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欧米から見たK-POP:初めて耳にする最高のポップ・ジャンル
つい70年代まで、世界で最も貧しい国のひとつとして知られていた韓国が今や経済大国へと変貌した。その成功を支えるのは電化製品の輸出ではあるが、色鮮やかなミュージック・ビデオ、入念に振り付けされたダンス、溢れんばかりにキャッチーな楽曲で知られるK-POPも一役買ったと言えるだろう。アジアの音楽マーケットを支配し、‘イケてる/ Cool’と言う風格を国にもたらした。
欧米においても小規模ながら熱狂的な支持層がいるものの、本当の意味で世界的ヒットを記録したのは「江南スタイル」の笑えるビデオ・クリップが世界中で社会現象を巻き起こしたPsyだけにとどまっているが(*元記事執筆時2017年7月時点)、K-POPというジャンルを定着させる機は熟している。初心者がさらに掘り下げられるよう、K-POPで抑えておくべき主要アーティスト及び彼らの最高傑作を、彼らのライバル国である日本人アーティストも交えながらここでを紹介させて頂く。プレイリストに含まれる曲の殆どがミュージック・ビデオも存在している。ミュージック・ビデオは今どきのK-POP/J-POPにおいて不可欠な構成要素であり、YouTubeで視聴することができる。
欧米のポップ・ミュージックではソロ・アーティストが好まれるのに対し、K-POPはとりわけ男女共にグループが主軸となっている。ビデオ・クリップでは若く、そしてしなやかな手足をもった男女が細部にまでこだわった振り付けを一糸乱れず踊る。それを作り込まれたものだと思うのなら、その通りである。アーティストの大半は小さい頃からの厳しいトレーニングを経て、大手事務所によって結成されたものなのだ。
K-POPで最も人気の高い女性グループである少女時代はSMエンタテインメントによって結成された。彼女たちは何ヶ国語も話し、全員メディア受けするトレーニングも受けていて、これまでポップス史上最強のヒット曲を量産してきた。彼女たちの桁外れのヒット・シングルには、「Genie」、「I Got A Boy」、「Flower Power」などあるが、彼女たちの最強楽曲と言えばやはり2009年の「Gee」だろう。K-POPを象徴するサウンドで構成され、活気に満ちた、単純明快なポップスの絶好の例である。過度に愛想が良く、検証を重ねた上で作り上げられたものかもしれないが、全ての偉大なポップ・ミュージックがそうであるように、喜びに満ち、生きることを肯定してくれる。実際「Gee」の圧倒的な魅力こそが、それまでK-POPにとって難攻不落だった日本の音楽マーケットの牙城の門戸を破った破城槌となったのである。
K-POPがシングル主体である一方で、SM所属の女性グループ f(x)はアルバム・アーティストとしての地位を確立した。『Red Light』及び『4 Walls』はどちらも必聴であるが、彼女たちの2013年の捨て曲無しのアルバム『Pink Tape』こそが彼女たちの真骨頂である。リード・シングルの「Rum Pum Pum Pum」はブラジル・カーニヴァルのポリリズムからヒップホップ、エレクトロ・ポップといった幅広い影響を絶妙に融合させている。
EXOは12人組の男性グループであり、同じ曲を韓国語と北京語でそれぞれ歌うEXO-KとEXO-Mの二つのサブ・ユニットに分かれている。韓国の音楽業界が自国の国境の先を見据えている格好の例であり、アメリカの天才プロデューサーのテディ・ライリー(バックストリート・ボーイズ、アッシャー)がグループの2作目『Exodus』のプロデューサーとして招かれていることのその良い例である。「Call Me Baby」のファンキーなギターとヒップホップ・ビート、さらに高揚感溢れるサビは、テディ・ライリーの80年代後期から90年代初頭に掛けてのニュー・ジャック・スウィング・サウンドを真新しく現代に蘇らせている。
K-POPのコンピレーションを作る上でBIGBANGを外すわけにはいかないだろう。YGエンタテインメントの元、結成されたアジア最強の男性グループは、最も熱狂的なファンに支持されている。彼らのビデオ・クリップは見る者を驚愕させ、とことん作り込まれた色彩の脅威であり、その多彩な音楽性はR&B、ハイエナジーなクラブ・トラックから繊細なバラードにまで幅広い。2012年の「Bad Boy」は彼らの甘い歌声と彼ららしいヒップホップ風格好良さが見事に融合している。
同じくヒップホップに根ざしたYGエンタテインメント所属タレントが2NE1である。英語に堪能でパリ育ちのアジア人ポップスの期待の新星、ラッパー兼シンガーCLを筆頭に、彼女たちは他のおとなしい女性グループに対してより大胆で派手なイメージを打ち出している。聞き手を元気にしてくれる新鮮な「I Am The Best」はニッキー・ミナージとMIAを彷彿とさせ、尖ったスタッカート調のシンセによるアタック音と中近東風の音階を使った彼女たち独自のサウンドを見事に表現している。
