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史上最高のインディーズ・レーベル・ベスト20:世界を変えた独立レコード会社たち
近年、“インディ”という言葉はギターを中心にした現代のポップ音楽に対して未だに使用されるなど、乱用されすぎる傾向にある。だが“インディペンデント / 独立”の短縮形である“インディ”は本来、もっと重要な意味を持つ略語だった。つまりそれは、自己資金のみで運営しながらも大きな影響力を誇ったレコード・レーベルの数々を形容する言葉だったのである。
そうしたレーベルは型破りな音楽ファンによって設立され、多くの場合、メジャー・レーベルより先に未来のスーパースターを発掘していった。uDiscover Musicはこの記事で史上最高のインディーズのレコード・レーベルの数々を順不同で紹介することによって、その言葉にいまさらながら敬意を表したい。
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1. アイランド / Island
アイランドに残された膨大な作品群 (U2、ロキシー・ミュージック、ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズといったアーティストの諸作も、氷山のほんの一角に過ぎない) はあまりに強力であり、零細企業だった設立当時のことは忘れられがちである。
クリス・ブラックウェル、グレアム・グッダル、レスリー・コングの三人によって1959年にジャマイカで設立された同社は、もともと他社から完全に独立したスカとレゲエの専門レーベルだったのである。
2. トロージャン / Trojan
1968年にロンドンで設立され、多大な影響力を誇ったトロージャン・レコード。そのレーベル名はレゲエ界のレジェンドであるデューク・リードのサウンド・システム (もとはといえば、彼のスピーカーを運搬するために必要だった7トン・トラックのブランドに由来する) から取られている。
創業から50年以上が経ったいまも同社の経営状況は順調で、ダブ、ロックステディ、スカなどの優れた作品をブレることなくリリースし続けている。
3. ハーヴェスト / Harvest
ハーヴェストは1969年、プログレッシヴ・ロックのアーティストを売り込むために、EMIによって創設されたレーベルだったが、その経営に当たっては一貫して健全な自主性が維持されてきた。
現在も存続するハーヴェストは、これまでにピンク・フロイドの『Ummagumma』から、ワイヤーの『Pink Flag』、リバティーンズの『Anthems For Doomed Youth』に至るまで、実に幅広い作品を世に送り出してきた。
4. オール・レコード / Ohr
オール・レコードは、ロルフ=ウルリッヒ・カイザーとハンザ・レコードの創設者であるピーター・マイゼルにより設立された、ドイツの電子音楽/実験音楽シーンの先駆的レーベルである。
1970年から1974年まで営業したオール (“耳”を意味するドイツ語に由来する) は、アシュ・ラ・テンペルやポポル・ヴーらによる実験的なドイツ音楽の重要作を次々にリリース。その中には傑作『Zeit (われら、時の深渕より叫びぬ!) 』をはじめとする、ヴァージンに移籍する前にタンジェリン・ドリームが残したすべてのアルバムも含まれている。
5. スティッフ・レコード / Stiff
スティッフは1976年後半に、英国初のパンク・シングルとされるダムドのレコード「New Rose」をリリース。それにより、パンク時代を代表する独立系レーベルとしての評価を確立した。
同社はまた、所属アーティストを売り出すために (複数アーティストによるパッケージ・ツアーから、“If It Ain’t Stiff It Ain’t Worth A F**k” [硬くないとヤる意味がない、の意] などのスローガンが書かれたバッジまで) あらゆる宣伝手法を頻繁に考え出したことでも知られる。スティッフはその後も、エルヴィス・コステロ、イアン・デューリー、マッドネス、ポーグスら一流アーティストのレコードを扱った。
6. ラフ・トレード・レコード / Rough Trade
ラフ・トレードは1978年に、ジェフ・トラヴィスがロンドンに所有していた同名のレコード店から発展して誕生した。
インディー・レーベルのレコードとして初めて英国内で10万枚を売り上げた作品 (スティッフ・リトル・フィンガーズのデビュー・アルバム『Inflammable Material』) を手がけたことや、スミスやストロークスと契約したことなど、このレーベルの功績は枚挙にいとまがない。
