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【公式文字起こし】芸人・永野のYouTubeでのパール・ジャム特集:ゲスト 新谷洋子

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2024年4月19日に発売されたパール・ジャム(Pearl Jam)による12作目の新作スタジオ・アルバム『Dark Matter』。

各所で絶賛の声が高いこのアルバムの発売を記念して、芸人・永野さんのYouTubeチャンネルにて音楽ライターの新谷洋子さんがゲスト出演したパール・ジャム特集が配信。この動画を抜粋した文字起こしを掲載します。

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「パール・ジャム好きって言ったらダメなんだ」という当時の風潮

永野:今回はパール・ジャムが4年ぶりのニューアルバム『Dark Matter』をリリースしたことを記念しまして、パール・ジャムのライナーノーツと言えばこの方!新谷洋子さんをお迎えして、「パール・ジャムって良いね!」っていうお話をしていただきたいと思います。

新谷:よろしくお願いします。

永野:僕が17歳くらいのときにニルヴァーナの『Nevermind』とパール・ジャムの『TEN』が発売されたんですけど、田舎なのでそんなに情報が無い中、雑誌やラジオでは「グランジといえばニルヴァーナ」という雰囲気がありまして、パール・ジャムっていうのは“ニルヴァーナの後に来た人たち”っていう勝手な印象を持ってたんです。で、「あんまりパール・ジャム好きって言ったらダメなんだ」みたいな風潮があったんですよね。

新谷:ありましたね。

永野:当時、ちょっとロック界って変だったじゃないですか。“病んだ者勝ち”というか。カート・コバーンなんかあんなに病んでて、パール・ジャムのほうは、あんまり褒めたら、違うぞ?みたいな感じがあって。僕なんかただのリスナーなのにね、ニルヴァーナからお金も貰ってないのに(笑)。なのに、なんでこんなに窮屈なんだろう?と思ってたんです。パール・ジャムを好きと言えない。でも、2ndアルバムの『Vs.』とかめちゃくちゃ良かったじゃないですか。

新谷:うんうん、良かったですよ。

永野:そしてカート・コバーンが亡くなったあとに3rdアルバム『Vitalogy』が出て。僕はいつも“輸入盤を買って音だけを聴く”って感じじゃなくて、日本盤の解説を読んでから聴くっていう一番カッコ悪いロックリスナーをやってたんです。ほら、2,800円とか3,500円とか払ってアルバム買うんだから、そういう気持ちになってしっかり聞きたいじゃないですか(笑)。

新谷:真面目ですね(笑)。

永野:普通のギターの音なのに、「ギタリストはこの曲のこのメロディのために2ヵ月かけて弾いている」とか言われると、ちょっと音が変わって聞こえる感じがするんですよね(笑)。そこで新谷洋子さんのライナーノーツが登場するわけですよ。これね、お世辞じゃなくて衝撃的だったんです。過去の動画でも「『Vitalogy』の解説なんて音楽雑誌のライターじゃなくて、全然違う雑誌のライターが書いてるんですよ?“パール・ジャムが日本で評価されてないので、音楽ライターではない私が(解説を)書くハメになっています”って正直に書いてて。音楽ライターなんて手を挙げて書きたいはずじゃないですか。だけど、当時の人たちはみんなニルヴァーナのことばかり言って、パール・ジャムのことはシカトしてたんじゃないか?」って。新谷さん、当時は全然違う分野にいたんですよね?

