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史上最高の女性ベース・プレイヤー・ベスト25

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Photo: Vance Osterhout

下記のリストに目を通し、最初に気づくのは、ここに名を連ねるミュージシャンが、単にベーシスト、もしくは女性アーティストとして抜きんでた存在であるばかりではなく、そもそもミュージシャンとして一級だということだろう。また、彼女たちの大半が、ベーシスト以外の役割にも秀でていることにも驚かされるはずだ。その役割はさまざまだが、ギタリストとしても優れた技量を持ち合わせている者もあれば、ソングライターとして優れている者、フロントウーマンとして並外れた存在感を放っている者もある。

こうしたことを念頭に置き、私たちは、史上最高のベーシストのリストにパンク・ロック、ファンク・ミュージック、そして詩的なロックのキー・パーソンも加えている。まずは、楽器を手にしたミュージシャンの中で、最も多才な女性のひとりから紹介しよう。

以下に挙げるのが、我々の選んだ史上最高の女性ベーシスト25人である。

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25位 : ジョーン・アーマトレイディング / Joan Armatrading

優れたシンガーソングライター、ジョーン・アーマトレイディングが、実はマルチプレイヤーであることはあまり知られていないが、初期のアルバムでは (いつも弾いているギターやキーボードだけでなく) 一部のトラックでベースも演奏している。

また、2018年のアルバム『Not Too Far Away』では彼女自身がすべての楽器を演奏。ベーシストとしても、それまでのアーマトレーディングのアルバムで一流のスタジオ・ミュージシャンが披露したものに劣らないリリカルなフレーズを奏でている。彼女の近年のアルバムにはジャズ、ブルース、エレクトリック・ロックなどさまざまなジャンルの音楽の影響が混在しており、プレーヤーとしての彼女の多才さを印象付ける。まさに最高の女性ベーシストのリストに加えるに相応しいミュージシャンだ。

Joan Armatrading – Not Too Far Away (Official Audio)

 

24 : ケンドラ・スミスザ・ドリーム・シンジケート、オパール)/ Kendra Smith (The Dream Syndicate, Opal)

ロサンゼルスのペイズリー・アンダーグラウンド・シーンが生んだ最も印象的なミュージシャンのひとり、ケンドラ・スミスは、ザ・ドリーム・シンジケート時代から、グループのフロントマンであるスティーヴ・ウィンに劣らない注目を集めた。デビュー・アルバム『The Days Of Wine And Roses』をリリースののち、スミスはドリーム・シンジケートを脱退しているが、彼女を失ったバンドのサウンドは、それまでとは別物になってしまった。

その後もスミスは一部から熱狂的に支持され、オパールの一員として忘れ難い傑作を制作。ソロ・アルバム『Nine Ways Of Disappearing』もリリースしている。近年は砂漠で暮らしていると報じられていたスミスだったが、2017年に、まるで美しい幻のようにシーンに復帰。ザ・ドリーム・シンジケートの一員としてグループの再結成アルバム『How Did I Find Myself Here?』を発表した。

Tell Me When It's Over

 

23 : スージー・クアトロ / Suzi Quatro

“スージー・クアトロ”という名前に対する一般的なアメリカ人の反応は「いったい誰?」というものだろう。しかしながら彼女は、グラム・ロック全盛期のイギリスのロックの世界では並ぶ者のない女性アーティストであり、そのころ彼女がヒットさせた「Can The Can」や「Devil Gate Drive (悪魔とドライヴ) 」は抜群にセクシーだった。

グラム・ロック時代には語られることはなかったが、1960年代半ばのガレージ・ロックのシングルが再び注目を集めたことで、現在では、クアトロはデトロイト出身のバンド、ザ・プレジャー・シーカーズのメンバーだったことも知られている。プレジャー・シーカーズは、当時のガレージ・ロック・バンドにはめずらしかった女性シンガーをフロントに立てた編成で、その筋に評価の高い彼女たちのシングル「Never Thought You’d Leave Me」は、ベース・ソロから始まっている。彼女はまた、アメリカのテレビ・ドラマ『ハッピーデイズ』にも出演。この経歴だけとっても今回のリストの中で唯一無二の存在だ。

Suzi Quatro – Can The Can (1973)