7. ファクトリー・レコード / Factory
グラナダTVの司会者だったトニー・ウィルソンが共同設立者となり、1978年にマンチェスターで誕生した象徴的なレーベル。
ファクトリーはジョイ・ディヴィジョン、ニュー・オーダー、ハッピー・マンデーズ、ジェイムスらの作品を後世に残し、伝説的な名物クラブであるハシエンダも生み出した。しかしながら、最終的には口頭での契約やずさんな会計処理が仇となり、1993年に倒産している。
8. ミュート・レコード / Mute
現在も大きな影響力を持つミュートはもともと1980年代前半のシンセ・ポップ・ブームの最前線で活躍し、優れた独立系レーベルとしての評価を確立した。
ダニエル・ミラー (ザ・ノーマルの名で作曲/レコーディングした「Warm Leatherette」はのちグレイス・ジョーンズによってカヴァーされている) により設立されたこのレーベルには、デペッシュ・モード、イレイジャー、ゴールドフラップ、ニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズらが長きに亘って在籍してきた。
2002年にはEMIの傘下に入ったが、のちに独立性を回復し、近年ではニュー・オーダーの『Complete Music』などをリリースしている。
9. ディスコード・レコード / Dischord
ディスコードは、イアン・マッケイとジェフ・ネルソンが1980年にワシントンD.C.で起ち上げたレーベルだ。彼らは、自給自足生活を送っていたイギリスの伝説的なアナーコ・パンク・バンド、クラスのDIY精神から影響を受けていたという。
ワシントンD.C.のハードコア・シーンを象徴する同レーベルはフガジ、マイナー・スレット、ライツ・オブ・スプリングらによる画期的な作品を次々にリリース。現在も独立性を断固として保ちながら営業を続けている。
10. フライング・ナン・レコード / Flying Nun
レコード店の店長だったロジャー・シェパードによりニュージーランドのクライストチャーチで設立され、たくましい経営を続けてきたフライング・ナン。
このレーベルは、1980年代にチルズ、クリーン、ジャン=ポール・サルトル・エクスペリエンスといったニュージーランド国内のギター・ポップ・グループの作品を扱ったことで名を知られるようになった。そして実に多様なそれらのレコードは、現在も色褪せない魅力を誇っている。
11. タッチ&ゴー・レコード / Touch & Go
シカゴに拠点を置き、ノイズ・ロックやポスト・ロックに強みを持つタッチ&ゴーは、1980年代から1990年代にかけてスティーヴ・アルビニ (所属バンドのビッグ・ブラックやシェラックのほか、彼がプロデュースしたスリントなど) と幅広く協力していた。
また同時期には、のちにメジャー・レーベルへと巣立っていくジーザス・リザードやアージ・オーヴァーキルなどもこのレーベルに所属した。そして2000年代に入ると、タッチ&ゴーはヤー・ヤー・ヤーズ (2002年にEP『Machine』をリリース) やTVオン・ザ・レディオなどニューヨーク出身の有力グループのブレイクを後押しした。
12. クリエイション・レコード / Creation
イギリスの独立系レーベルの中でも、その頂点に位置しているといえるのがクリエイションである。アラン・マッギー率いる同レーベルは常に流行の先端を行っていたが、同社は80年代後半にハウス・オブ・ラヴやマイ・ブラッディ・ヴァレンタインを手がけたことで時流に乗り始めた。
そして全盛期を迎えた1990年代には人気アーティスト (オアシス、プライマル・スクリーム、スーパー・ファーリー・アニマルズらもその一部だ) を数多く抱え、メインストリームを牛耳るまでに成長したのだった。
13. ワープ・レコード / Warp
ワープは1989年、シェフィールドのレコード店の奥の事務室で、政府の補助金を得て設立された。すると1990年代から2000年代前半にかけて、エイフェックス・ツインの『Selected Ambient Works Volume II』、ボーズ・オブ・カナダの『Music Has The Right To Children』、テクノ界のパイオニアであるLFOの『Frequencies』など高い評価を受けた作品を次々にリリース。