新谷:はい。ファッション雑誌の編集部にいました。

永野:ここからは僕の妄想も含むんですけど、当時の大手雑誌やライターはほとんど、ニルヴァーナが上で、パール・ジャムはちょっと……みたいなことを言ってたんですよ。黙ってもいないというか、むしろそういう情報を発信していたんです。その中で、新谷さんの“アレ”がカッコよかったんですよ。「海外の評価を知っている私の立場からの発言」みたいなやつ!カッコ良くて何回も読みました。

新谷:私は30年間読んでないです……(笑)。

永野:読んでないんですか?(笑) でも「海外でのパール・ジャムの評価は日本とは違いますから」みたいなことが書いてあって、それがまず衝撃だったんです。今から考えるとマウント取られただけなんですけど、「(音楽ライターではなく)ファッション雑誌の編集者がライナーノーツを書いてる時点でヤバい!」っていうことを感じたんです。帰国子女の話を聞いてる感じっていうか、日本でのパール・ジャム観と全然違うじゃんと思って。それで、これも妄想なんですけど、そのあと3作くらい新谷さんがライナーノーツを書いてなかったので「言い過ぎて干されたのかな?」と思いました。「あっ、新谷がいなくなった……」って。

新谷:アハハ……(笑)。

永野:(『Vitalogy』以降の解説は)日本の名だたるライターの方が書いていたので、それも素晴らしいんですよ?素晴らしいんです。ですけど、なんか「日本で書いたんだろうな~」っていう感想を抱いてしまって。だから新谷さんは出過ぎて干されたのかな~と思ってたんですけど、7thアルバムの『Riot Act』で復活されましたよね。

新谷:あれはね、(務めていた)会社を辞めたから書けたんです(笑)。やっぱり会社員って、他の会社の原稿とか書いてちゃいけないじゃないですか。

永野:あ~、『Vitalogy』のときは『流行通信』(※ファッション雑誌)にいて、『Riot Act』で復活された時にはもうそちらは辞めていた?

新谷:そうです。会社を辞めてフリーランスになってました。で、(パール・ジャムのライナーノーツに)復活させていただきました。

 

『Riot Act』の立ち位置

永野:じゃあ『Vitalogy』がきっかけで音楽ライターになられたんですか?

新谷:というよりは、パール・ジャムがきっかけです。

永野:それで、『Riot Act』から最新作までずっと新谷さんがライナーノーツを書かれてますよね。やっぱりなんか、(著名なライターを)敵に回すかもしれないですけど、良くなりましたよ、ライナーノーツ(笑)。

新谷:めっちゃ敵に回すじゃないですか!(笑)。

永野:別にいいですよ。僕、音楽業界の人じゃないんで(笑)。なんかね~、他の人のライナーノーツは「もう知ってるよ!」みたいな事が書いてあるんです。「この人、毎回最高傑作って言ってるじゃん!」みたいなこともあって(笑)。僕がよく言ってる“レッチリ問題”っていうのがありましてね?レッチリの『One Hot Minute』が出た時、当時のライターたちがみんな「最高傑作だ!」って言ったんですよ。でも数年後には「あれは迷っていた時期の作品で……」とか言い出して(笑)。ウソばっかつくんですよ、あの人たち!だから我々リスナーは新谷を待ってました。『Riot Act』のライナーノーツなんて新谷さん以外は書けないですよ。あれ、難しかったですもん。

新谷:あれは難しかったですね。

永野:今回同席しているユニバーサル ミュージックの竹野さんという方は日本で1、2を争うパール・ジャムのファンなんですけど、『Riot Act』は難しかったですよね?

竹野:そうですね。僕も一番離れてたのは『Riot Act』の時期です。

新谷:え~!意外意外。

永野:なんかあの頃、エディ・ヴェダーがモヒカンにしてましたよね。それで、(楽曲には)政治的なメッセージがあって。ブッシュ政権時代だったから「Bu$hleaguer」とかも収録されてて……タイトルが『Riot Act』だったから期待してたんですよ。

Bu$hleaguer

永野:激しいパンクアルバムだと思ってたら、「あれ?これ、どうしたの?」みたいになったんです。あれも多分、他の人に(ライナーノーツ)書かせたら「最高傑作だ!」って言うんですよ(笑)。でも、新谷さんは当時の社会情勢などをわかりやすく書いてくれて、それを読んだら「なるほど!」と思いました。やっぱり新谷さんにとってパール・ジャムは大事なバンドですか?

