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カニエ・ウェストのベストソング20:ヒップホップ界で最も人を引き付けるアーティスト
カニエ・ウェスト(Kanye West)は、ヒップホップ界で最も人を引き付けるアーティストの一人だ。人気プロデューサーとしての初期の作品から、自身の作品でシングル・チャート首位を達成するダンス・ラップ、オートチューンを駆使したエレクトロ・ソウル、ダークで革新的な音楽的実験に至るまで、彼はそのキャリアを通して、挑戦を続け、ジャンルの境界を広げてきた。
そんな彼のプロデューサー時代から2016年『The Life of Pablo』までの代表曲をプレイリストとともに紹介しよう。
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初期のプロデューサー時代
シカゴの結びつきの強いヒップホップ・シーンで、カニエ・ウェストは雇われプロデューサーとして音楽活動を始めた。ジェイ・Zがカニエ・ウェストに飛びつき、2001年のジェイ・Zのアルバム『The Blueprint』で仕事をさせる前は、彼が送ったビートテープのおかげで、フォクシー・ブラウンやジャーメイン・デュプリらの作品の仕事を得ていた。
『The Blueprint』のファースト・シングル「Izzo (HOVA)」などカニエ・ウェストがプロディースした曲は、飾りがなくて歯切れのよいビートで伴奏されたモータウンの名曲の高速サンプリングが典型的な特徴であった。
『The Blueprint』は、ジェイ・Zが全米チャート1位を達成した4枚目のアルバムとなり、カニエ・ウェストをヒップホップ界で最も人気のあるプロデューサーにした。しかし、彼はその後、自分自身の力でラッパーとして受け入れられようとしながら、もどかしい思いの数年間を過した。
ラッパーとしてのデビュー
2004年のカニエのデビュー・アルバム『The College Dropout』は、何年も待った甲斐があったことを証明した。それはラップの歴史において、最も多面的で風変わりな新譜のひとつだったが、それでもチャートを征服するのに充分なポップ精神が詰まっていた。
危うく命を落としかけた自動車事故の後、カニエ・ウェストの顎がワイヤーで閉じられている間に作曲され、録音されたリード・シングルの「Through The Wire」は、チャカ・カーンの「Through The Fire」のピッチを上げた魅力的なサンプリングをバックに、「今を楽しめ」という真摯で内省的なメッセージが込められた曲だ。
「Spaceship」は、ゴスペルに影響を受けた低賃金雇用者の苦難の話。一方、「Jesus Walks」でのカニエ・ウェストは、独創的に構築された歩兵隊の行進曲に乗せて、クリスチャンを支持するメッセージを送った。
『The College Dropout』は カニエ・ウェストに商業的かつ決定的な大成功をもたらし、彼は2005年のグラミー賞授賞式で最優秀ラップ・アルバム賞を獲得。波に乗った彼はすぐにスタジオに戻り、次のアルバムの制作に取り掛かった。
同年の後半に発表された『Late Registration』で、カニエ・ウェストはサウンドトラック作曲家のジョン・ブリオンと一緒に働き、ジョンはアルバムに、より壮大で広がりのある音を与える手助けをした。
トレードマークのハイピッチのサンプリングはなくなっていたが、大ヒットしたシングル曲の「Gold Digger」や「Diamonds From Sierra Leone (Remix)」など、沢山のポップな曲が健在で、「Diamonds From Sierra Leone (Remix)」では、カニエ・ウェストが、ダイアモンド貿易と光り輝くアクセサリーに執着するラッパー達の役割の倫理にメスを入れていた。
また、このアルバムでは 「Hey Mama」という彼の母親への心のこもった叙情詩も目玉のひとつだ。一方、「Celebration」では、故意にふざけたカニエ・ウェストの歌詞と、ジョン・ブリオンの魅惑的で雄大なオーケストラのスコアを組み合わさっている。
幅を広げた3枚目
カニエ・ウェストは彼のファン層を広げるために、U2とツアーして『Late Registration』を売り込んだ。アリーナを満杯にした観客の前でパフォーマンスするという経験は、次のアルバムをインスパイアすることになった。
2007年発売の『Graduation』は、ラップにロックとポップの活力を与える試みとなり、それとともに大観衆向けに歌詞もシンプルにした。シングルとして発表されたダフト・パンクをサンプリングした「Stronger」、そして「Flashing Lights」はこのアルバムのエレクトロニック・ダンスとヒップホップのスタイルを巧みに融合し、シンセを駆使した大胆なポップ・サウンドの好例である。
最愛の母の死
