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ハマースミスでの音源は収録されていないモーターヘッドの名ライブ盤『No Sleep ‘Til Hammersmith』

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モーターヘッドの歴史を振り返ってみると、1980年はヒット・チャート上になかなかの好成績を残した1年だったことがわかる。しかしながら、1981年に比べれば、その成績も霞んで見える。1981年6月27日のイギリスのアルバム・チャートで、モーターヘッドは一度きりの首位獲得を成し遂げた。そのアルバム『No Sleep ‘Til Hammersmith』について、後年レミー自身は、自分の一番好きなライヴ・アルバムではないと語っている。しかしながら、一般的にこのアルバムは、ロックの歴史に残る名ライヴ盤の一つに数えられており、そのタイトルは音楽辞典にもしっかり記載されている。

1980年代の幕開けと共に、モーターヘッドはEP『The Golden Years』で初めて全英シングル・チャートのトップ10に入った(最高8位)。さらに1980年の終わりには、『Ace Of Spades』で全英アルバム・チャートのトップ10にも初めてランク入り。堂々たるアルバム・タイトル曲はシングル・チャートのトップ20に達した。

1981年初頭、モーターヘッドは由緒あるイギリスのチャート番組『トップ・オブ・ザ・ポップス』に女性ロック・バンド、ガールスクールとダブルヘッダーで登場し、ジョイントEP『St. Valentine’s Day Massacre』(ヘッドガール名義)のプロモーションを行った。これは最高5位のヒットを記録した。ライヴ・アルバム発表のお膳立てはこれで整った。やがて発売された『No Sleep ‘Til Hammersmith』はロンドンにある有名なライヴ会場ハマースミス・オデオンにちなんだ題名になっていたが、実のところハマースミスで録音されたアルバムではなかった。

このアルバムに収録されていたのは、主にこの年の3月30日に行われたニューカッスル・シティ・ホール公演の模様だった。あとはその前夜の同じ会場の演奏が1曲、前々夜のリーズのクイーンズ・ホール公演から1曲、さらには録音場所が明記されていない音源も1曲採用されていた。いずれにせよ、モーターヘッドのファンはかなりの数にまで膨れあがっており、ライヴ盤を求める雰囲気は高まっていた。

当時イギリスでは、ポップスの名曲をメドレーにしたオランダのプロジェクト、スターサウンドが一世を風靡していた。シングル「Stars On 45」のヒットに続き、同名のアルバムが5週間連続で首位という大ヒット。一方ロック・ファンは、それとはまるで違うモーターヘッドのアルバムに飛びついた。1981年6月27日付のチャートで、『No Sleep ‘Til Hammersmith』は1位に達している。

モーターヘッドが王座に就いていたのはごく短い期間だった。その1週間後には、首位の座をロンコ・レーベルのコンピレーション『Disco Daze and Disco Nites』が明け渡している。とはいえ、今や彼らはブリティッシュ・ロックの王族となっていた。『No Sleep ‘Til Hammersmith』はトップ5にさらに5週間留まり、9月末にはゴールド・ディスクに認定されている。

明らかにモーターヘッドのファンではなかったNMEのポール・モーリーでさえ、このアルバムのレコード評では感嘆の言葉を連ねている。「彼らのアートの鍛錬と構想、彼らの音楽の中にある純粋な潜在力と根源的な情熱は、他にはない不屈の推進力を保っている。彼らの”不変”の攻撃性には興奮させられる」。

とはいえ、気になるのはレミー自身が気に入っていたモーターヘッドのライヴ・アルバムはどれだったのだろうか?  1999年に彼が選んだのは、チャートにまったく姿を見せなかったアルバムだった(それも意外な話ではないかもしれない。当時彼はそのアルバムを宣伝していたのだから)。雑誌Record Collectorのインタビューで、『No Sleep ‘Til Hammersmith』は史上最高のライヴ・アルバムでは?と問われたとき、レミーはこう答えている。「違う。史上最高のライヴ・アルバムは『Everything Louder Than Everyone Else』だ。こちらは2枚組だし、選曲も初心者向け。それに、こちらで演奏してるバンドのほうが良いバンドだと思う」。

By Paul Sexton


『No Sleep ‘Til Hammersmith』




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