新谷:大事ですね。大人になって出会って、あんまり世代が変わらないので、一緒に歳とっていけるかな、信頼して大丈夫っぽいなって思ったんですよね。

永野:だって、グランジで出てきたバンドの中で、有名なところでは唯一残ってますもんね。他は結構悲劇的な最期の人も多いんですけど……新谷さんがパール・ジャムを最初に聴いたのってどのタイミングですか?

新谷:多分、当時のMTVのオルタナ系の番組で「Even Flow」のビデオを見た時です。めっちゃかっこよかったですよね。あの辺ですね。

Pearl Jam – Even Flow (Official Video)

 

過去の作品を振り返る

永野:当時はニルヴァーナとかわかりやすく「新しい人が出てきた!」って感じがあったけど、パール・ジャムって結構レトロな感じがして、「1970年代のバンドっぽい」ぐらい言われてたじゃないですか。「Even Flow」の何にグッと来たんですか?

新谷:なんだろう……わかんないや(笑)。エディの声ってなんか信頼できません?

永野:できますね~!

新谷:あと、やっぱり声が深いから印象に残りますよね。元々低い声や深い声が好きなタイプなので、印象に残ったんですよ。もちろんニルヴァーナも大好きでしたけど、日本にいるとメディアがどんどんニルヴァーナのほうに行っちゃうから、「じゃあ俺はパール・ジャムについてやる!」って余計に思うじゃないですか。

永野:竹野さんはニルヴァーナよりパール・ジャムが好きなんですか?

竹野:そうですね。僕は高校3年生くらいの時だったんですが、「どっちも好き」っていう感じで入っていきました。それまではスラッシュメタルとか、ちょっと前の世代のバンドを聴いてたんですが、ようやく自分の世代のバンドで、1stから好きでいられる存在だったのがパール・ジャムだったんです。そこから一緒に成長していきました。混乱の時期があったり、自己肯定の時期があったり……あと、「やり続けることが大切」っていう部分が自分の人生とリンクしてる感じがします。そういうのを感じながら聞き続けてきました。

永野:ニルヴァーナの“あの感じ”って若者からしたらカッコよかったんですけど、パール・ジャムのことも最初は一緒くたにして見てたんですよ。シアトルあたりからジェネレーションXみたいに熱い人たちが出てきた中のひとつ、って。でも、ニルヴァーナがあそこで燃え尽きて……パール・ジャムのすごいところは、そこからが強かったところですよね。

新谷:そうですね、強かったですよ。

永野:しかも、2ndアルバム『VS.』の音の芸風でずっと行くのもアリだったじゃないですか。グルーヴィーな感じで。でもそうじゃなくて……『Vitalogy』は当時、衝撃でしたよ。

新谷:(それまでのイメージを)ぶっ壊しましたよね。

Last Exit (Remastered)

永野:今だからカッコいいと思いますけど、当時はコレ、ヤケになってんのかな?ぐらい思ってました。そして4thアルバムの『No Code』に行って、5thの『Yield』もびっくりして。解散するのかな?って思いましたもん。思いませんでした?

新谷:いや、新しい始まりですよ(笑)

永野:新しい始まりですけども、『Yield』って“最終回”みたいな感じだったので、ここで「地元帰って親父の農業を引き継ぎます」って言いだすのかな?って思ったんですよ、僕(笑)。これでサヨナラなのかと思ったら、6thアルバムの『Binaural』が出て。で、7thアルバム『Riot Act』。それから8thアルバム『Pearl Jam』ですよ。カッコよかった~!

新谷:(ジャケット写真の)謎のアボカドね。

永野:そうそう、アボカド。(笑)独特のセンスですよね。

Come Back

永野:そのあと急にまたニルヴァーナとかの“あの頃”を彷彿とさせる『Backspacer』が出て。そして『Lightning Bolt』『Gigaton』。で、『Dark Matter』ですよ。こんなに最先端というか、(ジャンルの)王者に君臨するとは思ってなかったです。人気と信頼がすごくないですか?

