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グレゴリー・アイザックス『Night Nurse』:文化的なテーマもとりあげた魅惑的、誘惑的なレゲエ作品

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もしレゲエ・ミュージシャンのグレゴリー・アイザックスが他に作品を出していなかったとしたら、「Night Nurse」を歌ったアーチストとして世に知られていただろう。そのセクシーで魅惑的、誘惑的な曲は1982年に発売され、それからずっと人の心を捉えてきた。

アイザックスは心の病で緊急病院に来たが、それを治せるのはある特定のプロしかいない。“僕は苦しんでいる、愛しいきみ”と甘えるように歌い、医者の助けを鼻であしらい、懐中時計を持った天使の姿を見上げている。トラックが発売されるとリスナーたちはそれに興奮し脈は上がったが、リリックには一つも品のない表現は含まれていない。「Night Nurse」の情熱的なパワーは、グレゴリーの自信を持った表現法、そして悲しいことに彼は逮捕の経験もあるがレゲエ界で最も人の心を捉えたアーチストとして知られるようになったそのささやく歌い方に支えられている。

セルフ・プロデュースしたアルバム『Night Nurse』は非常に自信に満ちたアーチストの作品らしく、ルーツ・ラディックスが届ける絶妙なラバダブのバック演奏に合わせてグレゴリーが歌う。その巧妙なアルバムに、まるでパブロフの犬のように、ファンたちは無意識に反応してしまう。

アイザックスは『Night Nurse』で大げさに盛り上げるようなことはしない。セクシーにぐつぐつと煮立てるだけで、「Hot Stepper」でさえも沸騰まではいかない。ゆっくりとしたトラックでも気持ちよくしっかりと踊ることができる。「Cool Down The Pace」は機知の効いた曲で、そのテンポはそれ以上に控えめにするのは不可能だろう。グレゴリーはパートナーに落ち着くように伝え、それが彼女の歩く速さを言っているのか、その“ラバダブ”について言ってるのかは分からない。どっちにしろそれはグレゴリーのトレードマークと言えるだろう。

「Material Man」はさらにゆっくりとした曲で、『Night Nurse』としては珍しく文化的なテーマになっている。グレゴリーは、彼やラスタ全体が耐えてきた苦しみの理由について考えている。奴隷制度を制定した先祖を持つ裕福な人たちは、例え自分たちが悪いことをした当事者ではなくても、今でもその犯された罪から得をしていると訴えている。「Stranger In Town」は初対面という強みを利用して誘惑する様子を伝え、「Give Me A Chance」は、「Make My Confession」という曲のより優雅なバージョンだ。「Not The Way」は、1982年だったとしてもリリック的に疑わしい父性本能についてのトラックだが、虐待を一蹴し、「Sad To Know (You’re Leaving)」は最終トラックに相応しく、アルバムを締めくくる。

グレゴリーと当時のレゲエ界を支配していたリズム・セクションとは完璧な組み合わせだった。どちらも相応しいペースを保ちながらも、互いの存在を引き立たせることに長けていた。プレイボーイについての曲ばかりで奥深い作品とは思えないかも知れないが、グレゴリーは完璧な作品として仕上げている。“クール・ルーラー”の愛称で知られるアーチストらしく、さり気なくその職人としての腕前を活かしている。ルーツの発するメッセージを伝える名人ではあったが、最高のプレイボーイとしても知られていた。『Night Nurse』によってジャンルを超える評判が広まった。70年代半ばにイギリスでラヴァーズ・ロックのファンだった女の子たちが大人になり、『Night Nurse』はそんな彼女たちのニーズを満たしてくれた。音楽的に、そして恐らくロマンチックな面でも。

グレゴリーは過去に『Extra Classic』という作品を出しているが、『Night Nurse』も“extra classic”(極上の傑作)と呼べるだろう。恋煩い?それなら『Night Nurse』をぜひ聴いて欲しい。

Written By Reggie Mint


『Night Nurse』



 

 

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