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クイーンズライチ『Operation: Mindcrime』解説:最も映画的でプログレッシブな不朽の名作

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米ワシントン州の‟考えるメタル”バンド、クイーンズライチ(Queensrÿche)は、1986年に発表された2枚目のアルバム『Rage For Order』で意識的な変革を開始した。ジューダス・プリーストやアイアン・メイデンへの愛は変わらないものの、彼らは伝統的なメタルとの差別化を求めて、プログレッシブ・ロックの構造やエレクトロニックな装飾を試し始めたのだ。

『Rage For Order』は堅実な作品ではあったが、振り返ってみるとこのアルバムは画期的な1988年発売の『Operation: Mindcrime』への架け橋として見るのがベストであろう。この高尚なコンセプト・アルバム『Operation: Mindcrime』は、ヘヴィ・メタルの限界を打ち破り、それまでピンク・フロイドやラッシュが支配していた領域にクイーンズライチを送り込んだのだ。

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10年以上に渡って演奏と作曲の腕を磨いてきたクイーンズライチは、『Operation: Mindcrime』の制作に取り掛かった頃、その技術と創造性は頂点を迎えようとしていた。ジェフ・テイトのヴォーカルはクリアで力強く、高音のビブラートはアイアン・メイデンのブルース・ディッキンソンを思い起こさせるが、そこには彼が大好きだったデヴィッド・ボウイやデペッシュ・モードのような繊細さと弱さも込められていた。

一方、70年代と80年代のメタルに精通していたギタリストのクリス・デガーモとマイケル・ウィルトン は、美しいアルペジオと印象的なリフ、焼け付くようなリードギターによって、楽曲の中に点と点を結ぶようなダイナミクスを与えていた。

アルバムのテーマと物語

アルバム『Operation: Mindcrime』は、政府の腐敗、メディア操作、中毒、搾取、革命、殺人などをテーマにしている。ジェフ・テイトはカナダに移住した時、ケベック州の過激な分離主義者から、爆弾テロを行う組織もあるというとんでもない話、そして大量の薬物を使用して廃人になってしまった友人の話を聞いて、このアルバムの構想を思いついた。そして陰謀とヘロインの乱用、そして運命的なロマンスという、融合することが難しいテーマをまとめあげ、80年代の最も魅惑的な名作となるコンセプト・アルバムに集約したのだ。

アルバムは、病院のアナウンスで始まる。主人公のニッキーは、精神病院で目を覚まし、自分が政府転覆のために雇われた殺し屋だったことをぼんやりと認識する。彼は「今、思い出した / I remember now」と言いながら、現在の苦境に至るまでに出会った人々や出来事をフラッシュバックする。堕落した神父のもとで、修道女のふりをして働くように強要された10代の娼婦、メアリー。そのメアリーはニッキーを誘惑して中毒症状を起こさせ、上司であるドクターXの命令で、政治家や宗教家の暗殺をニッキーに勧める。

その後、ドクターXはニッキーに対してメアリーの殺害を命じるが、ニッキーはそれを拒否。しかしながらニッキーはロザリオに吊るされたメアリーの遺体を発見することになる。打ちひしがれたニッキーは精神的に壊れてしまい、メアリーらを殺した罪で逮捕される。誰がメアリーを殺したのか、ニッキーとドクターXにどんな未来が待っているのかをあえて明らかにせずまま、物語は幕を閉じるのだ。

Spreading The Disease (Remastered 2003)

 

物語にあわせた楽曲

『Operation: Mindcrime』の複雑で映画のようなストーリーにマッチするような楽曲を制作するため、バンドはプログレ/パワーメタルのアプローチを微調整しながら、歌詞の内容に集中してアルバムを作り始めた。

「Revolution Calling」「Spreading the Disease」「The Needle Lies」のようなアクション・シーンの楽曲ではアグレッシブなリフや鋭いリズム、そして燃えるようなソロが収められた。登場人物が内面的な葛藤や困難な決断に場面には、ムードのあるアルペジオ、複数のリズム、突然のテンポ変化が登場する「The Mission」や、アルバムで最も注目すべき11分近い「Suite Sister Mary」を。また、啓示や失恋の瞬間には、バンドは数学的方程式を捨て「Eyes of a Stranger」や「I Don’t Believe in Love」といったシンプルで心に響く曲作りを行った。

