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ザ・キュアー『Entreat』:ロック界で最も必要とされるライヴ・アルバムの1つ
ザ・キュアーの『Entreat』は、ロック界で最も必要とされるライヴ・アルバムの1つとして認識されているが、当初は正式にリリースされる予定ではなかった。
ライヴ盤『Entreat』は、1989年『Prayer』の大規模ツアー中、ロンドンの巨大会場ウェンブリー・アリーナで行われた3夜のステージから集めた音源を収録したアルバムで、当初はプロモーション用のみ、しかもフランスのみのはずだった。しかし、1990年5月に、イギリスのHMVの店舗にて数曲を収めたプロモーションCDとカセットが配られ、海賊版が出回るようになると、ザ・キュアーのレーベルのフィクションが正式に(限定ではあったが)発売することにした。
『Entreat』は1991年の春に全英TOP40チャートで最高10位にランクインされたが、その後は興味深い複雑な運命をたどることになる。90年代初期にHMVの店舗にて、ザ・キュアーの過去のアルバムを2枚購入すると『Entreat』が無料でついてくるというキャンペーンをしばらくの間行っていたが、それでも何年もの間、アルバムは入手困難だった。元々のトラックリストには、ツアーで披露したアルバム『Disintegration』からの12曲中8曲のみがライヴ・ヴァージョンとして収録されていたため熱烈なファンたちは全てが収録されていないことに不満を抱いていた。
しかし、2010年になって、ユニバーサル・ミュージック/ポリドールが『Disintegration』のデラックス・リイシュー盤に同アルバムの12曲全てのライヴ・バージョンを収録した3枚目として発売するとファンたちは歓喜した。それから2年後に12曲のライヴを独立させたダブル・ディスク作品『Entreat Plus』として発売、白い模様の入った限定盤アナログ(現在では非常に入手困難となっている)も含まれていた。
レアな作品としての価値だけではなく、ザ・キュアーの才能の絶頂期をとらえたパフォーマンスが鮮明に描かれているとして『Entreat』の評判は高まり続けた。評論家たちから大絶賛された『Disintegration』が全世界で300万枚の売上を達成しようとしている最中、『Prayer』のアリーナ・ツアーではロバート・スミスとメンバーたちはアルバムからの12曲全曲のパフォーマンスを披露しつつ、過去作品も演奏し、何度もアンコールに応えた。
その結果として、ザ・キュアーがライヴ盤『Entreat』で掴んだサウンドは卓越したものとなった。『Disintegration』ツアーはこの上なく物憂げなものにはなったが、アリーナ会場のステージではこのアルバムにおける一番の魅力がさらにパワーアップしている。陰気で壮大な「Pictures Of You」と「Closedown」のライヴ・ヴァージョンから始まり、代表的なヒット曲「Lovesong」と幻覚のような「Lullaby」はオアシスの穏やかさを感じさせ、感動的で優雅な「Untitled」は会場を最高に盛り上げた。しかし、やはりこのアルバムを代表する力作は、冷酷な「Disintegration」である。それは8分間及ぶ容赦ない苦痛であり、ザ・キュアーがその後それほどまでに喚起することのなかった『Pornography』を彷彿とさせる激しさを伴っている。
『Entreat Plus』は180gのレコード盤としてリイシューされたザ・キュアーの数々のアルバムの一つ。他の作品と『Entreat Plus』の購入はこちらから。
Written by Tim Peacock
ザ・キュアー『Entreat Plus』
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