 

22 : メリッサ・オフ・ダ・マースマッシング・パンプキンズ、ホール)/ Melissa Auf Der Maur (Smashing Pumpkins, Hole)

実力派ベーシストとして知られるメリッサ・オフ・ダ・マーは、まるでその道のエキスパートのように、不安定な状況にあるバンドをたびたびまとめあげてきた。前任者であるクリステン・パーフとの死別以来、暗澹たる状態にあったホールに参加した際も彼女はうまくやってのけ、その後、不和によりスマッシング・パンプキンズを脱退してしまったダーシー・レッキーの後任も見事に務めあげている。

また前者では、彼女たちの最もポップなアルバム (Celebrity Skin) 、後者では最もメタリックな作品 (Machina) に参加したことで、その多才振りも遺憾なく発揮した。彼女自身のソロ・アルバム2点は、それら2つのジャンルに跨るアプローチに加え、プログレッシヴ・ロックやパンクの要素も取り入れたものになっている

Auf Der Maur – Followed The Waves

 

21 : ショーン・イスールトホワイト・ゾンビ)/ Sean Yseult (White Zombie)

ショーン・イスールトは、ニューオーリンズを拠点にさまざまなメディアで作品を発表。本を書き、写真の展示会を開き、並行してデザイナーとしてのキャリアも積んできたアーティストである。一方、ベーシストとしては、ダーティーなトーンと野卑な感性を併せ持ったプレイで知られており、実際あのザ・クランプスとの共演歴もある。

もっとも、イスールトが最もよく知られているのは、員隠滅滅と鳴り響く重低音とロックンロールの痛快さを融合させたグループ 、ホワイト・ゾンビの一員としての長期間に亘る活動だろう。

White Zombie – Black Sunshine (Official Music Video) ft. Iggy Pop

 

20 : エイミー・マン (ティル・チューズデイ)/Aimee Mann (’Til Tuesday)

リストをご覧になっている人の中には、エイミー・マンの名前をここに挙げるべきではないと思われる向きもあるかもしれない。理由は単純だ。ティル・チューズデイ以降、彼女はほとんどベースを弾いていないからである。

実際、ヴォーカリスト兼ソングライターとしてその技量を高めていった数年間、彼女は自身のバンドのベーシスト (ポール・ブライアン) にその役割を委ねており、レコーディングでもステージでもリズム・ギターを担当することが多かった。しかしテッド・レオとのユニット、The Bothではソングライターらしいメロディーセンスに支えられたパンキッシュなベース・ラインを奏で、マンが優れたベーシストでもあったことをあらためて印象付けた。

Til Tuesday – Voices Carry – 3/26/1986 – Ritz (Official)

 

19 : ジョネット・ナポリターノコンクリート・ブロンド)/ Johnette Napolitano (Concrete Blonde)

ジュリアナ・ハットフィールドやエイミー・マンがそうであるように、ジョネット・ナポリターノもまたリード・ヴォーカリスト兼ベース・プレイヤーだ。そして彼女もまた、ベース・ギターという楽器と愛憎相半ばする関係にあり、実際いくつかのアルバムやコンサート・ツアーではギターを選んできた。しかしながら、たとえそうであったとしても、彼女が世界最高の女性ベーシストのひとりであることに疑念を差し挟む余地はない。

1990年代初頭のコンクリート・ブロンドのメンバー、ベースにナポリターノ、ドラムズに元ロキシー・ミュージックのポール・トンプソン、ギターにジム・マンキーは、不穏なゴス調のグルーヴとロック・ミュージックの楽しさを同時に感じさせる最強のトリオのひとつだった。

Concrete Blonde – Bloodletting (The Vampire Song)

 

18 : キム・ディールピクシーズ、ブリーダーズ)/ Kim Deal (Pixies, The Breeders)

多くのファンにとって、キム・ディールこそがピクシーズだった。ほかのメンバーの貢献を思えば、それはあまりに極端な意見かもしれないが、一方で、彼女の奏でるサウンドと存在そのものが初期のピクシーズの化学反応の要だったことは確かだろう。