新谷:パール・ジャムを取り巻くコミュニティですよね。それがもう成り立っちゃってるんですよ。

永野:最初は違ったじゃないですか。ヤングの代表みたいな感じだったけど、気付いたらブルース・スプリングスティーンみたいになってる。パール・ジャムってボスみたいな感じがするんですよね。あれっていつぐらいからそうなんですか?

新谷:急にそうなったわけではないですよ。最初は悩める若者でした。エディに凄くプレッシャーがかかって、だんだん辛くなって行って。

永野:『No Code』なんて心配でした。「大丈夫?!」みたいな。『Vitalogy』には本人も嫌だろ!みたいな曲も入ってましたよね。「売れないで!」って思いが詰まってる感じがします。

新谷:ホント、「近寄るな!」って感じですよね。

永野:いつから(世間の人気を)受け止めたんですか?

新谷:(『VS.』『Vitalogy』の後から)「俺たち、売れないでいいです」って言って、インタビューもやらなくなったし、MVも作らなくなりました。そこからどうする?ってなったとき、少しずつ“エディのバンド”から民主的な形になって、上手い具合にやり方を練って行ったんだと思うんですよね。そしてやっぱり、時代が彼らを求めるじゃないですか。多分1つのターニングポイントは9・11事件とブッシュ政権の時に、ロック界が「何かやらなきゃ」と盛り上がったことなんですよ。みんなで団結して選挙の応援をやって、「次は民主党の大統領にしたい!」っていうことで……あの辺から「パール・ジャムはシーンを背負い始めたな」って思いました。

永野:僕は(歌詞の)内容が和訳でしかわからないんですけど、読んでると、少年っぽい「Jeremy」みたいな感じから、言ってることがはっきりわかるようになってきてるんですよ。昔の難解さは無くなったけど、ふたつの意味で取れるとうになってきたというか。

Jeremy

新谷:そう、抽象的になって、政治的な曲なのかなと思うけど、人間関係の曲なのかなとも思えるんです。どっちなのかわかんない曲が増えました。『Dark Matter』はまさにそういう作品だと思います。

永野:しかもダイレクトだから余計に“ガン!”と来ますよね。『Backspacer』の「The Fixer」は多分ポリティカルなんですけど、僕は全然ポリティカルな曲として聞いてないです。「頑張ろう!」みたいな歌としても聞けますよね……って言ったら「あれはポリティカルな曲だ!」って言われて恥かかされました。(笑)別にいいじゃん。いいですよね?ポリティカルな曲として聞かなくても。

新谷:全然いいです。だってニューアルバムとか、私も「どっちかな?」って思いながら聴いてます。

Pearl Jam – The Fixer

 

最新アルバム『Dark Matter』

永野:そうだ、ニューアルバムについて話さなきゃ(笑)。『Dark Matter』はいかがでしたか?

新谷:これは……最高傑作ですね(笑)。

永野:本人(エディ・ヴェダー)も言ってましたよね、「大袈裟ではなくこれが俺たちの最高傑作だ」って(笑)。あの人、そういうことあんまり言わない人ですからね。新谷さん的にも最高傑作ですか?

