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レゲエの存在を全世界に知らしめたジャマイカ初の商業映画『ハーダー・ゼイ・カム』はサントラも強烈だった
史上最高のレゲエ・コンピレーションの1枚にも数えられる映画『ハーダー・ゼイ・カム』のサウンドトラックは、“安価だけど退屈”というレゲエ・コンピのイメージを、“高品質で重要”というイメージに変貌させた作品のひとつだ。ダイナミックで明るく、躍動感のある楽曲を満載した同アルバムで興味深いのは、1972年7月7日のリリース当時ですら、過ぎ去った時代を追悼する作品だったという点である。
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映画『ハーダー・ゼイ・カム』は、全てジャマイカで制作された初の長編映画だ。主演はジミー・クリフで、70年代初頭の彼はまるでボブ・マーリーの原型のようだった。自ら曲を書くレゲエのスーパースターで、ジャマイカン・ミュージックが英国の批評家やDJの大半からティーンエイジャーのダンス・パーティを盛り上げる音楽としか考えられていなかった時代に、本格的な才能の持ち主として売り出されていたのだ。また、同映画にはメイタルズ(サウンドトラックにも参加)や、ほんの一瞬だが、サウンドトラックの大半を監督指揮したプロデューサーのレスリー・コングも出演している。
コングは60年代後半/70年代初頭のレゲエを商業的に数多く成功させており、パイオニアーズ、メイタルズ、メロディアンズ等のプロデュースでヒットを記録した。コングはジミー・クリフをレコーディングして、自身のレコード・レーベルを立ち上げたという経緯があり、このサウンドトラックは、2人の長年にわたる仕事の集大成でもあった。2人の成長が、このアルバムに示されているのだ。
この中でジミー・クリフは「You Can Get It If You Want」、気骨あるタイトル・トラック、メロウな「Sitting In Limbo」、さらにはクリフの最高傑作として広く認められている「Many Rivers To Cross」(リリースから何十年経った今聴いても感動的なバラードだ)を歌っている。また、メイタルズは結婚式を祝った「Sweet And Dandy」と、名曲「Pressure Drop」を提供。コングが擁した最大の世界的スター、デズモンド・デッカーも1曲参加している。デズモンド・デッカーが歌った威勢のよい「007」は、同サウンドトラックがリリースされた時点で既に5年前の曲だったが、それでもルード・ボーイを歌った同曲は、映画とマッチしていた。スリッカーズの「Johnny Too Bad」も同様だった。同曲は『ハーダー・ゼイ・カム』のサウンドトラック中、コングがプロデュースしていない数少ない楽曲のひとつだったが、スタジオとバンドは同じものを起用している。
アルバム中、穏やかで内省的な楽曲は、メロディアンズの「Rivers Of Babylon」だ。ボニー・Mのヴァージョンしか知らない気の毒なリスナーは、メロディアンズ・ヴァージョンの誠実でソウルフルな敬虔さに驚くだろう。そして、デリック・ハリオットのプロデュースによるDJチューン、スコッティの「Draw Your Brakes」は、レゲエの未来を示唆した1曲だ。
その後、すぐにルーツ・ブームが到来し、この音楽はレトロなものとみなされた(少なくともジャマイカでは)。この映画でジミー・クリフの人気は絶頂となったが、コングは悲しいかな、ルーツ、DJミュージック、ラスタファリアニズムに独占されたレゲエの時代に自身の音楽を持ち込むことができなかった。そしてコングは、映画公開前に心臓発作で亡くなった。
しかしこのサウンドトラックは、コングの技能と才能を証明しているだけでなく、『ハーダー・ゼイ・カム』の公開時には既に過ぎ去っていたレゲエの時代を記録している。とはいえ、この音楽は抗しがたい。あなたも気分が高揚し、踊りだしてしまうはずだ。このアルバムに収録されているエッジが効いた心温まるレゲエに、決して失敗はないのだ。
Written By Reggie Mint
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