ディールの音楽的な能力については、ピクシーズのレパートリーの中でもとりわけ人気の高い2曲「Debase」と「Gigantic」がともにディールの奏でるベース・ソロから始まるというあたりにも明らかだろう。アンプス名義でリリースされたソロ・アルバム『Pacer』でアンプスのメンバーすべてのパートを、彼女自身が見事にこなしていることも、それを裏付けている。

Pixies – Gigantic

 

17 : ゲイ・アドヴァートジ・アドヴァーツ)/ Gaye Advert (The Adverts)

ゲイ・アドヴァートはパンク・シーンから生まれた最高の女性ベーシストのひとりだが、グループの代表作ともいうべきシングル「Gary Gilmore’s Eyes」のリリース後にバンドが崩壊し、それに続くシングルの一部がアメリカではリリースすらされなかったこともあり、正当な評価を得られていない。

しかしながら、パンク・ロックのベーシストに何よりも必要とされるスピードと正確さという点で、ゲイ・アドヴァートは群を抜いており、ディー・ディー・ラモーンやグレン・マトロックといったプレイヤーさえ、彼女には敵わない。

The Adverts Gary Gilmore's Eyes Live @ Top Of The Pops 1977

 

16 : ケイト・オリオーダンザ・ポーグス)/ Cait O’Riordan (The Pogues)

ヘベレケな者からほろ酔い程度の者まで、どいつもこいつも酔っぱらったアコースティック・ミュージシャンたちにひとつの仕事をさせるというのは果たして容易いことだろうか? ザ・ポーグスのオリジナル・ベーシスト、ケイト・オリオーダンは、そんなメンバーを行儀よく整列させるという報われない仕事を担い、しかもそれを驚くほどうまくやってのけていた。

もしもポーグスのサウンドが驚くほど引き締まっているとしたら、それは彼女のおかげ以外何物でもない。あるいは彼女こそ、メンバーの中で最もタフなパンク・ロッカーで、それゆえに、酔いどれバンドの統率という難儀な仕事を成し遂げられたのかもしれない。

Wild Cats of Kilkenny

 

15 : ミシェル・テンプルペル・ウブ)/ Michele Temple (Pere Ubu)

アヴァンガレージ・バンド、ペル・ウブに最も長期間に亘って在籍したベーシストとして (実のところ、その在籍期間ははフロントマンのデヴィッド・トーマスの次に長い) 、ミシェル・テンプルは、バンド内において最も骨の折れる仕事のひとつをこなしていた。彼らの最もトリッキーな時代のサウンドを語る際、鍵になるのはテンプルである。そしてその逆もまた然りだ。

Pere Ubu, "Come Home"

 

14 : サラ・リーギャング・オブ・フォー、B-52’s、リーグ・オブ・ジェントルメン)/ Sara Lee (Gang Of Four, The B-52s, The League Of Gentlemen)

パンク・ファンクの草分け的なベーシストのひとりであるサラ・リーは、ロバート・フリップ率いる短命に終わったダンス・バンド、ザ・リーグ・オブ・ジェントルメンのあまり知られていないスターである。このグループでダンサブルなベース・ラインを奏でた彼女は、その後、デイヴ・アレンの後任としてギャング・オブ・フォーに加入。グループの要であるリズム・セクションの一翼を担い、次いでB-52’sでグループのサウンドを支えた。

サラ・リーはソングライターとしても優れた才能を備えている。唯一のソロ・アルバム『Make It Beautiful』はその証左である。

Gang of Four – "I Love a Man in a Uniform" (Live on Rockpalast, 1983) [8/21]

 

13 : ゲイル・グリーンウッドベリー、L7)/ Gail Greenwood (Belly, L7)

ゲイル・グリーンウッドは、ザ・フーのジョン・エントウィッスルの対極にあるベーシストと言ってもいいかもしれない。彼女はステージの上で、決してじっとしていようとはしなかったからだ。

ロードアイランド州プロビデンスのパンク・バンドから引き抜かれ、2枚目のアルバムからベリーに加入したグリーンウッドは、グループのステージで圧倒的な存在感を放ち (始終変わる髪の色も目を引いた) 、リード・シンガーのタニヤ・ドネリーもまた殻を破るきっかけを与えた。その後、グリーンウッドはL7に加入、ここでも、その激しいパフォーマンスで他を圧倒している。そして2018年にはベリーに復帰。グループの23年振りのアルバム『Dove』に参加している。