Queensrÿche – I Don't Believe In Love (Official Music Video)

アルバムにさらなる没入感を高めるため、クイーンズライチは映画音楽の作曲家マイケル・ケイメンとプロデューサーのピーター・コリンズ(偶然ではないが、頭脳派パワー・トリオ、ラッシュの2枚のアルバムを手がけている)を起用。最後にバンドは、トラック間にサウンドエフェクトを加え、5人の俳優に台詞を読ませてストーリーを固めた。その結果、アルバムは大げさなものではなく、壮大なものに仕上がったのだ。

 

その評価

『Operation: Mindcrime』は、すぐにロック・メディアや評論家から支持され、多くのメタル・ヘッズたちは観念的な内容に圧倒されたものの、アルバムは全米アルバムチャートでは50位とすぐさま商業的な成功は収めることはなかった。しかしメロディックなシングル「Eyes of a Stranger」が強力なエアプレイを受けた後にゴールド・ディスクを獲得。これは、今後の成功への展開を示すものだった。

『Operation: Mindcrime』でラッシュの『2112』に相当するような爆発的なロック・オペラを録音したクイーンズライチは、「Eyes of a Stranger」と「I Don’t Believe in Love」の成功を基に、1990年には続くアルバム『Empire』を制作。このアルバムは彼らの作品の中で、最も商業的に成功を収めたものとなった。

Queensrÿche – Eyes Of A Stranger (Official Music Video)

『Operation: Mindcrime』は、クイーンズライチの作品の中で最も映画的であり、プログレッシブであり、不朽の名作となった。アルバムで語られるストーリーは発売当時だと非現実的なものだったかもしれない。しかし、ジェフ・テイトによるメディア操作、政治的暴動、陰謀論、政府の混乱という作品に込められたディストピア的なビジョンは、2021年現在においてこれまで以上に適切なものになっているのかもしれない。

Written By Jon Wiederhorn



クイーンズライチ『Operation: Mindcrime』
2021年6月25日発売
国内盤7月14日発売
スーパー・デラックス・エディション[4SHM-CD+DVD]
2CDエディション

★CD1:オリジナル・アルバム:新リマスター
★CD2:B面曲、レア曲を収録
★CD3:ライヴ・アット・ハマースミス・オデオン[1990/11/15]
★CD4:ライヴ・イン・ウィスコンシン[1990/5/10-12]
★DVD:オペレーション:ライヴクライム(1990/5/10-12:ライヴ・イン・ウィスコンシン)/プロモ・ヴィデオ/ザ・メイキング・オブ・オペレーション:マインドクライム、オペレーション:マインドクライム TVスポット
★豪華ブックレットにはジェフ・テイトの最新インタヴューを含む、アレックス・ミラスによるエッセイ等を収録。
<日本盤のみ> ★解説:伊藤政則/英文ライナーの翻訳/歌詞対訳付   ★SHM-CD仕様 ★DVD:日本語字幕付

 

クイーンズライチ『Empire』
2021年6月25日発売
国内盤7月14日発売
スーパー・デラックス・エディション[3SHM-CD+DVD]
2CDエディション

★CD1: オリジナル・アルバム:新リマスター
★CD2: B面曲、レア曲を収録
★CD3:ライヴ・アット・ハマースミス・オデオン[1990/11/15]
★DVD:未公開映像を含むインタヴュー、ライヴ、プロモ・ヴィデオ等
★豪華ブックレットにはジェフ・テイトの最新インタヴューを含む、アレックス・ミラスによるエッセイ等を収録。

<日本盤のみ> ★解説:伊藤政則/英文ライナーの翻訳/歌詞対訳付  ★SHM-CD仕様  ★DVD:日本語字幕付


 

 

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