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ウェス・モンゴメリー『California Dreaming』解説
16枚目のアルバムを制作した頃には、ウェス・モンゴメリーはすでにスターとして認められていた。それを証明するかのように、アルバムはジャズ・アルバム・チャートで1位に、そしてR&Bアルバム・チャートでは4位にランクインされ、 ランキング位置は低かったもののポップ・アルバム・チャートにも登場した。タイトル・トラックでもありオープニング・トラックでもあるママス&パパスの「California Dreaming」を聴いただけで、特別な作品であることが分かるだろう。ドン・セベスキーが手がけたアレンジは、多くの機微と共に興味深い紆余曲折で溢れている。
1966年9月14日から16日の間にニュージャージー州イングルウッド・ クリフにあるルディ・ヴァン・ゲルダー・スタジオにてレコーディングされたこのアルバム『California Dreaming』には、全体に計り知れないほどの貢献をもたらしている輝かしいミュージシャンの面々が参加している。ピアノにハービー・ハンコック、ドラムにグラディ・テイト、ベースにリチャード・デイヴィス、そして素晴らしい金管楽器奏者が何人もウェス・モンゴメリーと共に演奏しているのだ。
しかし、どんなに伴奏が最高でも、彼の融合するアタックと絶妙の表現方法でウェスはすべての舵を取っている。選曲については“軽いポップス”だと批判する者もいるが、それはポイントがずれている。大切なのは彼らの演奏だ。そんな批判をする奴らは、かつてハービー・マンが「ジャズをやっていて、もし10人以上のファンがいたら、商業的だとラベルを貼られてしまう」と言っていたように、大衆に受けれられることに厳しすぎるのではないだろうか。
この作品は確かに商業的かも知れないが、しかしそれは悪いことではない。「Oh You Crazy Moon」のウェスの美しいギターは、「More, More, Amor」での優美さと非常にバランスが良く合う。ボビー・ヘブの「Sunny」のカヴァーは、タイトルと同様に太陽のように眩しい。そしてもしファンキーなものを求めているのならば、「Green Peppers」がお薦めだ。レコード全体を通じてハービー・ハンコックの演奏も素晴らしく、常にウェスの演奏を補完しながらも、同時に彼をバンドリーダーに作り上げた輝きも見せている。このアルバムはハービーの代表作『Maiden Voyage』から約1年半後にレコーディングされたものである。