News
ポスト・マローン『Stoney』解説:デビュー作からいかにして音楽的アイデンティティを確立したのか
ポスト・マローン(Post Malone)はデビュー・アルバム『Stoney』から、ほかの誰の真似でもない、自身のアイデンティティを確立した。彼は既存のレッテルや定義に自身の音楽的なヴィジョンを迎合させることを拒んだのだ。
そんなポスト・マローンのポップ・ミュージック・シーンへの出現は、まるでおとぎ話のようだった。いきなりメインストリームに躍り出るのが困難だと思った彼は、世界中を味方につけることであらゆる障害を乗り越え、2016年に最も注目されたアルバムのひとつであるデビュー・アルバム『Stoney』を作り出したのである。
<関連記事>
・今さら聞けない「ポスト・マローンの何がすごいのか?」
・ポスト・マローンとザ・ウィークエンドによる新曲「One Right Now」配信開始
迎合を拒絶
本名オースティン・リチャード・ポストことポスト・マローンが単なるラッパーやシンガーだったことは一度もない。彼はさまざまなスタイルを自在に行き来する稀有な能力を持ったミュージシャンだ。ポスト・マローンは既存のいかなるスタイルにも義理はない。だからこそ一部のあいだで物議を醸しながらも、大衆に受け入れられるまでになったのだ。
しばらく無名時代を過ごした後、ポスト・マローンはプロデュース・チームのFKiに見出された。2015年8月にリリースしたシングル「White Iverson」は瞬く間に話題を呼び、彼はサウンドクラウドのラッパーから真のスターへと変貌を遂げたのだった。
名を上げるにつれ、ポスト・マローンとコラボするアーティストも豪華になっていった。彼はカニエ・ウェストと共演し、ジャスティン・ビーバーのツアーのオープニング・アクトにも起用。その中で発表し話題になったミックステープ『AUGUST 26TH』には、ラリー・ジューンや2チェインズ、FKi 1st、ジェレマイ、リル・ヤッキー、ジェイデン・スミス、テオらがゲスト参加した。
そして音楽界の大物の仲間入りをしたポスト・マローンは、満を持して『Stoney』を制作。2016年12月9日に発表された同作で彼はスターとしての地位を確立したのである。
柔軟性に富んだアーティスト
通常版と同時に発売されたデラックス版には計18曲を収録した『Stoney』で、ポスト・マローンは自分自身に誠実すぎることも恐れない多才さを示した。デビュー・アルバムから、彼は創造的な柔軟性を発揮して批評家たちに特定の枠にはめられることを拒否。彼はヒップホップやポップ、カントリーに至るまで多くの影響源を融合させ、独特なサウンドを作り上げたのだ。
ポスト・マローンは『Stoney』で、ドラッグやアルコールへの依存との闘いや、新たに手にした名声による問題の深刻化を題材にする。だが彼は憂鬱の殻を壊し、成功を満喫する方法も知っていた。『Stoney』は人間の人生におけるあらゆる感情を取り入れた作品なのだ。
およそ1年前に先行リリースされていた「White Iverson」は、『Stoney』で聴けるより洗練されたアルバム・ヴァージョンでも光を放っていた。バスケットボールの殿堂入りした名選手アレン・アイバーソンに捧げた同曲は、『Stoney』のトーンを決定づけ、ポスト・マローンのキャリアを軌道に乗せた。同曲はこれまでに500万ダウンロードを超え、プラチナ・ディスク5回分に相当する5×プラチナ・ディスク・ディスクに認定されている。
人生を変えた成功
アルバムに収録されたミーゴスのクエイヴォを迎えた「Congratulations」は、ふたりのアーティストが経験した人生を変える成功を楽曲にした高揚感のあるアンセムだ。メトロ・ブーミン、フランク・デュークス、ルイス・ベルの3人がプロデュースした同曲は「White Iverson」を上回り、全米シングルチャートで8位まで上昇。当時のポスト・マローンにとって最高位を記録したシングルとなった。
マローンは友人たちをゲストに迎えて『Stoney』の空気感を作り出した。その中にはR&Bのスターであるケラーニが参加した「Feel」、ファレル・ウィリアムスがプロデューサーとして参加した「Up There」では艶のあるソウルフルなサウンドに寄与、ジャスティン・ビーバー参加の「Deja Vu」やリヴァー・タイバーによるミニマリスト的サウンドの「Cold」も含まれ、『Stoney』の多様性の形成に寄与している。作品を通してポスト・マローンは、幅広いスタイルにわたって心のこもった歌詞やヴォーカルを披露。同作を個性豊かな作品に仕上げている。
成功を約束されたデビュー
あらゆる面で『Stoney』は成功を約束されたデビュー作であり、ポスト・マローンの現在の大成功を予見させるものだった。同作は米全米アルバム・チャートに6位で初登場し、最高4位まで上り詰めた。これは2010年代中盤の新人アーティストとしては異例の記録だった。発売から1年半後の2018年6月6日には、同作はRIAAによりトリプル・プラチナに認定。音楽界の新しい潮流はジャンルに縛られず、商業的な成功も両立できるというポスト・マローンの主張は証明された。
ポスト・マローンが好むメロディックな歌と華やかなトラップ・サウンドの組み合わせにより、『Stoney』は新進気鋭のスターにはめずらしい注目のデビュー作となった。しかしながら、マローンにとって、同作は頂点ではない。彼はきっとこの先、さらなる成長を遂げていくことだろう。
Written By Rashad Grove
ポスト・マローン『Stoney』
2016年12月9日配信
iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music
コラボの新曲
ポスト・マローン&ザ・ウィークエンド「One Right Now」
2021年11月5日配信
iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music
- ポスト・マローン アーティストページ
- 今さら聞けない「ポスト・マローンの何がすごいのか?」
- ポスト・マローン、新型コロナ対策支援ニルヴァーナ・トリビュートコンサート
- ポスト・マローン、ポケモン25周年ライヴ直前にHootie & the Blowfishのカバー公開
- ポスト・マローン、ポケモン25周年記念ヴァーチャル・コンサートに出演決定
- 欧米から見たK-POP:初めて耳にする最高のポップ・ジャンル
- 2010年代世界の音楽シーン総まとめ:大きな変革の10年を9つの要素で振り返る