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ヴァンゲリス『See You Later』:エレクトロニカへと続く中継地点
80年代の始まりは、妥協を知らないギリシャ人楽器演奏者ヴァンゲリスの新たな音楽の時代を歓迎した。そしてそれまであまり使われることのなかった“ヴォーカル”という言葉と関連されるようにもなった。
ヴァンゲリスはそれまでにも彼の作品の中でヴォーカルを使うこともあった。その一例として1975年の『Heaven and Hell』がある。彼が加入寸前だったバンド、イエスのジョン・アンダーソンと初めてコラボレーションを行った作品だ。ジョン・アンダーソンがイエスと離れて活躍していた1980年初期にアルバム『Short Stories』を発売し、シングル「I Hear You Now」がヒットした。そして、ここで再発見するヴァンゲリスのアルバム『See You Later』にて二人は再びコラボレーションを果たしている。
『See You Later』もロンドンのマーブル・アーチ近くにあるネモ・スタジオにてレコーディングされた。彼の他の作品に比べてチャートでの成功は目立つものではなかったが、それは彼の音楽的スタイルの変化を象徴するだけではなく、我々が現在エレクトロニカと呼ぶジャンルへと続く中継地点だったとも言える。ヴァンゲリスはアルバムでシンセサイザー、グランド・ピアノ、そしてエレクトロニック・ピアノを、そして時々ジャズ調で実験的なトラックではドラムを弾いている。一例としてピーター・マーシュがボコーダーを使用してオープニング・トラック「I Can’t Take It Anymore」で歌っている。心ときめく「Multi-Track Suggestion」では、クラフトワーク調のシンセ・ビートとユーロディスコの要素が含まれている。
その他の『See You Later』の特徴として、ニューウェイブのアイコンとして知られるチェリー・バニラの話し声が収められた「Not A Bit – All Of It」や、ヴァンゲリスが手掛けた1982年の『ブレードランナー』のサントラを予告する「Memories of Green」が挙げられる。彼はこの悲しげなピアノが印象的なインストゥルメンタル・トラックを大ヒットしたSF映画のサウンドトラックに収めた。そしてこの作品は、後の1994年になってようやくアルバムとしてリリースされたのだった。アンダーソンは最後のトラック「Suffocation」とタイトルトラックでフィーチャリングされている。
6曲を収録したヴァージョンはヴァンゲリスが想像していたものとは違っていた。その後、「Fertilisation」と「Neigbours Above」の2曲が追加された8トラック盤がテスト・プレスされたが、正式にリリースされることはなかった。今作はアメリカでは発売されることなく、ヴァンゲリスのアルバムの中でも最もレアな作品と言えよう。
「このアルバム制作中は予定外のことだらけだった」と、ネモ・スタジオのエンジニア兼スタジオマネージャーであるキース・スペンサー=アレンは今作におけるヴァンゲリスとのレコーディングについてサウンド・オン・サウンド誌に話っている。「すべてはその時に取り掛かっているプロジェクト次第だった。アルバム制作中、私は昼頃にスタジオへ到着して下準備を整えた」。
「予定ではヴァンゲリスが2時頃に到着して、3時頃にレコーディングを開始するはずだった」とスペンサー=アレンは続ける。「少なくとも、レコード会社からプレッシャーをかけられると彼はそのスケジュールで来ていた。しかしそうじゃない時には夜の7時やもっと遅くまで来なかったりした。レコーディングがいざ開始すると、一段落する夜中の2時や朝の4時に休憩をとるまでずっと作業が続いたものさ」。
Written By Paul Sexton
ヴァンゲリス『See You Later』
初のグランド・ピアノのためのオリジナル作品集『ノクターン』発売中
- ヴァンゲリス アーティストページ
- ヴァンゲリスの新作ピアノ・アルバム『Nocturne』発売
- ジョン・アンダーソンとヴァンゲリスによる『Short Stories』
- ヴァンゲリスが手掛けた映画『1492 コロンブス』サウンドトラック
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