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オーティス・レディング『The Soul Album』:情熱的バラードとエネルギー溢れるダンス曲が収録された作品
そのかすれた声と懇願するような情熱的な歌い方で、ジョージア州出身のオーティス・レディングは、1960年代半ばに有名になり、『Otis Blue』や『The Soul Album』などの作品を通じてすぐにソウル・ミュージック界の最もアイコニックで愛されるヴォーカリストとなった。
牧師の息子として生まれ地元の教会の聖歌隊で歌い始めたオーティス・レディングは、悪名高い場所にて安いギャラを受け取りながら苦労をして活動していたが、即興のレコーディング・オーディションにて共同創立者のジム・スチュワートに好印象を与えたお蔭で1962年にスタックス・レコードと契約を結ぶことになった。その日にレコーディングした曲の中で1曲だけ自身が作曲した「These Arms Of Mine」があった。それはオーティス・レディングのデビュー・シングルとなり、彼が歩むことになるスターへの道を切り開いた。
『The Soul Album』はオーティス・レディングにとってスタックスの子会社ヴォルト・レーベルから出す4枚目のアルバムで、その頃にはすでにチャート入りシングルを10枚発売していた。アルバムには1965年のトップ10アメリカR&Bヒットとなった自身で作曲した「Respect」が含まれており、1967年にアレサ・フランクリンがカヴァーし、フェミニズムを象徴する有名な曲へと生まれ変わった。
スタックス所有のメンフィス・スタジオにてジム・スチュワートが指揮をとりレコーディングされた『The Soul Album』からのヒットは1曲だけだったが(ゆっくりとした情熱的なバラード「Just One More Day」は1965年12月に全米R&Bトップ20にランクイン)、昔ながらのオーティス・レディングらしいパフォーマンスが詰まっており、彼の未加工で原始的なパワーと、繊細なニュアンスの込められた感受性の両方を聴くことができる。その素晴らしくゴツゴツした歌声は、優れたリズム・セクション(当時すでに自分たちだけでヒットを飛ばしていたブッカー・T&ザ・MG’s)が奏でる器用なアレンジは、アルバムの特徴となるパンチの効いた間投詞を奏でるザ・メンフィス・ホーンズによって向上する。
懇願するディープ・ソウル・バラードを歌う時も、足を踏み鳴らすアップテンポな曲を歌う時も、オーティス・レディングは全身全霊を込める。人の曲をまるで自分の魂の奥深くから発生したかのように歌う稀な才能を持っている。『The Soul Album』でレディングは、ジミー・コックスが作曲を手掛けたブルース・シンガーのベッシ―・スミスのバラード「No One Knows You When You’re Down And Out」を歌い、人を惹き付ける実存的瞑想へと聴いた者を導いた。その強烈さは精神浄化作用がある。ジェリー・バトラーの「Cigarettes And Coffee」でも同じようにカヴァーを歌っている、サム・クックの1960年のヒット「Chain Gang」のダイナミックなカヴァーは少しだけ軽いタッチに仕上げている。スモーキー・ロビンソン作曲のテンプテーションズの1965年の大ヒット「It’s Growing」もカヴァーしており、非常に男っぽくリメイクしている。
ブルース・マンのスリム・ハーポの1965年のヒット「Scratch My Back」の粋なカヴァーがそうであるように、オーティス・レディングも時には遊び心を持つことがある。シンガーとホルン・セクションとの間に行われる直感的な“コール・アンド・レスポンス”を披露しており、それはオーティス・レディング・サウンドの重要な特徴となった。
ドーソン出身のオーティス・レディングは作曲家としての才能も持ち合わせており、バラード「Good To Me」や「Any Ole Way」を含む3曲を書いている。「Any Ole Way」はスティーブ・クロッパーと共作した曲で、オーティス・レディングは死後に発売された代表曲「(Sittin’ On The) Dock Of The Bay」も彼と共に作曲した。
同じくスタックス・レーベルのソウル・マンでライヴァルでもあるエディ・フロイドの曲も幾つかカヴァーし、典型的なオーティス・レディング・サウンドへとリメイクしている: 罪滅ぼしのバラード「Everybody Makes A Mistake」には消すことのできないオーティス・レディングという印が押され、もっと気楽なグルーヴの「634-5789」では彼の曲が必ずしも生きるか死ぬかの重いテーマではないことを証明している。
1966年7月に発売された『The Soul Album』はアメリカR&Bアルバム・チャートに28週間ランクインされ、最高3位に位置づけされた。それよりも恐らく重要なことは、アメリカでポップとロックの両チャートに登場し58位にランクインしたことで、オーティス・レディングのクロスオーヴァーな魅力が拡散していたことを象徴している。増大する白人リスナーからの人気(1966年に行ったヨーロッパ・ツアーをオーティス・レディングは既に成功させていた)を基に利益を得ようと彼はロック会場で歌うようになり、今となっては伝説となった1967年モンタレー・ポップ・フェスティバルに出演し最高潮に達し、スーパースターとしての地位を一気に手に入れた。
しかしその同じ年の1967年12月10日オーティス・レディングはウィスコンシン州マディソンのモノナ湖に飛行機が墜落し不幸にもこの世を去ってしまう。まだ26歳だった。
彼が亡くなってから50年経つが、オーティス・レディングの音楽は今でも生き続け、変わることなく人を魅了しインスピレーションを与え続けている。情熱的なバラードとエネルギー溢れるダンス曲を含む『The Soul Album』は、50年前に世界が失った並外れた才能の持ち主である一人のアーティストの存在を思い出させてくれる。しかし最も大切なことは、恐らく、オーティス・レディングの音楽の永続時な素晴らしさを証明していることで、そのソウルが込められた威厳は時間が経過しても少しも薄れることはない。
Written By Charles Waring
<ソウルの伝説オーティス・レディング・フォーエヴァー>
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