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カーペンターズ『Voice of The Heart』:カレンの死後最初に発売された作品

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カーペンターズの11枚目となるアルバムのオープニング・トラックよりも美しいバラードがもしそれまでの作品にあったとしたら教えて欲しい。ロジャー・ニコルスとディーン・ピッチフォードによる「Now」は、カレンの最後となるレコーディング・セッションで収録された2曲の内の1曲である。カレンは10ヶ月後の1983年2月に悲劇的な、そして早過ぎる最期を迎えた。歌詞は心を打つ内容で、ワンテイクでレコーディングされたという事実はカレンを失った我々の悲しみを助長し、同時にそれをやすやすとこなした彼女がどれだけ才能に溢れていたのかをも象徴している。

相応しいタイトルが付けられたアルバム『Voice of the Heart』内のトラック「You’re Enough(邦題:幸福過ぎて)」は1982年4月の最後のセッションでレコーディングされ、リチャードとジョン・ベティスが共作した。1983年10月にリリースされたアルバムは、1976年から1982年にかけての様々なセッションにてレコーディングされた曲が集められ、カレンの死後最初に発売されたアルバムとなる。10トラックの殆どをこのためにリチャードが手掛け直したと知ると、最初に聴いた時よりも感動が増す。

アルバムの中で最も素晴らしい曲のひとつは、歌手ボビー・ヴィントンの1979年のマイナー・ヒット・バラード「Make Believe It’s Your First Time(邦題:遠い初恋)」である。カレンは、最初ニューヨークでプロデューサーのフィル・ラモーンと共にこの曲をソロ・アルバム用にレコーディングした。『Voice of the Heart』に収録されているヴァージョンはもっと豊かな雰囲気だが、ソロ・アルバム用にカレンがレコーディングしたヴァージョンは殆どピアノの伴奏だけである。それは2つの面があるコインと同じで、どちらも美しい。『Voice of the Heart』のヴァージョンはファースト・シングルに選ばれ、アダルト・コンテンポラリー・チャートで7位に、そしてUSシングル・チャートでは101位にランクインした。

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ポール・ウィリアムスは独特な作曲家でスリー・ドッグ・ナイトに「An Old Fashioned Love Song」、ヘレン・レディに「You and Me Against the World(邦題:ユー・アンド・ミー)」、そしてカーペンターズに「We’ve Only Just Begun(邦題:愛のプレリュード)」を提供したが、「Ordinary Fool」を超えるバラードはないだろう。リチャードが弾くエレクトリック・ピアノのコードで始まり、アール・ダムラーのオーボエがムードを整えるとカレンがその素晴らしいヴォーカルを重ねていく。

美しいバラード「You’re Baby Doesn’t Love You Anymore(邦題:ユア・ベイビー)」は元々ルビー・アンド・ザ・ロマンティックスの1965年のマイナー・ヒットであったが、彼らのヴァージョンはカーペンターズの足元にも及ばない。アルバムのセカンド・シングルに選ばれ、アダルト・コンテンポラリー・チャートで12位にランクインした。アルバムもUKチャートの6位にランクインされたが、驚くことにアメリカでは46位のポジション止まりだった。

アルバムの最終トラック「Look to Your Dreams(邦題:愛は永遠に)」もまたリチャード・カーペンターとジョン・ベティスの共作で、ラストに相応しく悲しく控えめな曲となっている。リチャードが演奏するピアノ・コーダで終わり、それは私たちの悲しみに響く。カレンの病についてここでは語りたくないが、彼女のその深遠な美しい声に心打たれたことがない、又はそれが理解できないという人はどこかが間違っている。カレン・カーペンターの歌声は完璧であり、それ以上でもそれ以下でもない。


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