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ドレイクが成功を掴んだ3本目のミックステープ『So Far Gone』
カナダのテレビ番組『Degrassi: The Next Generation』で子役デビューを果たし、エンターテイメントの世界に足を踏み入れたドレイクの音楽的キャリアの始まりは2作のミックステープ、2006年の『Room For Improvement』と2007年の『Comeback Season』だった。
後に彼が名声を得ることになるカリスマ性に溢れつつも、実に様々なスタイルが詰め込まれたこれらの作品からは、当時のドレイクがまだ自身の音楽的方向性を探求している最中であることが露呈されている。このミックステープによってその計り知れないポテンシャルを見せつけたドレイクは、その後、ニューオーリンズ出身のラッパーで事業家でもあるリル・ウェインの2008年のツアーに迎え入れられ、自身もカナダの音楽シーンを代表する若き牽引者としてその地位を確立していった。
その翌年の2月13日、まだメジャー契約を交わしていなかったドレイクは、3作目のミックステープ『So Far Gone』を自身のOVOブログ上で無料配布した。結果的に、これによって彼をめぐるレーベル間の争奪戦が大きな注目を集めたわけだが、それに勝利をおさめたリル・ウェインのヤング・マネー・エンターテインメントは、2009年9月15日に、そのミックステープを基に制作されたデビューEP『So Far Gone』をリリースした。
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カニエ・ウエストの『808s & Heartbreak』のサウンドやオープンな感情表現から影響を受けたドレイクは、自身の心の痛みや孤独感、名声への渇望を、率直なリリックに込め、歌とラップによってそれを表現した。彼の仲間であるノア“40”シェビブとボーイ・ワンダが彼のミックステープのプロダクションを手掛け、彼らの手によってエレクトロ・ソウル、ポップ、激しいヒップ・ホップのビートといったドレイクのサウンドにとって重要な要素が加えられ、総合して、ドレイクがその後歩んでいくスターダムへと導くテンプレートを作り上げた。
非常に滑らかなトレイ・ソングスとのコラボ曲「Successful」、そして明るく爽やかな「Best I Ever Had」の2つのシングルによって、成功への道は開かれた。前者は全米チャートで17位のヒットを記録し、続く後者は24週に渡って全米チャート入りを果たし、最高2位を獲得するドレイクにとって初のスマッシュ・ヒットとなり、後にダブル・プラチナムに認定された。
その他のハイライトとして、リル・ウェインをゲストに迎え、80年代のブギについて歌う「Ignant S__t」、ビリー・ジョエルをサンプリングした「Uptown」、極めて暗い「The Calm」、そしてサンティゴールドとコラボレーションした実験的なエレクトロ・ポップ「Unstoppable」など、ドレイクの多才さを発揮した楽曲の数々を収録した今作は、彼のキャリアにおいて大きなターニングポイントとなった。
元々のミックステープからは5曲(「Houstatlantavegas」「Successful」「Best I Ever Had」「Uptown」 「The Calm」)のみが、ドレイク初のオフィシャル作品となったEP『So Far Gone』に収録され、この作品のために新たに「Fear」と「I’m Going In」の2曲がレコーディングされた。全米アルバム・チャートで初登場6位デビューした今作は、50万枚を超えるセールス記録によってゴールド認定され、その後リリースされ、見事全米No.1に輝いたデビュー・アルバム『Thank Me Later』への道を開いた。
Written by Paul Bowler
EP『So Far Gone』10周年を記念して2019年2月に発売された18曲入りの『So Far Gone』