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メタリカのラーズ・ウルリッヒによる、ディープ・パープル“ロックの殿堂入り”祝福スピーチ

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metallica.com/ LARS INDUCTS DEEP PURPLE INTO THE ROCK AND ROLL HALL OF FAME 2016

メタリカ(Metallica)にとって12枚目、そして6年4か月ぶりとなるスタジオ・アルバム『72 Seasons』が2023年4月14日に発売される(予約はこちら)。

このメタリカの久しぶりのアルバムの発売、そしてディープ・パープルの来日公演を記念して、2016年にディープ・パープルがロックの殿堂(Rock and Roll Hall of Fame)入りを果たした際、メタリカのラーズ・ウルリッヒが披露した祝福スピーチの全文を掲載。

*レッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーによる、メタリカの“ロックの殿堂入り”祝福スピーチはこちら

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9歳の頃に観たライヴの衝撃

こんばんは。俺はラーズだ。こんな機会をもらえてマジで最高に光栄だよ。

今夜は二組のアーティストのキャリアが頂点を迎える日だ。一つは俺のキャリアで、もう一つは俺の人生と…ロックンロールの世界を変えたバンドのキャリアだ。

俺は9歳のとき、父親に連れられて、デンマークのコペンハーゲンでディープ・パープルのライヴを観た。暗くて凍えるような1973年2月の土曜の夜のことだった。サウンド、ステージング、楽曲、ミュージシャン、そのすべてが迫力満点だった。メンバー全員が、見たことも想像したこともないような演奏をしていたんだ。あのとき、ディープ・パープルは、美しい矛盾を見せてくれた。凄まじい激しさで名曲を次々に披露する5人の一流ミュージシャンたちは、まるで自分たちしかいないガレージで演奏しているみたいで、だけど同時にアリーナの一番奥まで見通すような視線を投げかけてもいたんだ。

 

個々のメンバーの凄さ

その日の彼らのことを詳しく説明しよう…。

シンガーのイアン・ギランは、ステージの中央で観客の目を釘付けにしていた。偉大なフロントマンの格好良さをすべて併せ持ったようなその男は、力の限り叫び、町中のグラスを割ってしまうほどの凄まじい高音を轟かせていた。

その後ろでドラムを叩く小さなイアン・ペイスは、髪といい、汗といい、唾といい、プレイの正確さといい、何もかもがロックンロールそのものだった。彼はサングラスの曇りをどうにか拭き取りながら、貨物列車のように怒涛の勢いで突き進む演奏をリードしていた…。しかも8インチの厚底靴を履きながらだよ!

ステージ右手には威厳たっぷりのジョン・ロードがいた…。あんなにオルガンと“よろしくやっている”人は初めてみたよ。でもいいかい、俺はまだ9歳だったんだ! 彼はほかの誰とも違うやり方でC-3のハモンド・オルガンを操っていた。そして、壁のように積み上げられたマーシャル・アンプとレスリー・スピーカーからその音を鳴らすことで、前人未到のヘヴィ・サウンドを作り出していた。最初にハモンド・オルガンをアンプに繋げて音を歪ませたのはジョン・ロードだ。この点は強調しておくべきだろう。悲しいことに、彼は2012年にこの世を去ってしまった。

ベーシストのロジャー・グローヴァーは、カウボーイ・ハットにペイズリー柄のシャツ姿だった。彼は次元が違うほど滑らかなプレイで、バンドの演奏に安定感やグルーヴ感、そして言うなれば、セクシーさをもたらしていた。彼はステージでもエゴを押し出さず、猛烈なエネルギーを放つバンドメイトたちを支えていた。そしてその裏には、ソングライターや、彼らのいくつかの名盤を手がけた共同プロデュサーとしての確かな実力を隠し持っていたんだ。

それからそこには……ほかでもないリッチー・フ**キン・ブラックモアがいた。彼のギター・プレイはこの世のものと思えなかった。彼はギターを普通に持ったり、横にしたり、逆さまにしたり、あらゆるやり方で演奏していた。その指や手や腕は、常にバレエのようにしなやかで予測できない動きをしていた。また、そうしてギターの音色を響かせたり、甲高いノイズを鳴らしたり、ピック・スライドをしたり、スピーカーにギターを擦り付けたり、お尻やブーツで弦を弾いたり、ギターを宙に放り投げたりもしていた。

