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ベスト・スポーツ・アンセム15選:世界のアスリートを称える名曲たち
音楽とスポーツは太古の昔から密接に関連していた。素晴らしい楽曲は試合に備えるアスリートの助けになるし、彼らを想像さえしなかったほど高く (あるいは遠く) へと導く。そして、名曲の合唱なしに勝利を祝うことは考えられないだろう。そのことを念頭に、世界中の大規模スポーツ・イベントにぴったりな選り抜きの楽曲の数々を順不同で紹介しよう。
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1. フォール・アウト・ボーイ「Centuries」
2015年に全米トップ10入りを果たしたフォール・アウト・ボーイの「Centuries」は、あらゆる有名スポーツ・イベントのために作られたような一曲で、少しずつ盛り上がりをみせるヴァースから、スケールの大きいアンセム調のコーラスへとなだれ込んでいく。命をかけて戦う剣闘士たちを中心に据えたミュージック・ビデオも作られたこの曲は、大規模な大会を彩るためにあるような一曲である。
2. マルーン5「Animals」
マルーン5の5thアルバム『V』の収録曲にして、100万枚以上を売り上げ、アメリカのヒット・チャートのトップ5圏内に入った一曲。シンプルながらドラマティックな「Animals」で歌われるのは、執着的な愛や抗しがたい人間の魅力だ。
しかし、この曲は、同時にスポーツ関連の文脈にも完璧にマッチする。というのもその歌詞
so if I run it’s not enough
you’re still in my head, forever stuck
どれだけ走っても足りない
どうやってもきみのことが頭から離れないんだ
には、優れたアスリートたちが世界レベルで発揮しなければならない競争性が表現されているからである。
3. エマーソン・レイク&パーマー「Fanfare For The Common Man (庶民のファンファーレ)」
プログレッシヴ・ロック界のレジェンドであるエマーソン・レイク&パーマー。アーロン・コープランド作の「Fanfare For The Common Man (市民のファンファーレ)」をダイナミックなアレンジでカヴァーした彼らは、モントリオールのオリンピック・スタジアムでそのプロモーション・ビデオを撮影した。雪が積もり、見るからに凍えそうな環境での撮影は、オリンピック級の忍耐力を要したことだろう。
だが、その苦しみの甲斐は間違いなくあったはずだ。なぜなら1977年に全英トップ5入りを果たす思いがけないヒットを記録「Fanfare For The Common Man」はそれ以来、各種スポーツ・イベントを象徴する一曲になったからである。
「Fanfare For The Common Man」はその後も米CBSの番組『Sports Spectacular』のテーマ曲として長らく使用されたほか、オーストラリアを含む数々の国や地域のスポーツ番組を彩ってきた。
4. トラジカリー・ヒップ「Blow At High Dough」
トラジカリー・ヒップが1989年に発表したデビュー・アルバム『Up To Here』からシングル・カットされた最初の一曲にして、聴けば盛り上がること必至の「Blow At High Dough」は、メディアの内情を風刺したコメディー・ドラマ『Made In Canada』 (米CBS) のテーマ曲としても有名になった。
抑制が効きつつもダンサブルなロック・ナンバーであるこの曲は、規模の大きなスポーツ・イベントにぴったりの曲調であり、その挑戦的な歌詞の一節
I can get behind anything
俺はどんなものにも打ち勝てる
からは、自己ベストを更新し続ける名アスリートたちに備わっている精神力のようなものが感じ取れる。
5. ボン・ジョヴィ「Livin’ On A Prayer」
「Livin’ On A Prayer」はボン・ジョヴィのキャリアを代表するヒット曲にして、数十年に亘り巨大なアリーナを熱狂させてきたアンセムだ。それ自体がオリンピック級の名ロック・ナンバーである同曲が、このリストから外れることは考えられない。
Give it a shot
とにかくやってみよう
Take my hand, we’ll make it, I swear
俺の手を取ってくれ、俺たちなら絶対にやれる
と説くその歌詞には、百戦練磨のアスリートたちがメダルを勝ち取るのに必要な信念や意志の強さが表れている。
6. LL・クール・J「Rock The Bells」
LL・クール・Jが1985年にリリースしたデビュー・アルバム『Radio』は、伝説的なデフ・ジャム・レーベルからリリースされた最初のフル・アルバムとして有名だ。それ自体も特筆すべき偉業だが、同作の抜け目ない4thシングル「Rock The Bells」はヒップホップの文化がスポーツの世界に広く浸透するきっかけにもなった。
というのも、リヴァプールFCに所属したイングランドの名サッカー選手であるジョン・バーンズが、1988年の楽曲「Anfield Rap」で同曲のイントロの巧みなパロディーを披露。チームの名前でリリースされた同曲は、思わぬヒットを記録したのだ。
7. ビースティ・ボーイズ「Sabotage」
最高に荒々しいビースティ・ボーイズの「Sabotage」は、警察ドラマのパロディー仕立ての素晴らしいプロモ・ビデオと強く結びついている。そしてスパイク・ジョーンズが監督したそのビデオには、ニューヨーク出身の三人組である彼らの実にたくましい様子が捉えられている。壁をよじ登り、危険を顧みず屋根から屋根へと飛び移る彼らの姿を見れば、この曲が世界中のスポーツ・チームに使用されているのも何ら不思議ではない。
アイス・ホッケー・チームのシアトル・クラーケンがこの曲を登場曲によく選んでいるほか、オーストラリアのナショナル・バスケットボール・リーグに属するシドニー・キングスも同曲で場内を盛り上げているのだ。
