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ザ・フーのアルバム『A Quick One』と「Happy Jack」
ザ・フーが1965年の終盤に『My Generation』でアルバム・デビューを果たした時、アメリカのマーケットはまだ同作をリリースする準備が整っていなかった。1967年5月20日、『My Generation』は念願叶ってアメリカでの発売に漕ぎ着け、チャート入りを果たしたわけだが、オリジナルのリリースからは大きくタイミングがずれた上にタイトルも変更されていた。
イギリスでのリリースから5ヶ月後、アメリカでのザ・フーのレーベルであるデッカは、彼らのセカンド・アルバム『A Quick One』を、1月にイギリスでトップ3を記録し、当時アメリカではHot 100のヒットチャートを上昇中だった「Happy Jack」を使ったものにすべきだとした。しかし「Happy Jack」は『A Quick One』には収録されていないために、デッカは、ザ・フーの音楽的ルーツであるソウルやリズム&ブルースへの敬意を表してアルバムに収録したカヴァー曲、マーサ&ザ・ヴァンデラスの「Heat Wave」を「Happy Jack」と差替えることにした。結果的に「Happy Jack」はアメリカでザ・フー初のトップ30に入るヒット作になった。
アルバムには、ジョン・エントウィッスル作曲による作品の中でも特に人気のある「Boris The Spider」(彼がローリング・ストーンズのビル・ワイマンと飲みに出かけた際に、二人で思いついたタイトル)も収録されている。その他、キース・ムーン作になる「I Need You」(ムーンが初めてバンドに提供した曲だ) と打楽器の猛攻撃「Cobwebs and Strange」や、「Who Hits 50 」アニヴァーサリー・ツアーでザ・フーが復活させたモッド御用達の「So Sad About Us」なども収録されている。
1月にイギリスで『A Quick One』が4位を記録した後、アメリカでの『Happy Jack』ヴァージョンがビルボードのアルバム・チャートに184位で、ジミー・ラフィンとディーン・マーティンに挟まれる格好で登場した。アルバムはその後9週間に渡って順調に推移し、最終的には6月に同チャート67位を記録している。
Written By Paul Sexton