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reDiscover:ブリンク182『Enema of the State』

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90年代が終わりを迎え、新しいミレニアムが始まろうとしていた頃、USカレッジ・ラジオの最前線では目立った変化が起こり始めていた。それは後にオルタナティヴ・ロック・ミュージックで起きた世界規模の革命の火付け役となった。

“ポップ・パンク”という言葉がしっくりこない人は多いだろう。その複雑な原点は、幅広く70年代パンクから80年代のニュー・ウェイヴを含み、そこにアグノスティック・フロント、ブラック・フラッグ、フガジ、マイナー・スレットなどの激しいアメリカン・ハードコア・バンドが散りばめている。ポップ・パンク史にとって決定的な瞬間となった90年代半ばに、グリーン・デイの1994年の伝説的アルバム『Dookie』が発売され、それはオフスプリング、MxPx、SUM 41など数多くのバンドに道を開いた。

その中のひとつであるblink-182の画期的な『Enema of the State』がリリースされると、1999年の夏にポップ・パンクというジャンルが爆発的に人気となり、blink-182は世界中のチャートを支配してプラチナ・ディスクを獲得し、大きな冒険という竜巻に飲まれていった。

90年代初期から地元サンディエゴのパンク・シーンで活動していたblink-182は、そのおちゃらけたライヴと、思春期の恋愛やオナラのネタ、高校生の悪ふざけなどを主にテーマにしたキャッチーな3分トラックのお陰で注目を浴びた。しかし、最初に発売された2枚のアルバム、1995年の『Cheshire Cat』と1997年の『Dude Ranch』は、地元でしか売れなかった。結成メンバーのギタリスト/ボーカルのトム・デロングとベーシスト/ヴォーカルのマーク・ホッパスは、ドラマーのスコット・レイナーを元アクアバッツのトラヴィス・バーカーと入れ替えて、その後メインとなる3人で『Enema Of The State』をレコーディング。

約3ヶ月をかけてレコーディングしたメンバーたちはベテランのパンク・プロデューサーのジェリー・フィン(ランシド、モリッシー、マッドネス、ペニーワイズ、グリーン・デイの『Dookie』)を迎え、彼の魔法の力を借りた。一般的に使用されているデジタルのPro Toolsではなくアナログ・テープに録音したお陰で、光沢のあるポップな輝きを作品に与えることができた。

ジェリー・フィンと彼らのコラボレーションは正に適切であった、デロングとホッパスの武器となる非常なキャッチーな曲は丁寧な助言を必要としていたからだ。1988年10月後半にレコーディング・セッションが始まると、MCAは初めて彼らにそれなりのレコーディング予算を与えた。その結果が彼らの人生を劇的に変えてしまったことは思いもよらないことだった。

オープニング・トラック「Dumpweed」が猛スピードで飛び出してくる瞬間から『Enema Of The State』はblink-182が新たな段階に突入したことが伝わってくる。まずは、オフテンポの力強い大量のリズムを通じてルールを曲げるバーカーの素晴らしいドラムが響く。ホッパスとデロングは大きな進化を遂げたヴォーカルを誇らしげに披露している。それは「Don’t Leave Me」や「Aliens Exist」で証明されており、アルバムで初めてその2人のヴォーカルが前面に出ている。

「自分たちのファンを知ること」という考えを守り続けるblink-182の歌詞の内容と曲のタイトルは、コンテンポラリーUSポップ・カルチャー(ティーン・コメディ映画『アメリカン・パイ』やGapのテレビCMなど)をほのめかしており、特に「Going Away to College」や世界的ヒット・シングルとなった「What’s My Age Again」と「All the Small Things」はそうだと言えるだろう。しかし、底には哀愁のようなものも隠れている。

表面的に『Enema Of The State』は、ティーンの非行の物語が詰まったアルバムのように思えるが、実際には青年期のノスタルジアをテーマとしている。例えば3枚目のシングル「Adam’s Song」や「Mutt」では、バンドから連想する傲慢なユーモアとは全く違った面が見え、時の試練に耐えられるバンドとしての可能性を垣間見ることができる。非常に一貫した35分間のアルバムの最後には「Wendy Clear」と「Anthem」が収録されている。

明るく生き生きとしたギターの音色、見事なドラム、そして病みつきになるコーラスで満たされている『Enema Of The State』は、このスリーピース・バンドをチャートの上位へと押し上げ、完売したアリーナ・ツアーや世界的な音楽フェスでヘッドライナーを務め、洋服ラインを販売したり、リアリティ番組に出演したり(トラヴィス・バーカーの『Meet the Barkers』)、企業の宣伝活動も行った。

フィンがバンドに与えた影響を認識したメンバーたちはその後発売された3作品、ライヴ・アルバム『The Mark, Tom And Travis Show (The Enema Strikes Back!)』、そしてスタジオ・アルバム『Take Off Your Pants And Jacket』と『Blink 182』でもフィンを迎えた。フィンは39歳の若さで2008年に脳出血で亡くなったが、彼がblink-182と手掛けたアルバムは今でも史上最も決定的なポップ・パンク作品として存在し続け、『Enema Of The State』はプロデューサーとして彼が最も輝いた瞬間でもあった。過去のノスタルジアに満ちた今作は、コレクションとしてはマストである。

レコード盤ボックス・セット『10LP Blink-182』には、『Enema Of The State』や『Take Off Your Pants And Jacket』などのバンドを代表する傑作アルバムが含まれている。

Written By Oran O’Beirne


『Enema Of The State』の配信、ストリーミング、CD購入などはこちら

blink-182の「All the Small Things」や、ノー・ダウトやブラッドハウンド・ギャングなどパンク影響を受けたバンドを取りそろえたWelcome To The 90sのプレイリストをチェックするにはここをクリック

 

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