そうして創業から間もなく、実験的な電子音楽シーンの最前線で、優れた独立系レーベルとしての地位を確立したのである。
14. キル・ロック・スターズ・レコード / Kill Rock Stars
キル・ロック・スターズ・レコードという反体制的な名称は、オレゴンのアングラ系レーベルである同社にはうってつけに思える。というのも、設立から間もない1990年代、同レーベルはビキニ・キルやヘヴンズ・トゥ・ベッツィーなど、アメリカ太平洋岸北西部のライオット・ガール・ムーヴメントに属するグループにも強みを持っていたのである。
だがキル・ロック・スターズはそのあとで幅広い支持を集めるようになり、ディセンバリスツやスリーター・キニーなどインディー界の大物の作品を次々にリリースした。
15. サブ・ポップ・レコード / Sub Pop
1986年にファン雑誌からレコード・レーベルへと発展してシアトルで営業を始めたサブ・ポップは、ニルヴァーナ (『Bleach』) 、サウンドガーデン (いずれもEPの『Screaming Life』と『Fopp』) 、マッドハニーらによる初期の重要作をリリース。グランジを一般大衆へと広めることに大きく寄与した同社の功績は、これからもたたえられ続けることだろう。
16. ドミノ・レコード / Domino
ロンドンに拠点を置くドミノは1993年の創業以来、英米両国の大ヒット作品に数多く出資してきた。ローレンス・ベル率いるこのレーベルは、ペイヴメントやセバドーといった米国のカルト・ヒーローたちの作品も手がけてきたが、同社が特に大きな注目を集めたのは00年代中期のこと。
その時期にはフランツ・フェルディナンドによるセルフ・タイトルのデビュー作や、マルチ・プラチナに認定されたアークティック・モンキーズの『Whatever People Say I Am, That’s What I’m Not』などがリリースされた。
17. スリル・ジョッキー・レコード / Thrill Jockey
スリル・ジョッキーはアトランティック・レコードのA&R担当だったベティーナ・リチャーズにより、1992年にニューヨークで設立された。だがレーベルとしての経営が軌道に乗ったのは、拠点をシカゴに移し、同地の魅力的なオルタナティヴ・ロック・アーティストが数多く所属するようになってからのこと。
それ以来、このレーベルからはトータス、シー・アンド・ケイク、イレヴンス・ドリーム・デイ、ファイアリー・ファーナセスなど、米オルタナティヴ・ポップやポスト・パンクの世界で高い評価を受けるグループの作品が数多く世に送り出されてきた。
18. フィアース・パンダ・レコード / Fierce Panda
フィアース・パンダは、NMEの記者だったサイモン・ウィリアムズが1994年に創設したレーベル。その当初の目的は、複数アーティストによる6つの楽曲が入った7インチEP『Shagging In The Streets』をリリースすることだけにあった。だが1,000枚限定で発売されたこのEPはたった1日で完売。
その後、コールドプレイ、スーパーグラス、プラシーボといった大物グループの初期のシングルをリリースしてきた同レーベルは、現在でも危なげない経営を続けている。
19. グラスノート・レコード / Glassnote
ダニエル・グラスは2007年、独立系レーベルの再興の口火を切るべくグラスノート・レコードを創業。このレーベルにはフェニックスやマムフォード・アンド・サンズなどの人気グループも所属しているが、両グループはいずれもレーベルの設立から数年のうちにグラミー賞に輝いた。
最近では、チャイルディッシュ・ガンビーノやハミルトン・リーサウザー+ロスタムらのアルバムがグラスノートからリリースされている。
20. キャプチャード・トラックス・レコード / Captured Tracks
近年のニューヨークから登場した中でも特に優れた独立系レーベルの一つ。マイク・スナイパーにより2008年にブルックリンで創設された同レーベルは、昔ながらのスタイルを断固として守り抜いている。
限定版カラー・ヴァイナルのリリースに強みを持つキャプチャード・トラックスは、新人アーティストの発掘のほか、クリーナーズ・フロム・ヴィーナスによる4LPのボックス・セット『Volume One』をはじめとして過去のタイトルのリイシューにも力を入れてきた。現在、同社は、引き続き批評家たちから高い評価を得ている。
Written By Tim Peacock
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