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サウンドガーデンが再結成し、最後の作品となった2012年の『King Animal』

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サウンドガーデンが再結成して2012年にアルバム『King Animal』をレコーディングすることになると、いったい誰が予想しただろうか? このバンドのメンバーたちでさえ、そんなことは予想していなかった。ファンも評論家も、このグランジを象徴するバンドは、1996年のアルバム『Down On The Upside』を最後に解散したと信じていたのだ。ヴォーカルのクリス・コーネルは2005年のシアトル・ポスト・インテリジェンサー紙のインタビューに応え、以下のように語っていた。「サウンドガーデンは一生を全うしたように思える。再結成でもしない限りね」


サウンドガーデンの再結成の話はメンバー自身も避けていた。しかし2009年、4人の元メンバーがカタログ再発や関連商品の発売について話し合うという名目で集結すると、再結成の話がじわじわと持ち上がってきた。そして2010年1月、コーネルがTwitterで意外なニュースを発表し、ファンを喜ばせることになった。「12年間の休みが終わって、新学期が始まった。申し込み受付中。サウンドテーブルのナイトが再び活動を始めるよ」。

当初の予定では、サウンドガーデンは昔の曲を数回のライヴで再演するだけのはずだった。しかしA&Mレーベルのコンピレーション『Telephantasm』に収録する新曲「Black Rain」を完成させると、その後の展開は自ずと明らかになった。このバンドのメンバーの間には、まだ化学反応が残っていたのである。ギターのキム・セイルはギター・ワールド誌で次のように語っている。「この4人で集まると”Outshined”を演奏するだけじゃ済まない。アンプのスイッチを入れて、新しいリフを作り始めてしまうんだ」

Soundgarden – Black Rain

 

まもなく、そうした新しいリフや新鮮なアイデアがまとまっていった。そして2011年の春、サウンドガーデンは過去にエアロスミスパール・ジャムといったグループの諸作を手がけた経験のあるプロデューサーのアダム・キャスパーと共にシアトルのスタジオXに入り、待望のカムバック・アルバムのレコーディングを始めた。一同は新曲に手応えを感じたが、レコーディングは他のスケジュールとの兼ね合いでなかなか進まなかった。2011年の晩春や初夏は、再結成公演や、“Songbook”と銘打ったコーネルのアコースティック・ツアーの予定が入っていたのである。

結局レコーディングは2012年までかかり、アルバム『King Animal』は同じ年の11月13日にようやくヴァーティゴ・レーベルからリリースされた。レコーディングが長引いたためファンはさらに辛抱強く待つ羽目になったが、アルバム冒頭の「Been Away Too Long」がスピーカーから弾け出すのを聴いた途端、彼らの忍耐は報われた。セイルの力強いリフに駆り立てられたこの曲を聴くと、そのオープニング・トラックのタイトルの由来になったフレーズ「Been away too long(あまりにも長くいあいだ留守にしていた)」が改めて心に響いてくるように感じられた。また、そのタイトでピリピリした激しいサウンドは、サウンドガーデンが完全復活を遂げたことを物語っていたのだ。

その他の収録曲も、サウンドガーデンらしい作品に仕上がっていた。同作には変拍子を取り入れた一風変トラック「Non-State Actor」もあれば、キャプテン・ビーフハートを想起させる「By Crooked Steps」のような楽曲も含まれている。また、どっしりとしたダウン・チューニングのリフを特徴とした「Blood On The Valley Floor」もあれば、実験的なサイケデリックでプログレッシヴな大作「A Thousand Days Before」も聴くことができる。「Attrition」や「Worse Dreams」といった理屈抜きに楽しめるロック・チューンではコーネルが活躍しているが、彼は「Bones Of Birds」と「Rowing」でさらに本領を発揮している。さらに、ここには「Bones Of Birds」は重苦しい賛美歌のようなバラード「Rowing」も収録されており、同曲で、コーネルは強烈な呪文のように幕切れのセリフ「I don’t know where I’m going, I just keep on rowing (自分がどこへ向かっているのかわからない。ただオールを漕ぎ続けるだけだ)」を繰り返している。

Soundgarden – Rowing

 

評論家の意見は、サウンドガーデンが力強いカムバックを遂げたという点で一致していた。ローリング・ストーン誌は『King Animal』を「2012年のクールな野獣」評している。またガーディアン紙には以下のようなレビューが掲載された。「サウンドガーデンはシアトルのグランジ・シーンの中でも最高に陰鬱で最高にヘヴィーなバンドだった。このアルバムでは、あのサウンドが驚くほど巧みに復活を遂げている」売れ行きの面でも、『King Animal』は旋風を巻き起こした。ビルボードのアルバム・チャートでは初登場5位を記録し、さらにイギリス、オーストラリア、ドイツといったさまざまな国のヒット・チャートでも上位に達している。

『King Animal』というアルバムをリリースしたことで、サウンドガーデンはメインストリームの中心に返り咲いたが、同時にこのアルバムは、彼らの墓碑銘ともなってしまった。なぜなら2017年5月にクリス・コーネルが急逝したからである。『King Animal』はクリエイティヴな復活作と呼んでもいいだろうし、見事な最終作と呼んでもいいだろう。いずれにせよ、これはほかに例のない、秀逸なレコードであり、サウンドガーデンの名声をさらに高めることになったのだった。

Written By Tim Peacock


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