そうした彼特有のステージングからは、サービス精神、統制力、そして他を寄せ付けない雰囲気といったものが一度に感じられた。彼はプレイを見せつけていたが、ほとんどは自分自身に見せつけているようだった。彼は強烈なナルシシズムの世界に足を踏み入れかけていたんだ。でも同時に、そんな彼の姿は最高にクールだった。思わず目を奪われてしまうんだ。彼らのプレイは見事だったし、即興演奏も見事だった。彼らは常に強い好奇心を持って、バンド内で熾烈な争いを繰り広げていた。そうやって新たな未知の音楽を作り上げ、進化し続けていったんだ。

Deep Purple – Highway Star (Live on German TV, 1972)

 

ディープ・パープルは尊敬されるべき

それから12時間後、俺は地元の小さなレコード店にいた。その店で、とにかくディープ・パープルのレコードがほしいとせがむと、すぐに『Fireball』を差し出された。そしてあのアルバムで俺の人生は一変したんだ。

No One Came

過去40年の間に登場したハード・ロック・バンドは、俺自身のバンドを含め、ほぼ例外なく、ブラック・サバスとレッド・ツェッペリンとディープ・パープルの足跡をまっすぐに辿ってきている。いま挙げた3つのバンドは、作曲面でも、レコーディングの面でも、功績の面でもまったく同列とみなされるべきだと俺は思う。

俺が育った地域や北米以外の地域では、これらの3バンドの地位や影響力に差はない……。だから俺の気持ちとしては ―― きっと多くのミュージシャン仲間や、何百万ものパープル・ファンも同じ思いにちがいないけれども ―― 彼らだけロックの殿堂入りがこんなに遅れた理由がよくわからない。サバスも強大だしツェッペリンも素晴らしいが、パープルは彼らより10年以上も(殿堂入りが)遅れたんだ。もちろん、そうした名グループやロックの殿堂を悪く言うつもりはない……。だけど、はっきりさせておきたいんだ。この場所以外、世界中どこに行っても、ディープ・パープルはまったく同じだけの尊敬を集めているってことをね。

ディープ・パープルは昔ながらの方法でビッグになった。つまり、一生懸命に働いたんだ。休むことなくツアーをして、それでも1年に1作、多いときは2作を作り上げて、“イメージ”や批評家の反応といったものには目もくれなかった。そして、堕落したライフスタイルがロック界に蔓延していた時代にも、彼らは自分たちの音楽によって名を馳せていた…。

聞くところによると、彼らはセックスやドラッグに関しても硬派を貫いていた。(わざとらしい咳払いをする)実際、あえて突っ込んだ話をするのであれば、パープルの目立った汚点はメンバーの激しい入れ替わったってことくらいだ。結成からの7年でも計10人、これまでのすべてのメンバー・チェンジを勘案すると14人が在籍していることになる。

もちろん、グループの歴史に名を刻んできた全員の歴代メンバーにも、俺から賛辞を送らせてほしい。そのうち3人は、今夜殿堂入りを果たす。さらにその中の2人について言えば、俺はパープルとしてのライヴ・デビューをこの目で見たんだ。1973年12月にディープ・パープルが再びコペンハーゲンにやってきたときのことだ。シンガーのデヴィッド・カヴァーデイルは、彼にしか出せないブルージーな歌声と、おかしなマイク・スタンドで俺の度肝を抜いた。ベーシストのグレン・ヒューズは、白いサテンの衣装とロッカーらしい最高にクールな髪型が、R&Bの影響を受けたヴォーカルにマッチしていた。そして最後に ―― 実際は“最初”なんだが ―― 結成時のシンガーであるロッド・エヴァンスは、結成から間もない60年代後半のパープルの顔となり、彼らにとって最初のヒット・シングル「Hush」を歌った人物だ。

今夜殿堂入りを果たす8人をはじめ、このバンドで演奏してきた14人のメンバーを見れば、素晴らしい音楽が多くの場合、緊張関係から生まれることは明らかだ…。そして、それはなんて素晴らしい音楽なんだろう!