Belly – Gepetto (Video)

 

12 : エニッド・ウィリアムズ、ギル・ウェストンガールスクール)/ Enid Williams, Gil Weston (Girlschool)

ガールスクールのメンバーだった女性を、史上最高の女性ベーシストのひとりに数えないわけにはいかないだろう。ガールスクールは、女性メンバーだけで構成された最初のヘヴィ・メタル・バンドとして新境地を切り拓いたが、その知名度は主にイギリス国内に留まり、世界的な人気を博すには至らなかった。

ここでは例外的にエニッド・ウィリアム、とギル・ウェストンという2名のベーシストの名前を列記したが、それは彼女たちが等しくグループの最盛期 (大雑把に言えば1980年から1985年にかけての5年間) にグループに貢献したからである。なお、現在はオリジナル・メンバーであるウィリアムズが再びバンドに加入している。アメリカでは、おそらくガールスクールは、モーターヘッドとのコラボレーションで知られているに違いない。要するに、彼女たちはレミーが認めたバンドだ。いいベーシストがいるに決まっている。

Girlschool – C'mon Lets Go (Official Music Video)

 

11 : アビー・トラヴィス / Abby Travis

“The Ultimate Versatility Award / 究極の多才 – 万能賞などというものがあったとしたら、受賞者はこのロサンゼルスの若き才女、アビー・トラヴィスで決まりだろう。彼女は、2011年にイギリス・ドイツのバンドであるネクター(Nektar)と風変りなユーロ/クラウトロックバンドブレインチケットをフィーチャーした無名のプログレッシヴ・ロックの再結成ショーで偶然出会った人だ。

そしてその、さして有名とはいえないイベントで、ブレインチケットのベーシストを務めていたのが彼女だった。ゴシック風のファッションをまとったこの若きシンガー兼ベーシストの存在は、バンドに新しい息吹を吹き込んでいた。しかも、ほかのメンバーが30歳ほども年嵩であるにもかかわらず、トラヴィスのパフォーマンスはアシッド感覚に満ちたグループのサウンドに完璧に溶け込んでいたのである。

その後、彼女はキャシー・バレンタインに代わってゴーゴーズに加入。さらにバットホール・サーファーズやシェール (並記されることなどめったにない組み合わせだ) のコンサート・ツアーにも同行している。どんなアーティストにどんなタイプの音楽を求められても対応可能なベーシスト、それがアビー・トラヴィスなのである。

"I Put A Spell On You" live Abby Travis

 

10 : ジュリアナ・ハットフィールドブレイク・ベイビーズ、レモンヘッズ、ソロ)/ Juliana Hatfield (Blake Babies, Lemonheads, Solo)

既にシンガーソングライターとしての評価を不動のものにした感のあるジュリアナ・ハットフィールドだが、そのキャリアの初期に参加した2組のバンド、ブレイク・ベイビーズとレモンヘッズのメンバーの中でも、おそらく最も優れたミュージシャンだったにもかかわらず、プレイヤーとしての才能は過ごされがちだった。

いずれのバンドでも、彼女はしなやかでメロディックなプレイでその演奏に貢献しており、プロデューサーは賢明にもそれを前面に押し出してきた。半信半疑という方は、レモンヘッズのアルバム『It’s A Shame About Ray』を聴いて、楽曲をより魅力的にしていく彼女の演奏を確かめてほしい。

It's A Shame About Ray (Remastered)

 

9 : ローラ・ケネディブッシュ・テトラス)/ Laura Kennedy (Bush Tetras)

Any band whose anthem includes the line “You can’t be funky if you haven’t got a soul” better have a great bassist. And the late Laura Kennedy was one: a key player in the New York “no wave” movement. The closest US equivalent to Gang Of Four, Bush Tetras wanted to be edgy and confrontational, but they also wanted to be a dance band, and succeeded on both counts.

