを磨き、カリスマ性と剥き出しの才能に溢れた、称賛に値するトラックを毎回リリースしてきた。この記事では、ここまでのリル・ベイビーのキャリアを形成してきた最高の10曲を紹介しよう。
10位「Life Goes On’ (featuring Gunna and Lil Uzi Vert)」
キー・グローバルがプロデュースを手掛けたこのトラックは、リル・ベイビーが2018年に発表したデビュー・アルバム『Harder Than Ever』の中で輝きを放つ1曲だ。ミックステープのリリース競争によって名を馳せた後、彼はメジャー・レーベルからのスタジオ・アルバムでも成功できることを証明したのだ。
「Life Goes On」では、リル・ベイビー、ガンナ、リル・ウージー・ヴァートの3人が、女や金、富についてラップしながら、それぞれの役割を完璧にこなしている。この曲はアルバム『Harder Than Ever』の中でも特に際立つアンセムで、楽曲に独特のメロディを取り込む彼の能力を証明している。
9位「To The Top」
「To The Top」はリル・ベイビーの楽曲の中でもとりわけスロウでセンチメンタルなトラックだ。彼は、モチベーションを保ちながら名声に順応することについてラップしており、自らの成功を認識しつつも、さらなる高みを目指していかなければならないと肝に銘じる気持ちとの間に揺らぎを感じている。名声がもたらす孤独を表現する一方で、自分自身の未来のためだけでなく、彼を頼りにする人々に向けてラップをしているのだ。
2017年のミックステープ『Too Hard』のハイライト曲である「To The Top」は、予言的なヒットとなり、今にもシーンを征服しようとしていたリル・ベイビーのキャリアを方向付けた。
8位「Never Needed No Help」
リル・ベイビーのデビュー・アルバム『Harder than Ever』からは次々とヒット曲が生まれた。2018年の全米アルバム・チャートに3位で初登場した今作は、後にゴールド・ディスクに認定されている。
「Never Needed No Help」は、リル・ベイビーの意欲と野心を証拠づける曲だが、音楽の世界に入ることを決める以前に、彼がすでに成功していたことも指摘している。ラップを始める前のリル・ベイビーは、自分と家族がより良い生活を送れるように堅実にお金を稼ぐことに専念していた。彼が天性の能力を持ったラッパーへのキャリア・チェンジは起こるべくして起こったのだ。
7位「Drip Too Hard (feat. Gunna)」
リル・ベイビーの曲の中で繰り返される真言の1つは、仲間と成功を分かち合うことであり、ミックステープ『Drip Harder』はその精神を具現化している。ラッパー仲間であるアトランタ出身のガンナとタッグを組んだ2018年の同作品には、2人のコラボ・トラックが多数収録されている。
ターボがプロデュース手掛けた「Drip Too Hard」では、叩きつけるような808ベースに乗せて、自慢話を交す両アーティストの魅力が最大限に引き出されている。このトラックは、全米シングル・チャートで4位を獲得し、2020年のグラミー賞で“最優秀ラップパフォーマンス”にノミネートされるなど、当時の両者にとって過去最高のチャート記録となった。
6位「Global」
2018年のミックステープ『Street Gossip』に収録の「Global」では、リル・ベイビーが思いがけず得た名声と向き合いながら、内省的になっている様子が窺える。彼が昔住んでいた近所の人々、刑務所にいる友人や彼の家族を手助けすることについてラップをしており、彼らが自分を頼りにしているためラップをやめることはないと主張している。成功についての曲ではあるものの、リル・ベイビーはその名声が自身のメンタルヘルスに影響を及ぼしていることを認識しているのため、若干陰鬱な雰囲気も漂わせている。
5位「Pure Cocaine」
最高の人生を送っているリル・ベイビーにとって、この「Pure Cocaine」は彼が得た富への完璧なアンセムであり、自らの実生活について、事実を歪めることなくラップをしていることを彼は誇りに思っているのだ。自らの歌詞の内容を誇張する必要などないと自慢する「Pure Cocaine」で、彼は新たな人生への感謝の気持ちを表現し、また自身の成功は努力の賜物としている。
4位「Woah」
ヘヴィな808とリル・ベイビーのメロディックなフロウを取り入れ、SNSでヴァイラル・ヒットとなったダンスもあわせて今年最大のヒット曲の1つであるこの「Woah」で、リル・ベイビーはハイプマンとして登場し、新たな成功を見せつけている。「新車はすげぇ音なんだ」「稼いだと言ってもいいだろう」と彼がラップする「Woah」では、このシングルに続くセカンド・アルバム『My Turn』のテイストを披露し、リル・ベイビーの最高のトラックがまだまだ待機していることを証明した。
3位「Baby (feat. DaBaby)」
“クオリティ・コントロール”に所属する様々なアーティストを紹介するコンピレーション『Control The Streets, Vol.2』に収録されているこのヒット曲には、2人のベイビーが登場する。過去にもタッグを組んできたリル・ベイビーとダベイビーにとって、この曲「Baby」は3度目のコラボレーションとなった。
同曲のミュージック・ビデオでは、ブライアン・デ・パルマ監督のカルト映画『スカーフェイス』のオマージュとも言える内容で、彼らは、罠に嵌った過去や、成功を謳歌する現在をラップで行き来しながら、お互いを補完し合っているのだ。
2位「Sum 2 Prove」
アルバム『My Turn』からの3作目のシングル「Sum 2 Prove」は、リル・ベイビーが名声と富を手に入れた今、自分の人間関係に疑問を抱いていることを示唆している。だが、彼は成功のスピードを緩めるわけではなく、些細な争いに巻き込まれることを拒否している。彼のラップからも伝わるように、自分のフロウに対する自信はより顕著に現れている。
We finally made it, let’s pop us some bottles
I took the lead and then everyone followed. They know I’m runnin’ it right to the bank
They want me to ease up, I didn’t leave ’em any breathin’ room
Sorry, I told ’em, I can’t/I gotta be one of them greats
俺たちはついにやったんだ、ボトルを開けようぜ
俺が先導して、皆がついて来た/俺が銀行に金を預けにいくのを知ってるんだ
彼らは俺に少しスピードを緩めさせたいみたいだが、そんな暇はない
悪いがそれは無理だ と言った/俺は偉人の仲間入りをするのさ
1位「Freestyle」
リリースを重ねるごとに洗練されてきたリル・ベイビーだが、彼の初期のミックステープにみられた渇望と不屈の精神こそが彼を王者候補へと伸し上げていったのだ。ミックステープ『Too Hard』に収録されている「Freestyle」は、リル・ベイビーのベスト10曲の頂点を飾るに相応しく、彼のキャリア初期のスタイルを定義づける作品だ。
ジョセフ・ダヴィンチがプロデュースを手掛けたこの曲は、リル・ベイビーの道を切り開いた全ての人々の名前や場所に言及し、感謝の言葉を散りばめている。何年も前から自ら主張していたこと全てに忠実に生きてきた彼は、今後もその自信を膨らませながら、ヒットを連発し続けていくだろう。
Written By Alyson Lewis
リル・ベイビー「The Bigger Picture」
2020年6月12日配信
iTunes / Apple Music / Spotify / Amazon Music
リル・ベイビー『My Turn (Deluxe Edition)』
2020年5月1日発売
iTunes / Apple Music / Spotify / Amazon Music
- リル・ベイビー(Lil Baby)が名声を成すまでの6つのステップ
- 全米1位の楽曲「Rockstar」にダベイビーが込めた想いとブラック・ライヴス・マター
- ラッパー、ダベイビー(DaBaby)が最強の理由:その経歴と3曲のMVから読み解く
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