新谷:個人的な好みとか色々あるじゃないですか。(それらのことを踏まえても)『Dark Matter』は相当イイですね。人に勧めたくなる作品です。

竹野:僕も最高傑作だと思う(笑)。パール・ジャムってどうしても「自分が好きならそれでいい」みたいな感じが強いんですけど、これは人に勧めたくなる。「聴いてみてよ!」ってつい言いたくなるアルバムです。

永野:プロデューサーのアンドリュー・ワットさんはまだ若いんですよね。

新谷:アンドリュー・ワットはパール・ジャムの大ファンなんです。

永野:その話、新谷さんのライナーノーツで読みました。33歳くらいの人で、ザ・ローリング・ストーンズの新作とかも手掛けてて。

新谷:一方で、彼はポップ・ミュージックの最前線でもやってる人なんですよ。ジャスティン・ビーバーとか、そういう人たちともやってるんだけど、元々がロック・キッドだったみたい。

永野:どういう気持ちなんですかね? 大ファンだから、パール・ジャムの良さをファンとして知ってるわけじゃないですか。それを期待してたんですかね? だってパール・ジャムって今まではそれぞれが曲書いて持ち込んでたでしょ?でも今作は現場に入って3週間ぐらいで作ったんですよね。ってことは多分、アンドリュー・ワットの意向もありますよね?

新谷:彼もギター弾いたり参加したりしてるので、多分「俺が聴きたいパール・ジャムをやらせた」んだと思います。

永野:メタリカで言うと、リック・ルービンと一緒にやったヤツがあるんですよ。あれも「キーを元に戻してください」とか頼んだらしくて、リック・ルービンが好きだったメタリカをやることで新陳代謝をやったそうです。だからパール・ジャムの新作も新陳代謝感すごいですよね。変な例えですけど、『パール・ジャム』っていう映画があったとするじゃないですか。今作は良いも悪いも、その映画のリブートって感じがするんですよ。僕は11thアルバムの『Gigaton』も好きなんですけど、あれに変な歌があったでしょ?

新谷:「Dance of the Clairvoyants」ね。(笑)

Pearl Jam – Dance Of The Clairvoyants (Mach III)

永野:そう、「Dance of the Clairvoyants」(笑)。あれが好きなんですよね、変な歌だな~と思って。で、アレが好きな自分が好きなんです(笑)。「俺、パール・ジャムのことわかってんな~」って感じが好き。でも新作はそういう「俺はパール・ジャムのこと、知ってるぜ」って感じよりは、「パール・ジャムのいいとこ取り」みたいなアルバムですよね。

新谷:そう思います。ライナーノーツにも書いてあるんですけど、グレイテスト・ヒッツみたいなんです。聞いたことない曲なんだけど、「コレはこの時期のアレだよね」みたいなものが全部わかる。だからやっぱり“ファンが作ってる”っていうのがすごくわかります。だからしばらく聴いてなくてパール・ジャムのこと忘れてる人に聴いてほしいですね。「まだいたの?」とか言われそうじゃないですか。

永野:言われますよ!だって日本にも20年ぐらい来てないんですから「まだやってんの?!」とか「懐かしい」とか言う人いっぱいいると思うんですけど、そういう人が聴いたらびっくりします。ただ、初期ではないとは思うんですよね。グレイテスト・ヒッツって言ってるけど、声はもう完全におじさんだし、初期のやんちゃ感よりは、“歌うま~い!”って感じになってる。リアルに言うと、パール・ジャムの数十年間のグレイテスト・ヒッツというよりは、「この10年のパール・ジャムを聴いてみろ!」ってアルバムですよね。

新谷:うんうん。

永野:ここから僕は、前作『Gigaton』の「Dance of the Clairvoyants」を聴け!って言いたいんです。「ニューアルバムで知った気になるな!」って(笑)。で、「Dance of the Clairvoyants」について「わからない」って言われたとき、「そりゃ君がパール・ジャムから離れてたとき、僕らはずっと聴いてたからね」ってマウント取りたいんです。そういう感じです(笑。)ニューアルバムは傑作ですけど、新作を聴いた(永野Chennelの)ディレクターに「久々に聞いたら良かった」って言われたとき、なんか嫌だったんですよね(笑)。俺はずっと聴いてたから、「わかった気になるなよ!」って思ったんです。

新谷:アハハ!(笑)。

 

