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ドクター・ドレーのベスト・ソング19:ヒップホップ界の巨匠がプロデュースした素晴らしい楽曲
ドクター・ドレー(Dr. Dre)のラッパーとしての才能はよく知られているが、プロデューサーとしての彼が作り上げてきた遺産も見逃せない。スヌープ・ドッグ、イージー・E、エミネムといったアーティストとのコラボレーションは、ヒップホップがチャートのトップに躍り出た時代を代表するトラックを生み出し、このジャンルの真の名作として今も語り継がれている。
ヒップホップ界で最も有名なプロデューサーの一人に敬意を表して、ドレーの影響力のある楽曲を時系列順にご紹介しよう。
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1. ワールド・クラス・レッキン・クルー「Turn Off The Lights」(シングル/1987年)
ドラムサウンドといえば、ワールド・クラス・レッキン・クルーの「Turn Off The Lights」でのドレーの仕事ほど、ラップにおけるスネアのサウンドが重厚で有名なものはないだろう。Gファンクを生み出す以前のドレーのプロダクション・スタイルが垣間見える魅力的な作品だ。
2. N.W.A.「Express Yourself」(『Straight Outta Compton』収録曲/1988年)
N.W.A.の爆発的なデビュー作『Straight Outta Compton』でドクター・ドレーが最初に手がけた曲。曲名はサンプリングしたチャールズ・ライト&ザ・ワッツ・103rd・ストリート・リズム・バンドのタイトルから取られている。
リリックの内容は、ラジオやメディアの検閲がある時代に、ラッパーが自分を表現するために経験する苦悩を詳細に描写している。曲の冒頭では、アイス・キューブが「ドープなプロデュースばかりしている」ドレーに「少しラップをして、今何時がヤツらに教えてやれ」と促すようなやり取りがある。
3. ドクター・ドレー「Nuthin’ but a “G” Thang feat. Snoop Doggy Dogg」(『The Chronic』収録曲/1992年)
1992年にリリースされたドレーのソロ・デビュー・アルバム『The Chronic』からの代表曲で、冒頭のキーボードのトリルが西海岸サウンドの代名詞となった。ゆったりとしたビートと晴れやかなメロディーに乗せて、ドレーがスヌープ・ドッグをフィーチャーしたリリックと引用に事欠かない言葉遊びで、この曲の感染力を高めている。
4.ドクター・ドレー「F**k Wit Dre Day (and Everybody’s Celebratin’) feat. Snoop Doggy Dogg」(『The Chronic』収録曲/1992年)
ファンカデリックの名曲「(Not Just) Knee Deep」をサンプリングし、ベースラインをスローダウンさせたドレーのプロダクションによるイージー・Eをディスっしたトラックで、ラジオ・ヴァージョンは歌詞が激しく欠落しているにもかかわらず、ヒップホップ・ラジオ局の定番曲となった。
5.ドクター・ドレー「Let Me Ride feat. Jewell and Snoop Doggy Dogg」(『The Chronic』収録曲/1992年)
ドクター・ドレーの「Let Me Ride」は『The Chronic』の柱の1つだ。うなり声のようなシンセとドラムのグルーヴで作られたGファンクの定番曲で、ヘッズにとってのパラダイスと言えるだろう。この名曲により、ドレーは1994年にグラミー賞ベスト・ラップ・ソロ・パフォーマンス賞を受賞し、90年代西海岸を代表するアンセムにふさわしい栄誉を手にした。
6. スヌープ・ドッグ「Ain’t No Fun feat. Nate Dogg, Warren G, Kurupt」(『Doggystyle』収録曲/1993年)
ネイト・ドッグの今や不朽の名言となった「When I met you last night, baby」で始まる「Ain’t No Fun」は、スヌープ・ドッグのデビュー・アルバム『Doggystyle』に収録されたものだ。この人気曲は、歌詞の淫靡さと同様にメロディーも明るく軽快なファンク調の弾けるような曲である。
7. ドクター・ドレー「Keep Their Heads Ringin feat. Nancy Fletcher」(映画『フライデイ』サントラ収録曲/1995年)
アイス・キューブ原作の大ヒット映画『フライデイ』のサウンドトラックに収録された「Keep Their Heads Ringin」は、1995年に発表された。シンガー、ナンシー・フレッチャーの女性ヴォーカルをフィーチャーしたこの曲は、冒頭の「W、W、W、Westside」で聴く者を掴んで離さない。
8. トゥパック「California Love feat. Dr. Dre」(『All Eyez on Me』収録曲/1996年)
ドレーがトゥパックのアルバム『All Eyez on Me』のためにプロデュースした2曲のうちの1曲。「California Love」は、ドレーがデス・ロウ・レコードでトゥパックとシュグ・ナイトと行った最後のコラボレーションとなった曲でもある。
ジョー・コッカーによる1972年の「Woman to Woman」をサンプリングし、ロジャー・トラウトマンが「California knows how to party」と繰り返すフックが特徴で、この曲がラジオやダンスパーティの定番曲として今後何年も残ることは確実である。
9. エミネム「My Name Is」(『The Slim Shady LP』収録曲/1999年)