SMエンタテインメントによって2014年に結成されたRed Velvetは、f(x)の洗練と少女時代の溌剌さを兼ね備えるユニットとして考案された。”Velvet”の面では「Automatic」に代表されるジャネット・ジャクソン風ポップ・ソウルを表現する一方で、”Red”の面の最高傑作はなんと言っても「Dumb Dumb」の容赦ない言葉の応酬だろう。3分半にファンク、ダブステップ、ヒップホップ、エレクトロ、ポップ、そしてマイケル・ジャクソンへのトリビュートまでが見事なまでに詰め込まれている。
ミスティック・エンターテインメントのブラウン・アイド・ガールズはR&B/バラード・シンガー集団としてシーンに登場するも、様々なジャンルにそのサウンドを広げている。彼女たちの突破口となった2009年のヒット・シングル「Abracadabra」は80年代の恩恵にあやかる秀逸なエレクトロ・ポップだ。その一方で刺激的で官能的なビデオ・クリップでは数々のタブーを破り、世界に”小生意気ダンス”を披露し話題になり、後にPsyがパロディするまでに至る。
一度も停滞することなく、このジャンルで最も働き者のグループと言えるSHINeeは2008年の結成から今日までなんと9作のフル・アルバムと4枚のミニ・アルバムを世に送り出している。2013年のミニ・アルバム『Everybody』に収録された至極の格好良さを持つ「One Minute Back」は聞き手の心を満たすドラマチックなサビと、幾多もの絶妙なテンポの変化が魅力だ。
ソロ・アーティストも頻繁に登場するものの、その多くは人気の確立されたグループのメンバーであることが多い。BIGBANG のSOLはこれまで2作のソロ・アルバムを発表してきた。2014年の『Rise』に収録されている「Eyes, Nose, Lips」はアルバムの核となる曲で、エレガントなボーカルとピアノに加えて、さり気ないトラップのビートが男らしさを引き出している。
2NE1のストリート・スタイルの影響を受けている女性グループの代表格4Minutesの、凄まじいヒップホップ・ナンバー「Crazy」は2015年に最も話題になった楽曲の一つである。海外のプロデューサーを積極的に迎え入れることで知られるK-POPではあるが、その最近の一例として、彼女はたちの最新シングル「Hate」はEDMシーンに君臨するスクリレックスがプロデュースを手掛けている。
K-POPサウンドの核にあるEDMとR&Bをさらに進化させるべく、K-POPでは最近ハウス・ミュージックを取り入れるようになった。SHINeeの「View」とf(x)の「4 Walls」もそれを実践したいい例ではあるが、今のところ群を抜いているのは、f(x)のメンバーのルナの「Free Somebody」だろう。2016年6月に彼女の素晴らしい同名ミニ・アルバムからのリード・シングルとしてリリースされたこの曲は、光輝く、日光を浴びたようなダンス・ミュージックであり、韓国の純粋なポップ・センスをディープ・ハウスのミキサーに掛けたようである。
拡大し続ける韓国音楽シーンの次なる課題は、本当の意味でのアメリカのマーケットでの成功である。K-POPは長年中国語と日本語で歌う作品を出してきたが、今後は英語で歌う作品も目白押しだ。その先陣を切るのが2NE1のCLというのは、当然の成り行きだろう。ジャスティン・ビーバーを売った敏腕マネージャーのスクーター・ブラウンのもと、スクリレックス、ディプロ、ブラッド・ダイアモンドらと制作を行っている彼女の展望は明るい。2015年に発表したプロモ用無料配信シングル「Hello Bitches」は彼女の所信表明そのものである。ストリートに根ざした、ベースが重く鳴り響く、ヒップホップのクラブ・トラックであり、ビデオ・クリップでは振付師Parris Goebelのダンス・クルーReQuestとの熱いCLのダンス・パフォーマンスが見られる。
一方、韓国最大のライヴァル国に目を向けると、日本の音楽産業は何年もの間潤い続けてはいるものの、海外での売り上げを求める動きはこれまでほとんど見られなかった。しかしながら、最近の2つの成功例によって、それも変わりつつあるようだ。ファッション・モデル兼シンガーのきゃりーぱみゅぱみゅは現代日本の至るところで目にする”カワイイ”カルチャーを体現している。一度聞いたら忘れない、砂糖で覆ったようなエレクトロ・ポップ「PONPONPON」は、ド派手な色彩感覚と原宿ファッションでヴァイラル・ヒットとなり、彼女を国際的スターにし、欧米の音楽フェスにも登場するきっかけを作った。
その対極にあるBABYMETALの音楽は、へヴィ・メタルとJ-POPという意外な組み合わせではあるものの、彼女たちの成功を単なる「色物」で終わらせない基盤がある。怒涛のように鳴り響くリフの間を縫うように、近年聞いた中でも最高にポップなフックが共存する。2015年の「Gimme Chocolate!!」がまさにそれを証明している。スラッシュ・メタル、バブルガム・ポップのどちらにも妥協することなく、恰もそれがこの世の中で最も自然なことかのように見事に両者を重ね合わせている。最近では、ロンドンのウェンブリー・アリーナで単独公演を行った初めての日本人アーティストという称号を得た彼女たちだが、今日まで最も世界で成功したJ-POPアーティストの地位を確立した。
Written By Paul Bowler
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