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reDiscover:ビル・エヴァンス・トリオ『Bill Evans With Symphony Orchestra』
「Bill Evans with Symphony Orchestraが出てきた頃、ヴァーヴ(訳注:レーベル名)に夢中になり始めた」 – プロデューサー、トミー・リピューマ
くつろぎながらジャズを楽しみたいのなら、48人編成のオーケストラをビル・エヴァンス・トリオとクラウス・オガーマンが指揮し、Bill Evans With Symphony Orchestraの名の下でリリースされた作品を聴けばいい。1966年2月に発売された今作は、ヴァーヴ・レコードのA&Rディレクター、クリード・テイラーが発案したアルバムである。
テイラーは、恐らくエヴァンスと同じぐらいに、クロスオーヴァーな成功を収めることを切望していた。そこで1963年にクラウス・オガーマンとアルバム『Bill Evans Plays The Theme From The V.I.P.’s And Other Great Songs』をレコーディングした。重要となるラジオでのオンエアを狙い、収録楽曲中の様々な人気映画音楽をシングルとしてリリースした。
お陰でエヴァンスはより多くの観客に知られることとなり、親しみやすいアルバムのお陰でジャズを聴き始めるようになった人は数知れない。アルバム『Trio ’64』、『Trio ’65』、『Bill Evans At Town Hall』、『A Simple Matter of Conviction』 、そして言うまでもなく『Bill Evans With Symphony Orchestra』はどれもエヴァンスの伝説を作り上げるのに欠かせない役割を果たしている。
オガーマンとのアルバム作りは1965年9月29日にニューヨークで開始し、4トラックがレコーディングされ、アルバムの残りは12月に仕上げられた。アルバムには、グラナドス、バッハ、スクリャービン、フォーレ、ショパンの曲、そしてエヴァンスが作曲した2曲とオガーマンが作曲した1曲が含まれている。
フォーレの「Pavane」はその美しさと叙情的なサウンドで揺るぎない人気を維持し続けている。エヴァンス作曲の「Time Remembered」と「My Bells」は両方とも良い曲で、特に「My Bells」はそうだと言えるだろう。
エヴァンスによると、「このアルバムを通じてなにか新しい音楽を示そうとしていた訳ではない。ただ私たちには、なにか芸術的なものを作りたいというひとつの原動力があった」確かに芸術的で技巧的ある。しかし何よりも、この作品は美しい。
「ビル・エヴァンスを初めて聴いた時はティーンエイジャーで、彼とオスカー・ピーターソンは私がピアノを始めた理由だ。『Bill Evans with Symphony Orchestra』は素晴らしく、そして時々見落とされてしまうアルバムなんだ」(デヴィッド・フォスター)