UKのシンガーソングライター、ラビ・シフレ「I Got The」を巧みにサンプリングしたこのトラックは、デトロイト生まれの白人ラッパー、エミネムと彼の粗野で早口、引用を多用したリリックスタイルを世界に紹介した曲となった。ベースラインとヴォーカルは、エミネムの冒涜的かつ不遜なスタイルを定義するのに役立っている。
10. ドクター・ドレー「What’s the Difference feat. Eminem and Xzibit」(『2001』収録曲/1999年)
西海岸を代表するメロディーとホーン・サンプルが、イグジビット、ドレー、そしてエミネムのヴァースを織り交ぜながら進んでいく、『2001』からのディープな1曲だ。
11. ドクター・ドレー「Forgot About Dre feat Eminem」(『2001』収録曲/1999年)
『2001』からのヒット曲「Forgot About Dre」はエミネムの高速フックと、この時代で最も引用されやすいヴァースを特徴としている。このトラックは、ラップ界のOGとしてのドレーのマントを取り戻すと同時に、彼の遺産を軽視し、彼の支配がもう終わったと思い込んでいる人々への痛烈な警告となっている。
12. ドクター・ドレー「The Next Episode feat. Snoop Dogg, Kurupt, Nate Dogg」(『2001』収録曲/1999年)
「Nuthin’ but a “G” Thang」の続編となる『2001』からのヒット曲。落ち着きのないシンコペーションのビートを持つこの曲は、ロサンゼルス出身のコンポーザー、デヴィッド・アクセルロッドの「The Edge」をサンプリングしたものだ。
濃密でリズミカルな歌詞は、西海岸のラッパーがこのジャンルを支配し続けていることを再確認させ、ネイト・ドッグの「毎日葉っぱを吸え/Smoke weed everyday」という命令で締めくくられるのが印象的である。
13. メアリー・J.ブライジ「Family Affair」(『No More Drama』収録/2001年)
ドレーはGファンクのシンセサイザーで賞賛されるのは当然だが、その賞賛の声は彼の完璧なドラムサウンドに対してもあげられるべきであろう。メアリー・J.ブライジの「Family Affair」では、ドレーが緻密なシーケンスのドラムサウンドを作り上げ、メアリーの斬新なラップと歌のフローを完璧に際立たせている。
14. 50セント「In Da Club」(『Get Rich or Die Tryin’』収録/2003年)
50セントの「In Da Club」はドクター・ドレーの最も有名なビートの1つだと言える。その理由は、この曲が大ヒットしたこと、そしてドレーの最も興味深いプロダクション・テクニックを備えていることだ。シンセのサウンドと弾むようなストリングスのサンプルはオフビートでなりひびき、曲全体に緊張感を与えながら、少し攻撃的な感じを与えている。
15. エミネム「Crack A Bottle feat. Dr. Dre & 50 Cent」(『Relapse』収録曲/2009年)
ドレーのクラシックなビートの上でエミネム、ドレー、50セントがヴァースを交わすのを聴くと、ラップの歴史がリアルタイムで進行しているようでもある。マイク・ブラントの「Mais dans la lumière」をサンプリングしたオールド・タイミーな雰囲気のビートに、ドレーがヘッドバンギングなドラムとホーンを被せている。
16. ドクター・ドレー「Talk About It feat. King Mez, Justus」(『Compton』収録曲/2015年)
「Intro」の後、ドレーのアルバム『Compton』は、ケンタッキー州出身のMC Mezとルイジアナ州のスピッター、ジャスタスをフィーチャーしたエレクトリックな「Talk About It」でキックオフする。この爽快なトラックでは、ドレーがあらゆるトリックを駆使し、パーカッシブのアクセントやヴォーカルのレイヤーで遊ぶことで、楽曲に3D感を与えている。
17.ドクター・ドレー「Genocide feat. Kendrick Lamar, Marsha Ambrosius & Candice Pillay」(『Compton』収録曲/2015年)
「Talk About It」の後、アルバム『Compton』は、ケンドリック・ラマー、UKのソングライター、マーシャ・アンブロシアス、南アフリカのシンガー、キャンディス・ピレイが参加した「Genocide」に飛び込んでいく。ローファイでファンクなドラムとメロディーを強調した目まぐるしいビートをドレーがアレンジし、この曲の気難しさと硬質さを表現している。
18. ドクター・ドレー「It’s All On Me feat. Justus & BJ The Chicago Kid」(『Compton』収録曲/2015年)
「It’s All On Me」では、ドレーがジャスタスを呼び戻し、BJ・ザ・シカゴ・キッドが70年代ソウルにインスパイアされたビートをアシストしており、微妙なコンガ・ドラムがこの曲に独特のフィーリングを与えているのが特徴だ。
19. ドクター・ドレー「Issues feat. Ice Cube, Anderson .Paak & Dem Jointz」(『Compton』収録曲/2015年)
アイス・キューブ、アンダーソン・パーク、そしてデム・ジョインツが参加した「Issues」は、トルコのサイケ・ギター・ヒーロー、セルダのスリリングなサンプルで強調されている。それに加えて、アイス・キューブが「It Was A Good Day」を巧みに引用することで、この曲はスローバックしたような雰囲気を醸し出している。
Written By uDiscover Team
ドクター・ドレー『The Chronic』
1992年12月15日発売
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