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ザ・ステイプル・シンガーズの2枚目にして最高傑作の『Be Altitude: Respect Yourself』
『Be Altitude』。日常の苦しさから這い上がろう。空高く飛べ。そのタイトルは、マタイ福音書の山上でのイエスの垂訓、八福の教えで伝えられている内容だ。空高く舞ってほしいというメッセージは十分に伝わるし、『Be Altitude: Respect Yourself』のスリーヴにはザ・ステイプル・シンガーズが笑顔で飛行機のエンジンに座っている。皆さん、準備はできていますか、飛行機の到着ですよ。搭乗券なんか必要ない、ただレコードをかけるだけなのだ。
『Be Altitude: Respect Yourself』はザ・ステイプル・シンガーズの最も偉大なアルバムと言われており、この作品だけで多くを物語っている。60年代前半に、グループはゴスペル・ミュージックで始まり、白人のファンからはフォーク・グループと認識されていた。60年代半ばにはもっとR&Bよりで、ヒッピーの反体制文化にピッタリな曲のカヴァーを歌った。68年にスタックス・レコードと契約。家族からなるこのカルテットは、徐々にメインストリームのソウルへと移行していき、メイヴィス・ステイプルズの声はアメリカのブラック・ミュージックにおいて主役となっていった。1971年からは、スタックスの共同経営者、アル・ベルにプロデュースされ、彼らはチャートの常連となっていった。本来のゴスペルの要素を失うことなく、生きている時代に合致し、純粋に人間らしさ溢れる作品のおかげで成功した。そのアル・ベルをプロデューサーに迎えた2枚目のアルバムが『Be Altitude: Respect Yourself』だった。このアルバムは最高傑作だ。
まず、ヒット曲がある。「I’ll Take You There」はより良い人生、または後世を約束し、全米No.1となった。「Respect Yourself」はグルーヴィーでチャンキーなアドバイスの曲で12位を記録、「This World」もトップ40入りした。しかし、アルバム全体の一貫性が何より絶妙だった。ヒット曲の間を埋めるために曲を散りばめたような作品ではない。「This Old Town (People In This Town)」、「We The People」、「Are You Sure」そしてムーディーなポップ調のステイプルズが見せつける「Who Do You Think You Are (Jesus Christ The Superstar)?」と、全てがパワフルな内容だ。「I’m Just Another Soldier」はスタンダードなゴスペルのコンセプトに、マッスル・ショールズのホーンを合わせ、70年代にふさわしい楽曲となった。「Name The Missing Word」はスムースなアップタウン・ソウルで始まり、ダウンビートのスワンプ・グルーヴへと変化し、ポップスのブルージーなギターのカッティングといった曲には、彼らが現代に物足りないと感じていたことが全て提示されている。アルバムはバラード曲「Who」で終わりを迎えるが、まるでメイヴィス・ステイプルズがリスナーと同じ部屋にいるかのように聴こえるのだ。
1972年でも、LPでさえヒット・シングルの二の次に考えられていた時代に『Be Altitude: Respect Yourself』はきちんとした一貫性のあるアルバムになっており、ソウルの熱、ゴスペルの炎、そしてブルーズ・ロックの確実さを持ち合わせていた。大人のためのよく考えられたレコードだったが、子供たちもそのアドバイスを必要としていた。その影響力は著しく、特にレゲエにおいてはそのダウンビートのルーツ感に親しみを感じたリタ・マーリー、デイヴ・バーカー、リー・ペリーなどがカヴァーした。しかし、ザ・ステイプル・シンガーズは、他のアーティストに称賛されることでその偉大さを証明したわけではない。彼らは自分たちが持っているものを十分に把握していた。だってアルバム・タイトルがそう物語っているではないか。彼らは卓越した高みにそびえ立ち、そして私たちもこのアルバムを聴くことで共感できるのだ。
Written by Ian McCann