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マリリン・マンソン『Antichrist Superstar』:政治とポップカルチャーによる洗脳への異端的反応

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マリリン・マンソンが変身を遂げたアルバム『Antichrist Superstar』は、ショッキングなメッセージにあふれていた。そこには、リスナーに「自分の頭で考えろ」と呼びかけるメッセージも含まれていた。


1990年代初期の段階では、マリリン・マンソン(Marilyn Manson)は作り出す音楽そのものよりも、マリリン・モンローと殺人鬼チャールズ・マンソンとを組み合わせたバンドの名前のほうに注目が集まっていた。しかしセカンド・アルバムのタイトルを『Antichrist Superstar(“反キリスト”のスーパースター)』とした彼らは、逃げも隠れもせず自らをさらけ出すことになった。

このとき彼らが必要としていたのは、マリリン・マンソンそのもののコンセプトと同じくらい大胆不敵で、挑発的なサウンドだった。ひとつ上のレベルに上がるためには、そうしたサウンドが必要だったのである。グループのフロントマン、マリリン・マンソンは、自分がスターになってしかるべき存在だとわかっていた。そのスターの座に座るためには、厚かましくてエネルギーに満ちあふれた作品が必要だった。

野望を大々的に誇示するような作品

1996年、ロックの世界は、アンチヒーローが並んだグランジ・ブームから変化しようとしていた。カート・コバーンは、自分では望んでもいないのに気乗りしないままロック・スターの座に座っていたのかもしれない。そうだとしたら、マリリン・マンソンは自ら進んでその後に座ろうとしていたアーティストだった。

彼が望んでいたのは、注目を浴び、名声を獲得し、さらには悪名高い存在になること。そして『Antichrist Superstar』で、マンソンは変身を遂げた。彼が緻密に組み立ていたコンセプトは、続く2枚のアルバムでさらに展開されていった。幼虫(ブライアン・ワーナー)だった彼は、世界を破滅させる悪魔に姿を変えたのである。マンソンは音楽アーティストであると同時にビジュアル・アーティストであり、デビュー・アルバム『Portrait Of An American Family』のインダストリアル・ゴシックなサウンドよりも壮大なイメージと野望を抱いていた。『Antichrist Superstar』は、そうした野望を大々的に誇示するような作品だった。

このアルバムは、自信に満ちた「Irresponsible Hate Anthem」で幕を開ける。この曲はアルバム全体のトーンを決定付けているだけでなく、マリリン・マンソンの存在理由をも示している。架空のライヴ・ステージという設定の中、観客の”We hate love. We love hate / 愛なんてクソ食らえ、愛なんてクソ食らえ”という声がこだまする。しかしマリリン・マンソンはビジュアル面で宗教的なイメージを描くアーティストと同時に、アメリカの政治とポピュラー・カルチャーによる洗脳に対するリアクションでもあった。この冒頭の曲は、自分たちの仲間にならないかという誘いの声だった。

「The Beautiful People」の軍国主義的なビートはMTV でヘビーローテーションとなり、マリリン・マンソンは文化的な一大ムーブメントとなった。世界中のティーンエイジャーたちが、彼の外見を真似するようになったのである。彼は神のように崇め奉られ、異端であることを厭わない反抗のシンボルとなった。彼の狙いは最高のショックを与えることにあった。

Marilyn Manson – The Beautiful People (Official Video)

 

「自分の頭で考えろ」というメッセージ

『Antichrist Superstar』で、マリリン・マンソンはトレント・レズナーの力を借りて、オルタナティブ・ロックとヘヴィ・メタルの両方を抜け目なく取り入れた。シンセサイザーが重ねられたインダストリアル・ゴシック「Dried Up, Tied And Dead To The World」にはメタリックな力強さもあり、ニュー・メタルのファンにもアピールしていた。

Dried Up, Tied And Dead To The World

このバンドにはもともと攻撃的な側面があったが、それとはまた別の面もあった。バンド名の半分は連続殺人鬼チャールズ・マンソン、そしてもう半分はハリウッドの美の象徴マリリン・モンローからきていた。その「マリリン」の要素は、魅惑的な「Tourniquet」やダークな「Kinderfeld」に反映されている。一方、「Angel With The Scabbed Wings」や「The Reflecting God」や「Man That You Fear」といった曲は、検閲できるものなら検閲してみろと世界に挑戦するような挑発的な曲だった。

マリリン・マンソンは、ゴシック・ホラーとSM風のビジュアルで自らのイメージを形作っていった。セックス&バイオレンスを過激なまでに追求した作品世界は、世界にショックを与えるための究極の戦略となっていた。しかし『Antichrist Superstar』で、マンソンは世界の本物の恐怖を描き出そうとしていた。そのあからさまな例が、ひときわ挑戦的なトラック「1996」だった。

1996

マリリン・マンソンは、世間を挑発し、苛立たせるために存在していた。そうした活動の裏には、リスナーに自分の頭で考えるように呼びかけるメッセージが隠されていた。『Antichrist Superstar』は、マンソンが自分が神のような存在であると主張するための作品ではなかった。むしろ彼は、人をコントロールしようとしている物を陰から引きずり出して暴き出す光のような存在だった。つまるところ抑圧的な「自由主義社会」というのは、ゾンビ風の女性メーキャップをつけた男よりもはるかに恐ろしいものなのである。

マリリン・マンソンを支持する聴き手は多数いた。1996年10月8日に発表された『Antichrist Superstar』は、アメリカのアルバム・チャートで初登場3位を記録。現在までに同国内だけでも200万セット以上を売り上げるロング・セラーになっている。

Written By Caren Gibson


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