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ザ・フー、13年ぶりの新作『WHO』:ピート・タウンゼントによる全曲解説
2019年12月6日に発売されたザ・フー、13年ぶりの新作アルバム『WHO』。本人も『Quadrophenia / 四重人格』以来最高のアルバムと語り、メディアも絶賛しているこの作品の海外スタンダード版に収録された全11曲について、ピート・タウンゼント本人が語る解説を掲載します(日本版はボーナス・トラック含み全15曲収録)。
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1. ALL THIS MUSIC MUST FADE
これは、他人が作った曲を盗んだと責めたてられたアーティストたち全員に捧げる歌だ。本気かって? 我々の音楽の幅は21世紀になって上限に達していて、よくあるコード進行なのに新たに開発したなんて主張するバカはいない
2. BALL AND CHAIN
言うまでもなく、明らかにグアンタナモ収容所についての曲だ。それが良いことだと考えるべきか、そうではないのか、自分なりの結論を下してほしい。
3. I DON’T WANNA GET WISE
この曲は『The Who by Numbers』に収録されている曲みたいに70年代半ばのスタイルで書いた。警告:老け込むなよ。分別くさくなるから。
4. DETOUR
人間として、私たちは道を逸れなくてはならないし、常に警戒していなくてはならない。誰もが互いに、相手に対する扱いを今までとは変えなくてはならない――今こそ、そのときだ。
5. BEADS ON A STRING
これは、サウンドクラウドで出会ったジョシュ・ハンザッカーとともに書いた曲だ。彼が音楽を作り、私が歌詞とヴォーカルのメロディを作った。1932年にロンドンを訪問した霊的指導者メヘル・バーバーは、こう言った。世界中の宗教を引き寄せ、一本の糸にビーズを通すようにひとまとめにする、と。希望を持ち、愛とともに私たちは待つ。
6. HERO GROUND ZERO *
これは、近々私が発表する予定のオペラとアートのインスタレーション作品『THE AGE OF ANXIETY』(意味:不安の時代)のオープニングソングだ。この作品は11月5日に出版した同タイトルの小説に基づいている。ロジャーのこの曲の歌い方がとても気に入っている。それは小説の中では、頭がおかしくなったロック・スターの声ということになっているんだ。
7. STREET SONG
私の家族に、ロンドンのグレンフェル・タワー火災に遭って生き延びた家族を何世帯か知っている者がいる。だから、被害者の何人かを直接支援することができたのだが、そのために、より現実のものとして感じた。逃げられなかったある男性は、何とか妻に電話をつないで別れを告げたそうだ。その話がきっかけで、この曲を書いた。
8. I’LL BE BACK
私が歌っている唯一の曲であり、おそらく最もパーソナルな曲でもあるだろう。霊魂の生まれ変わりだけではなく、昔の恋人や旧友のところへ、機会があるうちに何度も何度も立ち戻ることを歌っている。私自身も、1972年の「Join Together」以来、初めてクロマチックハーモニカ(ギターより前に、私が初めて手にした楽器)のもとに戻った。
9. BREAK THE NEWS **
私の素晴らしい弟、サイモンが書いた曲。弟とその妻(『Quadrophenia / 四重人格』のジャケットのモッズ・モデルのように見える)も年を取ったが、まだそれほど年配というわけじゃない。サイモンは、愛や親しみが、若かった頃と同じように通じ合った瞬間を、心を打つ曲で表した。
10. ROCKIN’ IN RAGE
70歳になってから、私は「こういう曲を書くぞ」と言い続けてきた。ようやく、それをロジャーのために書いて実現することができた。ロジャーの歌い方には様々なニュアンスがある。力強いとき、男らしいとき、脆く傷つきやすいとき、壊れているとき、訴えかけるようなとき。この曲では、彼はそれらすべてのニュアンスを披露している。
11. SHE ROCKED MY WORLD
そう、これはロマンチックな曲だ。もしも状況が違っていれば、愛したかもしれないし、結婚すらしていたかもしれないほどの相手に巡り合うという出来事の力強さを描いた。
All songs written by Pete Townshend except
*Pete Townshend/Josh Hunsacker **Simon Townshend
ザ・フー『WHO』
2019年12月6日発売
CD / iTunes
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