Deep Purple – Burn (Live, 1975, Japan)

 

スタジオとライヴの違い

アルバムをいくつか挙げるなら、『The Book of Taliesyn (詩人タリエシンの世界)』『Deep Purple In Rock』『Fireball』『Machine Head』『Burn (紫の炎)』『Stormbringer (嵐の使者)』…。

彼らの驚異的な楽曲をいくつか挙げるなら、「Wring That Neck」「Black Night」「Speed King」「Child In Time」「Strange Kind Of Woman」「Highway Star」「The Woman From Tokyo」「Mistreated」…。

だが何より衝撃的なのは、スタジオ・ヴァージョンとライヴ・ヴァージョンの違いの大きさだ。例えば「Space Truckin’」について言えば、『Machine Head』では4分強の曲なのに、伝説的なアルバム『Made In Japan』ではなんと20分近くもあるんだ!ディープ・パープルのステージでは毎回、そういったソロや即興演奏、それに推進力のあるサウンドを聴くことができる。だからこそ、42作もの公式ライヴ・アルバムがWikipediaに載っているんだろう。どの公演もそれだけ質が高く、マンネリ化せず、才気に溢れているということだ。それは現在でも変わることがない。

Space Truckin' (Live at Osaka, Japan, August 16, 1972)

でも待ってくれ…!1曲忘れていないか?フランク・ザッパや、スイスの湖畔で焼け落ちたカジノ、空まで燃え上がる炎なんかのことを歌った、誰でも知っているあの曲だ。あの曲のギター・リフはおそらく史上最高のリフだろう。あれは誰もがギターを始めて最初に覚えるリフで、楽器店ではあれを弾くのが実際に禁止されているらしい。店員の正気を保つためだよ。この世界で誰よりもギターの素養に劣る俺でさえもあのリフだけは弾けるんだ。

その曲っていうのは、いうまでもなく「Smoke On The Water」だ。彼らの代表曲にして、最大のヒット曲でもある。この曲があまりに有名すぎて、ディープ・パープルは“一発屋”だと勘違いされてもおかしくなかった。だけど ―― もし今日までこの曲しか知らなかったとしても ―― これは限りない彼らの功績に通じる、重厚で巨大な扉だと考えてほしい。彼らは現在でも、昔と変わらない活力に満ち溢れている。世界中をツアーで回って人びとの度肝を抜き、彼らの人生を変え続けているんだ。

Deep Purple – Smoke On The Water (Live)

俺はベッドの横のナイトテーブルに、友人のフランクが随分前にくれた1枚の写真を飾っている。それはディープ・パープルの写真なんだが、加工されていて、イアン・ペイスの顔が俺の顔になっているんだ…。イアン、すまない!ディープ・パープルはいまでも、俺や、ここにいるファンや、世界中に数多くいるフォロワーたちにとってそれだけ大切な存在だってことさ。俺たちにとってのディープ・パープルはこんなグループだ……

偉大で、
予測できなくて、
エネルギーに満ちていて、
クールで、
激しくて、
素晴らしくて、
推進力があって、
おおらかで、
魅惑的で、
衝撃的で、
浮世離れしていて、
情け容赦なくて、
革新的で、
何より、時代を超越している

リッチー・ブラックモア、デヴィッド・カヴァーデイル、ロッド・エヴァンス、イアン・ギラン、ロジャー・グローヴァー、グレン・ヒューズ、ジョン・ロード、イアン・ペイス ―― 彼らはもっとずっと前にここにいなきゃいけなかった。ようやく、本来あるべき場所にやって来たんだ。

この言葉を言う日をずっと待ち望んできたよ。

「みなさん、ステージに、そしてロックの殿堂にお迎えください、ディープ・パープルです!」



最新アルバム
メタリカ『72 Seasons』

2023年4月14日発売
CDiTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music


ディープ・パープル 2023年来日公演

3月13日(東京 日本武道館)
3月17日(広島 広島上野学園ホール)
3月19日(福岡 福岡サンパレス ホテル&ホール)
3月21日(大阪 丸善インテックアリーナ大阪)

[来日予定メンバー] イアン・ギラン(vo)、ロジャー・グローヴァー(b)、イアン・ペイス(ds)、ドン・エイリー(key)、サイモン・マクブライド(g)


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