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U2『BOY』制作秘話:壮大なるアルバムの旅の始まり

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1980年10月20日。最後のMGBロードスターが生産ラインから出荷。ポリスが全英チャートを席巻し、クイーンが米国に君臨。そして映画『プライベート・ベンジャミン』が銀幕を支配している。それまで相当な時間をかけて経験を積み、優れた評判を確立して自信をつけた若きアイルランドのバンドが、1作目となるアルバムを送り出したのはこんな世界だ。そう、 U2の『Boy』の誕生である。

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アルバム『Boy』が、言い換えればU2が、全英チャートに初めてランクインしたのは発売から10ヶ月後のこと。その頃、デビュー2年目に入ったこの4人組は、次のアルバム『October』と同作の主力シングル「Fire」により、バンドが人気となり、前作である『Boy』にも注目が集まったのだ。

1980年10月、U2は大々的なUKツアーに乗り出すことで、初のアルバムのリリースを祝っていた。ベルギーとオランダで初のヨーロッパ公演を行った後、米東海岸のクラブを皮切りにUSツアーを開始。後にボノはこう回想している。

「蒸気が水滴になって、天井からポタポタ落ちてきたんだ。僕はエッジの方を見て、こう言ったよ、“おい、すげえな、こいつがアメリカなら、もっとやりたいな”ってね」

I Will Follow (Live From Red Rocks Amphitheatre, Colorado, USA / 1983 / Remastered 2021)

『Boy』は、U2の可能性を実現するための、胸躍るような基本原則を定めたアルバムであった。これはその後のスタジオ・アルバム13作に渡る途方もない旅路の出発点であり、2014年の『Songs Of Innocence』や2017年の最新アルバム『Songs of Experience』では、贅肉をそぎ落とし、剃刀のように鋭利なデビューアルバムのサウンドに立ち返っている。

現代の音楽界でも特に名高いバンド・キャリアにおける1作目と最新作とを結びつけて考えてみると、両作から思い起こされるのは、U2の社会的および音楽的な形成期や彼らがダブリンのニュー・ウェイヴ勃興期に学んだこと、そしてザ・クラッシュやテレヴィジョン、ラモーンズらといったバンドに夢中だったことだ。

1980年にまとまった時間をかけ、地元ダブリンのウィンドミル・レーン・スタジオで、U2はデビュー・アルバムを制作。急速に頭角を現していた英国の新進プロデューサー、スティーヴ・リリーホワイトと彼らの関係は、揺るぎないものとなっていた。

『Boy』には、後にその名を世界に知られることとなる「I Will Follow」や「A Day Without Me」等といった曲に加え、そこまで有名ではないかもしれないが、この若手バンドの暮らしや彼らを取り巻く環境について、同じように個人的な見解を描かく「An Cat Dubh」や「The Electric Co.」が収録されている。

U2 – The Electric Co.

本作は「情感に満ちた、輝かしい希望の咆哮」であると、発売直後にトラウザー・プレス誌が好意的な評を寄せていた。「U2のヴォーカル兼メイン・ソングライターのボノ・ヴォックス(20歳)からは、出会った瞬間より温かみと気さくさが伝わってくる」。フロントマンのボノは、同誌に次のように語っていた。

「僕らが『Boy』で探し求めていたのは、一種の映画的なサウンドだったんだ。大型のスクリーン、つまり映画館の巨大スクリーンに映し出されているような、すごく粗い感触で広がりのあるものだよ」

それから間もなくU2は英米で目覚ましい活躍を見せることになるが、その最初の兆しとして、本作は全英チャート入りに先駆け、まず1981年3月に全米チャートで最高位63位を記録。1982年11月の同日に、ゴールドおよびプラチナ・ディスク両方の認定を受けた。

Written by Paul Sexton



U2『Boy』
1980年10月20日発売
CD / iTunes / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music




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