アルバムの内容

永野:映画『スター・ウォーズ』新シリーズ1発目の『フォースの覚醒』、アレはさすがに盛り上がったじゃないですか。『Dark Matter』は、まさにあの感じのアルバムです(笑)。『フォースの覚醒』は大ヒットしたし、すごい入りやすいけど、ファンは「70年代の作品のほうがいい」とか言ってて。これをパール・ジャムに当てはめると、新谷さんは俺に『スター・ウォーズ』を教えてくれたのに、『フォースの覚醒』を手放しで褒めるんだ……って感じがして、ちょっと裏切られた気持ちもあったんですよ。

新谷:そうですか?(笑)。

永野:『スター・ウォーズ』をちょっと落とす言い方するけど、パール・ジャムはその後の2つ(映画『最後のジェダイ』『スカイウォーカーの夜明け』にあたる作品)は多分、作らないと思うんです。また思いもよらない方向に行くと思います。今作は多分、「若いプロデューサーがこう言うから付き合うか」みたいな感じなんじゃないかな?(笑) ほら、還暦のバンドメンバーがスタジオに来て、33歳のプロデューサーに「ファンなんです!」って言われたから、ちょっと頑張ったんだと思う(笑)。だって2曲目とか「大丈夫?」ってくらい激しいですもん。

新谷:ですよね。(笑)。

React, Respond

永野:でも、息子くらいの歳のヤツ(=プロデューサー)は大喜びしたと思うんです。ファンも大喜びじゃないですか。ツアーでは新規ファンもめっちゃ入ってくると思うし、それは嬉しいと思うんです。でも、ある程度すると「疲れた~!」ってなって、我々みたいなファンが「帰ってくると分かってたよ」みたいな感じを出すと思います。でも、『Dark Matter』は大事なアルバムだと感じますね。

新谷:そうですね、カンフル剤みたいなアルバムです。

永野:久々に大衆に近づいてきてくれましたよね。まだ聴き込んでないけど、いい曲いっぱいありますね。「Waiting for Stevie」も良かったし、「Wreckage」も良かった。「Won’t Tell」なんてシングルカットされそうな感じ。

Upper Hand

新谷:いやもう、パール・ジャムってシングルいらないですよ(笑)

永野:「Running」なんて……。

新谷:あれはもう息切れですよね(笑)

永野:「ドラムの人、大丈夫か?」とか思いましたよね、マジで(笑)。心配になりましたよね。

Running

新谷:タイトル曲の「Dark Matter」とかも3人くらい倒れそう(笑)

永野:「Dark Matter」はもう、自分みたいなヤツからしたらわかりやすかった。最初に好きになりました。この曲は確かに初期の感じですよね。

Dark Matter

新谷:娘にささげた「Something Special」も可愛かったです。

永野:「Something Special」は自分を励ましてる曲だと思ってたんですけど、娘への曲でした(笑)。でも、そこは捉え方ですよね?

新谷:捉え方です。そのまんまじゃなくてもいいんです。

Something Special

永野:これ、すっごいいい歌ですよね。自己肯定感を大事にしよう、みたいな。だからぜひ皆さん、このアルバムから入ってください。いきなり初期3作から手をつけて懐メロっぽく聴かれても嫌じゃないですか。ニューアルバムは“今の音”だし、これを聴いてほしい。でも、新作だけ聴いてわかった顔されたら悔しいんですよね、我々の歴史とかなんかを飛ばされた気がして(笑)。だから次は『Gigaton』を聴いてほしいです。

新谷:『Gigaton』か……。

永野:遡るのもいいんじゃないですか?『Lightning Bolt』も好きですもん。「Mind Your Manners」とか……

 

「やっぱりロックってカッコイイ!」

永野:ちょっと話それますけど、(対談会場のテーブルに)雑誌とかもいっぱいあるんですよ。昔出た『パール・ジャムぬりえ』とか(笑)。僕もCDショップで貰いました。レコード会社はめちゃくちゃ(プロモーション)頑張ってましたよね。

新谷:そうですね。やっぱり本人たちがなかなか日本に来てくれなかったので、すごく頑張ってました。雑誌には結構ちゃんと掲載されてたんですよ。

永野:頑張ってたんですけどね。当時ネガティブ・キャンペーンしてた人たちに謝ってほしいです。なんであんなこと言われる筋合いがあるんだろう。僕、何回も言ってるんですけど、なんで当時の雑誌の人たちはパール・ジャムを落としたんですか?

