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キム・カーンズ『Mistaken Identity』解説:9週全米1位となった「Bette Davis Eyes」収録作
アメリカでプラチナ・ディスクを獲得し、世界ツアーへと導いたアルバム『Mistaken Identity』が発売された時、ロサンゼルス生まれのキム・カーンズは1971年の『Rest On Me』から始まりすでに10年間作品を発表し続けてきた。
キム・カーンズは1970年代に徐々にファンの数を増やし、1975年のトップ40アダルト・コンテンポラリー・ヒット「You’re A Part Of Me」を出し、1976年には3作目『Sailin’』はあのジェリー・ウェクスラーがプロデュースを手掛けた。ジーン・コットンとの「Part Of Me」のリメイク版は1978年にTOP 40ヒットとなり、1980年にはケニー・ロジャースとのトップ5入を果たしたバラード「Don’t Fall In Love With A Dreamer」で多くの称賛を得た。
そのすぐ後に続いたアルバム『Romance Dance』に収録されたスモーキー・ロビンソンが1967年にミラクルズとレコーディングした「More Love」のカヴァーは、全米シングル・チャートでトップ10入りとなった。その独特のしゃがれ声、ソングライターとヴォーカリストとしての才能、そして魅力的なルックスがある彼女は、上手く次作を成功させてシングルをヒットさせれば、世界的にブレイクすることは夢ではなかった。
そして彼女はそれを果たした。1981年3月に発売したジャッキー・デシャノンとドナ・ワイスが1970年代に作曲した「Bette Davis Eyes」のカヴァーが全米チャートにランクインし、国内だけではなく海外でもセンセーションを起こした。9週間という驚くべき期間全米シングル・チャートでトップを飾り、世界的ヒットとなり、翌年のグラミーでは年間最優秀レコードと最優秀楽曲賞を受賞した。そのシングルは後に発売されたアルバム『Mistaken Identity』の効果的な予告にもなった。
ヴァル・ギャレイがプロデュースした『Mistaken Identity』にはもう一つのヒット・シングル「Draw Of The Cards」が収録されており、33年間経った今聴いても素晴らしい曲を収めたアルバムとなっている。タイトル・トラックはその繊細なパワーを保ち続け、スコットランド人ロッカーのフランキー・ミラー作曲の「When I’m Away From You」のカヴァーについても同じことが言える。キム・カーンズは、ロック・トラック「Break The Rules Tonite (Out Of School)」から、内省的なクロージング・トラック「My Old Pals」まで、幅広い表現法が可能なことを証明している。
1981年6月にアルバムは、スティクスの『Paradise Theater』から座を奪い、全米アルバム・チャートの1位に4週間ランクインした。キム・カーンズはその後も『Voyeur』やカントリー・チャートにもランクインされた1988年の『View From The House』など多くの素晴らしいアルバムを発表している。
最近キム・カーンズはナッシュヴィルで暮らしながら曲作りをしており、今年の夏にライヴも行っている。我々が『Mistaken Identity』を今回の記事として選択したのは、当時の大きな成功が理由だけではなく、一人でも多くの現代のリスナーたちにぜひ聴いて欲しいからだ。
Written By Paul Sexton
キム・カーンズ『Mistaken Identity』