8. ケイティ・ペリー「Rise」
ケイティ・ペリーのドラマティックな一曲「Rise」は、結束や強さに関連する歌詞
I won’t just survive/you will see me thrive
私はただ生き抜くだけじゃない/成功する姿を見せてあげる
を持ち、オリンピック競技に通じる印象的なビデオも作られた。そのため、この曲をオリンピックに関連づけるのは合理的な判断だったといえよう。実際、NBCスポーツは2016年夏季のリオデジャネイロ五輪の米国での中継において「Rise」を大々的に使用した。
9. アヴィーチー「The Nights」
アヴィーチーは2015年のヒット曲「The Nights」を、もともとは父親に捧げる楽曲として考え出した。そのため確かに、この曲には家族の絆が歌われている。だが喜びと悲しみが入り混じる素晴らしいEDMアンセムである同曲の根本にあるメッセージは、”人となりや出身地にかかわらず、人生を全うし全力を尽くすこと”だ。そしてそれはまさに、オリンピックをはじめとする世界の有名スポーツ・イベントの中心にある考え方なのだ。
10. ザ・キラーズ「All These Things That I’ve Done」
キラーズのデビュー・アルバムにしてマルチ・プラチナに認定された『Hot Fuss』の数あるハイライトの一つ。この「All These Things That I’ve Done」は、テレビ司会者のマット・ピンフィールドの活動や、心的外傷後ストレス障害 (PTSD) など人生を揺るがす問題を抱えたまま戦場から帰還した兵士たちを支援するアメリカ陸軍と彼との取り組みを題材にした曲だ。
熱や感情がこもっていて、それでいて感傷的になり過ぎることもない同曲の説得力は現在も衰えていない。また、そのメッセージ (圧倒的に不利な状況でも勝利を手にすること) は、オリンピックのレベルで戦う人びとの心に響くのである。
11. ヴァンゲリス 「Chariots Of Fire (炎のランナー)」
ギリシャ人作曲家のヴァンゲリスは、ヒュー・ハドソンが監督を務めた映画『炎のランナー』のメイン・テーマとして「Chariots Of Fire」を作曲。優美で壮大なこのインストゥルメンタル・ナンバーは、1981年のビルボード200チャートで4週に亘り首位に立った同映画のサウンドトラック盤の一曲目に配されたのち、作曲者である彼の代表作になった。
そして、オリンピックともっとも深く結びついた楽曲といえる「Chariots Of Fire」が使用されたこの映画では、1924年に金メダルを獲得した二人のイングランド人アスリートであるハロルド・エイブラハムスとエリック・リデルの感動的な物語が描かれる。
12. トム・ペティ&ザ・「I Won’t Back Down」
エレクトリック・ライト・オーケストラのジェフ・リンを共作者に、ザ・ビートルズのジョージ・ハリスンをギターにそれぞれ迎えた「I Won’t Back Down」は、トム・ペティの正式なソロ名義での1stアルバム『Full Moon Fever』 (1989年) の1stシングルとなった一曲。
非常にラジオ向きな同曲をシングル・カットしたのは正しい選択であり、全米12位まで上昇したこのシングルは、最終的にマルチ・プラチナに認定された収録アルバムの成功に弾みをつけた。
他方、その歌詞に込められたストレートなメッセージ
I’ll stand my ground / I won’t be turned around
俺は一歩も引かない / 背中を向けることもない
には、それぞれ分野においてすべての挑戦者たちを打ち負かす、優れたアスリートたちの反抗心も表現されている。
13. ブラック・アイド・ピーズ「Let’s Get It Started」
グラミー賞にも輝いたブラック・アイド・ピーズの「Let’s Get It Started」は、2004年の米NBAのプレーオフで大々的に使用された。その理由はこの曲を聴けば明らかだ。
and the bass keeps runnin’, runnin’ and runnin’…
ベースはいつまでも響き続ける
というフレーズが冒頭と最後に配された同曲は、ファンクの要素を取り入れた中毒性の高いヒップホップ・アンセム。これが流れてくると、エネルギッシュに身体を動かさずにはいられなくなるのだ。自分の武器を見つけようとしている未来の世界チャンピオンにとって理想的な一曲であることは間違いない。
14. クイーン「We Will Rock You」
レコーディング中、ドラムをのせたスタジオの台座の上でメンバーたちが足を踏み鳴らして作り上げたサウンドを特徴とするクイーンの「We Will Rock You」。同曲は1977年作『News Of The World (世界に捧ぐ) 』に収録されて以来、大勢の人びとが集まるイベントと強く結びつけられてきた。
観客もパフォーマンスに加わりやすい「We Will Rock You」は、コンサートでもスポーツの大会でも観衆を確実に盛り上げられる楽曲だ。そのため、パリ・オリンピックでもどこかのタイミングで聴ける可能性が高いだろう。
15. エニグマ「Return To Innocence」
1993年の『The Cross Of Changes』に収録されたエニグマの「Return To Innocence」は、アメリカで最高4位に達するヒットを記録。ルーマニアとドイツにルーツを持つ同グループにとって、現在でも同国のアーティストでの最大のヒット曲であり続けている。
彼ららしく幻想的でアンビエントな曲調に仕上がった (一方でジョン・ボーナムのドラムをサンプリングしたビートもアクセントになっている) 同曲は、もともとスポーツ関連での使用を想定して書かれたものではないが、1996年のアトランタ五輪のテレビCMで大々的に使用されたことからスポーツと深く結びつく楽曲となった。
Written By Tim Peacock
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