新谷:カート・コバーンが(パール・ジャムの)悪口を言ってたんですよ。コートニー・ラブも悪口言ってた気がする……(笑)

永野:なんでカートが悪口言ったら一緒に悪口言うんですか?!僕、パール・ジャムの気持ちで戦ってもいいと思うんですよ。だってパール・ジャムって素晴らしいバンドじゃないですか。僕が言うのもおこがましいですけど、我々の世代は最初に音だけ聞いてから、どうしても「これをやってるのはどういう人なのかな?」とパーソナルな部分を知りたくなるんです。そしたらまあ“落とされて”ましたよね。「このバンドは音がレトロだ」とか、「カート・コバーンの下の人たち」とか言われてて。そんなこと書いてた人たちは、のうのうと暮らしてていいんですか?(笑)

新谷:……(笑)

永野:だって、レコード会社は倍以上の金になってるんですよ? YouTubeの永野チャンネルで取り上げるなんて……ってくらい売れてるんでしょ? でもパール・ジャムは日本に20年くらい来てないし、この盛り上がりの無さっていうのは、マジで最初の人たちの罪が大きいと思います。

新谷:うんうん。

永野:パール・ジャムとレッチリの『One Hot Minute』については本当に罪だと思ってます。当時バカみたいにザ・ストーン・ローゼズばっかり特集して(笑)。日本の音楽雑誌編集部って3人くらいしかいなかったんですか?あれって洗脳と同じですよ!今はネットとかで細分化されてるからいいけど、田舎者からしたら「パール・ジャムとかはダメで、ザ・ストーン・ローゼズとかを聴かなきゃダメなんだ!」って洗脳ですよ!パール・ジャムと『One Hot Minute』の仇はいつか取りたい!

新谷:何だったんでしょうね、ほんと(笑)

永野:パール・ジャムって、“コミュニティ”ですよね。そういうバンドって今、います?

新谷:あんまりいないですね。グレイトフル・デッドとはよく比較されるんじゃないですか?

永野:やっぱりそうなんだ。僕さっきから言おうとしてたんですけど、グレイトフル・デッドをそんなに知らないから、ちょっと失礼かなって思ってたんです。グレイトフル・デッドってなんか、ファンが“みんなで回る”みたいな感じがあったじゃないですか。

新谷:そういう感じですね。「俺は何回目」「俺は何十回目」みたいな人ばっかりなので。

永野:でも、そういう中で、「いつもこの曲ばっかり……」ってならないのがすごいですよね。

新谷:うん。だから、すごく外に開けてますよね。コミュニティの中でやってれば間に合うけれど、やっぱりまだ外に向かって発信してる感じがすごくします。

永野:元気だし、すごくフレッシュ。パール・ジャムについては、まず新作を聴け!ってことですね。知らない人はここから入ればわかります。 あと、ロック自体が最近あんまりスポットを浴びてないのですが、パール・ジャムのニューアルバムは「やっぱりロックってカッコイイ!」って思わせる作品ですので、ぜひみなさん、『Dark Matter』を聴いてから、意見があるなら、言ってごらんなさい!ありがとうございました!


YouTube永野チャンネル

https://www.youtube.com/@nagano-channel



パール・ジャム『Dark Matter』
2024年4月19日発売
CD&LP / iTunes Store / Apple Music / SpotifyAmazon Music / YouTube Music




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