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ニルヴァーナ『MTV Unplugged In New York』:彼の死から7カ月後に発売された史上最高のライヴ盤
カート・コバーンの死後、ニルヴァーナ(Nirvana)が初めてリリースした作品であり、最も重要な作品でもある『MTV Unplugged In New York』は、全米アルバムチャート初登場1位を獲得。米国では8プラチナ・ディスク(800万枚相当売り上げ)となり、1996年にはグラミー賞の最優秀オルタナティブ・ミュージック・アルバムを受賞した。
この売り上げが物語るように、このアルバムは1994年11月1日の初リリース以来、称賛を受け続けており、2013年にはThe Atlantic誌のレビューでは「史上最高のライヴ・アルバムのひとつ」とまで言及されている。しかし、このニルヴァーナによるMTVアンプラグドでのパフォーマンスは、敗北から勝利をもぎ取ったかのようなものだった。
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“他のアンプラグド・ショーは気に入らなかった”
当初、ニルヴァーナは、MTVアンプラグドへの出演依頼を受けるべきかどうか、二転三転していた。ドラマーのデイブ・グロールは、ローリング・ストーン誌にこう語っていた
「俺たちは他のアンプラグド・ショーを見たことがあったけど、その多くは好きじゃなかった。ほとんどのバンドは、普通のロック・ショーのように演奏しただけ。まるでマディソン・スクエア・ガーデンのステージのように自分たちのヒット曲を演奏していた。違うのはギターがアコースティックだっただけ」
ニルヴァーナは、自分たちの直感的なロックンロールが、このような剥き出しの環境でどれだけ通用するのか、不安を感じていた。しかし、自分たちが好きなアルバムの一つである、スクリーミング・トゥリーズのフロントマン、マーク・ラネガンのソロ・デビュー・アルバム『The Winding Sheet』が、同じような親密なアプローチを美徳としていたことを思い出し、バンドはこのアイデアを温め始めたのだ。
始まるまでの緊張と不安
『In Utero』でのツアー・パートナーだったアリゾナのバンド、ミート・パペッツをスペシャル・ゲストとして同行させることにMTVがようやく承諾した。しかし、不安は出演メンバーだけではなかった。MTVは、ニルヴァーナがセットで演奏するヒット曲が少ないことを懸念しており、ニューヨークのソニー・ミュージック・スタジオで行われた2日間の緊張した本番前のリハーサルでは、緊張で胃の調子が悪くなっていたカートは、あまり気乗りしない様子だった。
MTVのプロダクション・マネージャーであるジェフ・メイソンは、チャールズ・R・クロスの伝記『Heavier Than Heaven』の中で、こう振り返っている。
「彼からは冗談も、笑顔も、楽しんでいる様子もなかった。だから誰もがパフォーマンスに少なからず不安を感じていました」
しかし、1993年11月18日にニルヴァーナがMTVのステージに立ち、1ヵ月後の12月16日に放送されるパフォーマンスを撮影したとき、すべての不安や緊張感は一掃された。ユリ、黒いキャンドル、シャンデリアで飾られた葬式のようなステージ・セットでのパフォーマンスは、決して人生を肯定するものではなかったが。
その演奏の全貌
ツアーメンバーのパット・スミア(ギター)とロリ・ゴールドストン(チェロ)を加えたニルヴァーナは、『Bleach』の代表曲「About A Girl」の完璧なバージョンを披露。
MTVはセットリストから「Smells Like Teen Spirit」と「Lithium」が抜けたことを嘆いたかもしれないが、魅力的な「Come As You Are」はそれを補って余りあるものだった。また、控えめなアコースティック・セッティングは、「Dumb」や「All Apologies」といった『In Utero』の内省的な曲に見られる繊細さをより引き立てた。
セットリストでは「Polly」「On A Plain」、そして不吉な「Something In The Way」といった大成功アルバム『Nevermind』収録曲を披露。セットの中盤には、スコットランドのインディー・バンド、ザ・ヴァセリンズの「Jesus Doesn’t Want Me For A Sunbeam」とデヴィッド・ボウイの「The Man Who Sold The World」のカヴァーを演奏。
そしてニルヴァーナはアリゾナのバンド、ミート・パペッツのメンバー、クリスとカートのカークウッド兄弟と共に、彼らのアルバム『Meat Puppets II』から3曲を演奏した。
衝撃的な最後の曲
しかしカート・コバーンは、この日で最も衝撃的な瞬間を最後のアンコールに取っておいた。彼は伝統的なフォークソングの「Where Did You Sleep Last Night?」を最後の曲に選んだのだ。ニルヴァーナは1888年生まれのレッドベリーによるアレンジを踏襲。カートは目を閉じてこの曲を演奏し、最後のサビでは感極まって声が割れていた。背筋が凍るような、別世界のようなこの曲は、ロック界で最も超越したライヴ・アルバムの1つを完璧に締めくくるものとして、見る者を魅了した。
拍手喝采を浴び、バンドメンバーの間では盛り上がっていたが、カートも自身のパフォーマンスに圧倒されていたと言われている。伝記作家のチャールズ・R・クロス氏によると、マネージャーのジャネット・ビリグが、「このライブがキャリアを決定づける瞬間として記憶されるだろうね」と語ったとき、カートの表情が明るくなったという。
カートの悲劇的死からわずか7カ月後の1994年4月、アルバム『MTV Unplugged In New York』がリリースされると、全米アルバムチャートで1位を獲得し、唯一無二の才能を持つ人物の墓碑銘としてふさわしいものとなった。Entertainment Weekly誌のレビューではこう記されている。
「『MTV Unplugged In New York』は音楽的な喪失感を呼び起こす。アコースティックなアレンジの繊細さと親密さは、ニルヴァーナが次に進むことができたであろう場所を示唆している」
Written By Tim Peacock
ニルヴァーナ『MTV Unplugged In New York』
1994年11月1日発売
iTunes / Apple Music / Spotify / Amazon Music
ニルヴァーナ『Nevermind』(30周年記念盤)
2021年11月12日発売
(*国内盤Super Deluxeのみ12月1日発売)
国内盤:Super Deluxe Edition (5CD + Blu-Ray)
国内盤:2CD
輸入盤
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