母親の死と、婚約者のアンバー・ローズとの破局というプライヴェートでの2つの衝撃的な出来事に刺激されて制作された2008年発表の『808s & Heartbreak』では方向性がドラマティックに変化した。 カニエ・ウェストはラップを完全に排除し、自身の悲嘆を「Love Lockdown」や「Paranoid」のような内省的で冷たいポップ・ソウルの曲につなげ、アルバム全体に渡ってオートチューンで歌ったのだ。
当時はオートチューンに過度に頼っていると物議をかもしたが、このアルバムの感動的な歌詞や、R&Bとヒップホップの抜け目のない融合は先見の明があり、ドレイクやフランク・オーシャンを含む同時代の多くのミュージシャンに影響を与えるものになった。
最高傑作の一つ『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』
もし、『808s & Heartbreak』でのカニエ・ウェストが不安定な状態だったとするならば,彼が最も自信を持って大胆になったのは2010年の『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』だ。
“セレブリティ”と“過剰”という2つのテーマに駆り立てられた非常に野心的なアルバムは、 カニエ・ウェスト流の“ラップ・キャンプ”で、大勢のプロデューサー、アーティスト仲間とともにハワイでレコーディング。先行シングルの「Power」は、シュレッドギターと辛辣な歌詞に、独創的なキング・クリムゾンのサンプリングを備えていた。
また、アンセム的な「All Of The Lights」には、ファーギー、アリシア・キーズ、エルトン・ジョン、リアーナといったスーパースター達がゲスト参加しており、「Monster」ではボン・イヴェールのジャスティン・バーノン、ジェイ・Z、リック・ロスに加え、意外にもニッキー・ミナージュが華々しく登場し、カニエは素晴らしいパフォーマンスを絞り出した。
一方、自己分析的な「Runaway」は、コンピューター上のピアノとタフなビートを混ぜ合わせた楽曲で、しばしば論議の的になる彼のイメージに真っ向から体当たりしたものだ。
ジェイ・Zとのコラボ
『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』がまだチャートの上位にいる間に、 カニエ・ウェストは再びジェイ・Zとタッグを組み、2011年発売の『Watch The Throne』をレコーディングした。この二人のキャリアにおいて最も愛されることになる曲のひとつである「Ni__as In Paris」が収録されたこのアルバムは、富にこだわる一方で、社会的意識の高さも提示していた。
過去最高に実験的なアルバム
2年後、カニエ・ウェストは6枚目のソロアルバム『Yeezus』を発表。パリにある彼のロフトで、ダフト・パンクやハドソン・モホークを含む、名のある最新鋭のプロデューサーたちの助けを得てレコーディングされ、デフ・ジャムのレジェンド、リック・ルービンが最後の最後で手を加えた。
ミニマリストのデザインと建築(カニエは繰り返し、ル・コルビュジエのランプが彼の主要なインスピレーションだと主張した)に影響を受けたこのアルバムは、インダストリアルとアシッド・ハウスを融合した荒々しい「New Slaves」のように、多岐に渡るジャンルを取り入れて、彼の過去最高に実験的な音楽となった。
また「Blood On The Leaves」は、ニーナ・シモンの市民権を歌った「Strange Fruit」のサンプリングと、失敗に終わった恋愛のほろ苦い話を組み合わせるという、大胆で妥協のない曲だった。
カニエ・ウェストのそれまでの作品と同様に『Yeezus』も批評家達が絶賛し、次のアルバム用にさらに優れた曲の数々が保管されているとの噂が立って、当初『Swish』と名づけられていたアルバムに高い期待が寄せられていた。
2016年1月、カリスマ性のあるカニエ・ウェストのラップのヴァースに、西海岸のラップの天才マッドリブの特色あるビートを加えた「No More Parties In LA」を含む、何曲かの新曲をSoundCloudで発表した後、彼は2月11日に、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで、初めてアルバムを披露した。
非常に野心的な試みだったが、彼はこのイベントを利用して、彼のファッションブランドYeezyの最新デザインも発表。そして、最終的に『The Life Of Pablo』と銘打たれたアルバムは、ジェイ・Zが所有するデジタルサービスTidalで独占リリースされたのである。
Written By Paul Bowler
カニエ・ウェスト『DONDA (Deluxe)』
2021年11月14日発売
iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music
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