“You can’t be funky if you haven’t got a soul… / ソウルがなければファンキーにはなれない……”

そんな歌詞の楽曲で知られるバンドなら、すばらしいベーシストは不可欠だ。故ローラ・ケネディは、まさにそのバンドのベーシストとして期待通りの役割を務めた、ニューヨークのノー・ウェイヴ・ムーブメントの重要ミュージシャンのひとりである。アメリカのギャング・オブ・フォーと呼ばれたブッシュ・テトラスは、先鋭的かつ反体制的であろうとし試み、同時にダンス・バンドであろうと試みたバンドだった。そして彼らはその試みに成功したのだった。

Bush Tetras Live at Hurrah – 1-30-81

 

8 : ゲイル・アン・ドロシー / Gail Ann Dorsey

ゲイル・アン・ドロシーはその優れたテクニックと柔軟性を兼ね備えた類い稀なベーシストのひとりだ。しかも彼女は、主役であるヴォーカルを最優先するために、溢れんばかりのベーシストとしての技量を周到に調整しているのである。

デヴィッド・ボウイやティアーズ・フォー・フィアーズといった名だたるアーティスト/グループとの共演で (またソロ・アーティストとしての自身の作品における伴奏で) 彼女のプレイを特徴づけるものは、そのずば抜けた流麗さであり、それは、一音一音の完璧な選択と直感的なグルーヴ感のコンビネーションによってもたらされる。それらが調和した際の彼女のフレーズはよほど注意深く耳を傾けなければ把握できないが、正確無比なプレイには誰もが圧倒されるに違いない。

Gail Ann Dorsey – Stop on By – the Tube

 

7 : キム・ゴードンソニック・ユース)/ Kim Gordon (Sonic Youth)

キム・ゴードンは常に、自伝の表題 、“girl in a band (バンドの中の女の子) “ という以上の存在であり、その革新的なプレイで、ソニック・ユースのメンバーとしてバンドに不可欠な貢献を果たしてきた。彼女のベースのトーンは一聴してそれとわかる個性的なもので、ときにはサーストン・ムーアとリー・ラナルドによるノイジーな即興演奏を支え、またときには両者とともに三つ巴のジャム・セッションを披露してきた。

ソニック・ユースの総尺20分に及ぶ大作「The Diamond Sea」を聴けば、ベースという楽器がどれほど威嚇的なサウンドを奏でられるか思い知ることになるだろう。

Sonic Youth – The Diamond Sea (Live Germany 1996) FULL Song

 

6 : ロンダ・スミスプリンス、ジェフ・ベック)/ Rhonda Smith (Prince, Jeff Beck)

ジェフ・ベックの最近のステージを観たことがある方なら、カナダ出身のこの女性ベーシストが加わるだけで、どんなバンドもより魅力的になってしまうということがわかるはずだ。かつて彼女はプリンスのバンドにも加わり、コンサート・ツアー“Jam Of The Year”に同行しているが、それは、プリンスがシーケンサーを排除し、本格的なファンク・ミュージックに取り組んだツアーだった (セットリストには、プリンス自身の代表曲だけでなく、ジェームス・ブラウンのレパートリーのカヴァー・ヴァージョンといったものも含まれていた)

以来、彼女は主にファンクのフィールドで活躍。チャカ・カーンやビヨンセといったアーティストのツアーに参加し、バックを務めてきた。ジェフ・ベックとのステージで披露するパフォーマンスは華やかで、同時にファンキーだ。

Jeff Beck – "Rhonda Smith Bass Solo & People Get Ready" – Live Tokyo 2010 [Full HD]

 

5 : ティナ・ウェイマス(トーキング・ヘッズ、トム・トム・クラブ)/ Tina Weymouth (Talking Heads, Tom Tom Club)

ティナ・ウェイマスは、彼女の夫であり、ともにトーキング・ヘッズでリズム・セクションを担ってきたクリス・フランツとともに (このふたりは、いまだかつて別々に仕事をした例がない) 、まだ黎明期にあったニュー・ウェイヴ・ムーブメントにグルーヴ感を持ち込むという重要な役割を果たした。

同時期にCBGBを拠点に活動していた多くのバンドの中で、トーキング・ヘッズだけが、アル・グリーンのレパートリーを取り上げてその個性を主張していたが、それには、そそれだけの根拠があったというわけだ。コンサート・フィルム『ストップ・メイキング・センス』の中で披露される「Genius Of Love (悪魔のラヴ・ソング) 」はとりわけ強力だ。これほど魅力的なファンク・ナンバーを聴かせるロック・バンドはめったにいない。

