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パール・ジャム『Backspacer』:全米1位となったどのバンドも見習うべき、円熟期の最高のアルバム

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『Backspacer』によって、パール・ジャムはどのバンドも見習うべき円熟期の最高のアルバムの1枚を作り上げ、そして彼らが今でも最高に楽しんでいることを証明した。


2006年の『Pearl Jam』 (またの名を『The Avocado Album』) のリリースの後、パール・ジャムは彼らが非常に居心地の悪さを感じていた現代のロック界の最前線に再び立った。このアルバムで彼らはストレートにロックのルーツに回帰したのだ。シアトル育ちの彼らが2000年の『Binaural』や2002年の『Riot Act』で紆余曲折して辿り着いた道だ。

その後のツアーでパール・ジャムの熱狂的なファン層が長年に亘って彼らを支えていたことが明らかになったが、グループの方向性がどうであれ『Pearl Jam』は彼らにはキラー・チューンを書く力があることを証明したのだ。2009年リリースの9枚目のアルバム『Backspacer』は、そうした彼らへの期待が非常に大きくなっていたタイミングで、彼らが前作のフォローアップ作の準備を整えてリリースした作品だった。

猛烈な勢いとパワー

2008年、パールジャムは彼らのキャリアの中でも最も激しく、最も素晴らしいツアーの一つに乗り出した。アメリカの大統領選挙が近づいていたこともあってか、もしくはスタジオ作業から開放されたかったこともあってか、エディ・ヴェダーとメンバーたちは猛烈な勢いとパワーでアメリカ東海岸を縦断、6ピース・バンド (オルガン奏者ケネス・”ブーム”・ギャスパーが2002年に加入) としての一つの力の凄さを見せつけてみせた。

長年プロデューサーを務めるブレンダン・オブライエンとともにスタジオに入った『Backspacer』のセッションはまさに一流ならではの見事さで、バンドのサウンドに上手く収まるさまざまな楽曲が集まった。30日の期間で精力的にレコーディングされた『Backspacer』は、彼らがシアトルの拠点以外で録音したアルバムとしては1996年の『No Code』以来のものだった。全体として、熱気と原点回帰の色合いと歯切れの良さが印象的だ。少なくともジョージ・W・ブッシュ時代の多くのアルバムで支配的だった荒涼とした世界観と比較すれば、ヴェダーの歌詞は概して楽観的なものが多い。

 

満載の輝かしさ

シアトルで撮影されたキャメロン・クロウ監督によるライヴ・パフォーマンス映像が付属していた『Backspacer』のリード・シングル「The Fixer」は、正真正銘のファイアーボールだ。現代のロック専門ラジオにうってつけのエネルギー全開の作品で、パール・ジャムには静かな余生を求めて中年に向かうような気配がまったくないことがはっきりとわかるものだった。とは言え『Backspacer』の全体的なトーンを決定づけているのは、シャープな「Gonna See My Friend」の方だろう。3分に満たないトラックで、常に信頼できるマイク・マクレディとストーン・ゴッサードによる信頼感抜群のギター・タンデムが光っている。

Pearl Jam – The Fixer

 

ロック・ナンバー「Got Some」と両A面扱いでシングル・カットされたバラード「Just Breathe」もまたヒットを記録した。パール・ジャムのソフトな側面 (およびジェフ・アメントのすばらしいベース・ライン) が楽しめるだけでなく、ビルボード・ロック・チャートで5 位、オルタナティブ・チャートで6位を記録している。この曲は後に2014年にプラチナムに認定され、ヒット作に困ったことのないパール・ジャムではあるが、そのキャリアで初のミリオン・セラー・シングルになった。

Pearl Jam – Just Breathe (Official Video)

 

だが『Backspacer』の本質はと言えば、それは「Unthought Known」に凝縮されていると言っていい。最初はゆっくりと姿を整えつつ途中から一気に爆発するこの曲は、彼らを代表するアンセムの一つだ。この完全なアルバムに何箇所かある最大級に光を放つ一瞬がこの場面で、この曲はパール・ジャムのコンサートに欠かすことのできない、今でも非常に人気のある作品だ。

Unthought Known – Live from Berlin 2010 – Pearl Jam

 

パール・ジャムのすばらしさをあますところなく捉えたアルバム

2009年9月20日にリリースされた『Backspacer』は商業的に大成功を収めた。ビルボードのアルバム・チャートで1位を記録し、『No Code』に続くナンバーワン・アルバムとなった。バンドはその後、2013年の『Lightning Bolt』でスタジオに入るまでの数年間をツアーを何度か行なっている。しかし多くの人にとって、『Backspacer』はこのグループのすばらしい点をすべて捉えているアルバムだった。伝染性のエネルギーを燃料とするリフ駆動のロックだ。

彼らと同世代の人の多くは、バンド内の人間関係に疲れたり個人的に悪魔に心を奪われるなどして挫折していったが、パール・ジャムはずば抜けて優れたロック・バンドでい続けてる。20年の歳月を経たバンドは他にもいるかしれないが、これほど完全なレコードを作ることはできないだろう。

『Backspacer』はわずか37分間の長さでしかないが、パール・ジャムはその間1秒たりとも無駄にはしていない。リスナーの望むものを提供し、彼らはどのバンドも見習うべき、円熟期の最高のアルバムの好例を作り上げたのだ。

Written By Wyoming Reynolds


パール・ジャム『Backspacer』
iTunes / Apple Music / Spotify


パール・ジャム最新アルバム『Gigaton』
2020年3月27日発売
CD / iTunes / Apple Music / Spotify



 

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