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パルプ『Different Class』解説:結成から17年の時を経て全英1位を獲得したアルバム
アルバム『Different Class』は1995年11月11日に全英1位を獲得したが、この偉業の達成には17年の歳月がかかった。
シェフィールド出身のパルプ(Pulp)のもともとの起源はニュー・ウェーヴが最盛期を迎えていた1978年にまで遡るが、彼らは1983年になってようやくレコード・デビューを果たしている。同年の春、彼らはアルバム『It』と同作からのシングル「My Lighthouse」をインディー・レーベルのレッド・ライノから発表した。
それから1990年代の初頭にかけて、パルプはいくつかのシングルのほか、二作の新たなスタジオ・アルバムも発表。それによってパルプとそのカリスマ的なフロントマンであるジャーヴィス・コッカーは、音楽誌やインディー界隈からたくさんの賛辞を受けた。しかし、一連の作品はどれもメインストリームのチャートを賑わすには至らなかった。
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状況が好転したアイランドとの契約
そんな中、状況は大きく好転することになる。グループはアイランド・レコードと契約を結び、1994年の4thアルバム『His ‘n’ Hers』で同レーベルからのデビューを果たしたのだ。
同作は、チャートのトップ40に入ったシングル「Do You Remember The First Time」や同じくトップ20入りしたEP『Sisters』のヒットも助けとなり、全英トップ10圏内まで上昇。さらにはゴールド・ディスクにも認定された。永遠にも思えるほどの長いあいだ脚光を浴びられずにいたグループに、大きな成功を手にする好機が訪れたのである。
本人たちの望んだことではなかったが、彼らはブラーやオアシスのほか、流行に便乗して一時的な人気を得た多くのグループと並んで、メディア主導で形成されたブリットポップ・ムーヴメントを牽引する存在になった。
そして1995年、パルプは4ヶ月のあいだに二つのシングルで全英2位をマーク。それが「Common People」と、「Mis-Shapes / Sorted For E’s & Wizz」の両A面シングルである。個性的で、アンセム的で、徹底してイギリス的なそれらの楽曲は、一時代を決定づける重要作になった
これらのシングルの成功は、『Different Class』という巧いタイトルが付けられた新作アルバムに向けての完璧なお膳立てになった。10月末にリリースされた同作には上記のシングルのほか、同じくトップ10入りを果たした「Disco 2000」も収録。クリス・トーマスをプロデューサーに迎えたこのアルバムでは、格好良さと商業的な魅力がこれ以上ない形で融合していた。
『Different Class』は11月11日付のアルバム・チャートで、シンプリー・レッドの『Life』を首位から退けたうえ、それまでチャートを席巻していたオアシスの『(What’s The Story) Morning Glory?』をも飛び越えて初登場1位を獲得。さらには英国で4xプラチナに認定され、1996年のマーキュリー賞にも輝いた。こうしてパルプは、日の当たらない場所で苦労を重ねる日々から脱却したのである。
Written By Paul Sexton
パルプ『Different Class』
1995年10月30日発売
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