Tom Tom Club – Genius of Love (Stop Making Sense)

 

4 : タル・ウィルケンフェルド / Tal Wilkenfeld

このオーストラリア出身の天才ミュージシャンについては、単にモンスター・クラスのフュージョン・ベーシストと紹介するだけで十分だろう。ウィルケンフェルドはチック・コリアやジェフ・ベックのコンサート・ツアーなどでその実力を証明してきた。彼女はまた、ザ・フーのオープニング・アクトも務めているが、年老いた観客たちは、そこに1969年以来感じたことのなかった精神性を感じ取り、彼女のパフォーマンスに釘付けになっている。

一方、より小規模なクラブで披露されるソロ・アーティスト、タル・ウィルケンフェルドのステージは、洗練された自作曲にフォーカスしたものになっており、ジャズ/フュージョン色は控えめ。ときにはザ・スミスやトム・ペティといったアーティストのレパートリーが披露されることもある。

Tal Wilkenfeld – Bass Solo (from Jeff Beck Live at Ronnie Scott's)

 

3 : ミシェル・ンデゲオチェロ / Meshell Ndegeocello

長年に亘って史上最高の女性ベーシストに数えられてきたミシェル・ンデゲオチェロは、今回のリストに名を連ねるミュージシャンの中で、ローリング・ストーンズとの共演歴を持つただひとりのベーシストでもある。もっとも、それも彼女のキャリアにあってはごく些細なことに過ぎない。

ンデゲオチェロは、1990年代初頭にリリースした作品で、ソウル・リバイバルの口火を切り、先駆者のひとりとしての評価を揺るぎないものにしている。彼女は、ポップ・ミュージックやラップ、レゲエ、そして魅力的なベース・ラインを取り入れることで、伝統的なソウル・ミュージックから独創的かつ現代的な音楽を生み出し得ることをその作品で実証してみせたのである。

Meshell Ndegeocello performing "Folie A Deux" Live on KCRW

 

2 : エスペランサ・スポルディング / Esperanza Spalding

現代の最も革新的なミュージシャンのひとりが、ほかでもないジャズのフィールドから現れたという事実には実に大いに納得できる。既に世界的なジャズ・シンガーとして認められ、女性ジャズ・ベーシストとしての高い評価をものにしていたエスペランサ・スポルディングだが、彼女が2016年に発表したコンセプト・アルバム『Emily’s D+Evolution』は、ジャンルの枠を超えた傑作だった。

ジャズを基調にR&B的な要素やロックの折衷性を加えたこの作品は、ヘッドホンでじっくり耳を傾けるべき1作で、秀逸なベース・プレイも、もちろん大きな聴きどころのひとつになっている。

Esperanza Spalding – "I Know You Know / Smile Like That" (Live in San Sebastian july 23, 2009 – 3/9)

 

1 : キャロル・ケイザ・レッキング・クルー)/ Carol Kaye (The Wrecking Crew)

ロサンゼルスの音楽シーンを支えた伝説的な職人集団、レッキング・クルーの一員にこの名プレイヤーが加わった時点で、女性ミュージシャンを珍しがるという風潮は、廃れて然るべきだった。

キャロル・ケイは、最も多くのレコーディングに参加したベーシストのひとりとされるが、残されたレコーディング以外に実情を知る手がかりは残されていない。ファンク、アコースティック、オーケストレーションを伴った華やかなポップ・ミュージック (筆頭に挙げるべきはザ・ビーチ・ボーイズの『Pet Sounds』で、彼女は全篇に亘って参加している) など、あらゆるタイプのトラックのレコーディングに参加し、いくつもの印象的なフレーズを披露。

グラス・ルーツの「Midnight Confessions (真夜中の誓い) 」のイントロで聴けるリックはその一例で、ジョー・コッカーの「Feelin’ Alright」にサルサのグルーヴをもたらしたのも彼女だった。彼女は間違いなく、史上最高の女性ベーシストのリストのトップに位置するべきミュージシャンであり、この先も、その圧倒的な地位が揺らぐことはないだろう。

Midnight Confessions

Written By Brett Milano



プレイリスト『史上最高のベース・プレイヤー50人』を聴く:Spotify

 

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