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『ソウルフル・ワールド』で注目を浴びるジョン・バティステが語る新作『We Are』と音楽での抗議活動
ジョン・バティステ(Jon Batiste)が音楽を手懸けたアニメーション映画『ソウルフル・ワールド』が話題になっています。彼はアメリカではすでに経済誌フォーブスの2016年の「世界を変える30歳未満の30人」に選ばれるなど、世代を代表する存在として認知されています。そんな彼が映画を通じて、ようやく日本をはじめ世界に知られるアーティストとなった2021年、満を持してメジャー2作目となるアルバム『We Are』が2021年3月19日にリリースされます。
ジャズをベースにヒップホップ、ファンク、R&B、ゴスペルなど多彩な要素が溶け合った音楽。その背景にあるのはどんな思いなのか、オンラインでインタビューしました。画面に映る彼は、とても魅力的でチャーミングな男性。その表情、話す言葉に、ミュージシャン仲間からも愛されている理由がよくわかりました。
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――『ソウルフル・ワールド』はアニメーション映画です。監督に子供から大人にまで受け入れられるジャズを書いて欲しいと言われたそうですが、難しい課題ではなかったですか?
それこそが僕のやりたいこと。僕は、ニューオーリンズで生まれ育ったからね。ニューオーリンズという土地は、決して音楽をジャンルの視点で区別したり、見たりすることなく、人とのつながりの中から生まれるものという考え方が根付いています。そのことは、ジュリアード音楽院でも音楽科と演劇科のコラボを企画するなど、実践してきました。だから、みんなに聴いてもらえるようなジャズを作りたいというのは新たな挑戦ではなく、約15年のキャリアのなかで積み重ねてきたものがまさに花開いた。もっと言えば、このために今まで頑張ってきたんだとさえ思っています。
――あなたの中にジャンルの境界線は存在していないということですか?
2009年から“ソーシャル・ミュージック”という位置付けで音楽を作ってきました。社会を意識した音楽というか、これまで僕らが生きてきた社会や歴史上で起きたことと、僕自身が経験したことを掛け合わせた表現、僕は、それを“ジャズ2.0ヴァージョン”と呼んでいるけれど、そこにはジャンルという考えは存在しません。その音楽をこれまで地下鉄やストリート、公共の場、レストランでも、また抗議活動の行進でも演奏してきました。“ソーシャル・ミュージック”というのは、音楽が商業化される前の、日々の出来事を表現していた時代の音楽とルーツが同じだと思っています。
――その抗議活動というのはいつ頃から始められたものですか?
“ラヴ・ライオッツ”(愛の暴動)と呼んでいる行進は、もう10年以上前から世界各地で続けています。抗議運動も音楽が真ん中にあると、とても平和に行うことが出来るので、そうしていますが、実際にやると、人々の熱量に僕らバンドが圧倒されてしまいます。言葉を超えて、一緒に歌い、手拍子をし、踊ったりすると、愛を分かち合うことが出来る。僕も活動を続けるなかで、愛を共有する場所を作れていることを実感しています。ワシントンD.C.のナショナルモールで行ったこともあるし、時にはライヴのアンコールとして、ストリートに飛び出してやったこともあります。
――昨年6月にニューヨークで行った「We Are: A Peaceful Protest March With Music」で、行進のタイトルにもなった「We Are」という曲、終盤でスピーチが流れたりしますが、どのようにして生まれた曲ですか。
行進のために書き下ろした曲ではないんです。少し前に書いた曲で、まず本物のファンクのリズムから始まり、その上にのせるハーモニーとして、なぜか中東風テイストのものが自然に浮かんできた。ふたつの要素を融合させた後、クワイアの歌を加えることで、これまであまり聴いたことがないようなグローバルなサウンドが生まれて……。それから歌詞を考える時に、世界中の人々のイメージが頭に浮かび、“We Are”という繰り返し歌う歌詞が出てきました。ここまで書いた後で、何かが足りないと悩むなか、マーチングバンドとクワイアの共演というヴィジョンが生まれ、せっかくだったら僕が大切に思っている人達に参加してもらいたいと思い、祖父が長老を務める教会の聖歌隊、ゴスペル・ソウル・チルドレン・クワイアと、僕の出身高校のマーチングバンドに参加してもらいました。その出来上がった曲がニューヨークでの抗議運動にピッタリだったので、演奏したんです。
――この曲をタイトルにしたアルバムが3月にリリースされますが、どんな作品になりますか?
アルバムの制作は、2019年から始めていて、8月に集中的に曲を書き、そこで出来た”Freedom”や”I Need You”いった曲をニューオーリンズやロサンゼルスでレコーディングしました。完成した段階で、僕が抱いたヴィジョンと、2020年に起きた社会の出来事が符合してね。ミュージシャンにはきっと現実が起きる前に何かを察知する能力がどこかあるんだと思います。なので、結果として今の世界に向けて、メッセージを発信出来るアルバムになったと思います。
Written & Interviewed by 服部のり子
ジョン・バティステ『We Are』
2021年3月19日発売
iTunes / Apple Music / Spotify / Amazon(CD)
【収録曲】
1. We Are
2. Tell The Truth
3. Cry
4. I Need You
5. Wachutalkinbout
6. Boy Hood
7. Movement11
8. Adulthood
9. Mavis
10. Freedom
11. Show Me The Way
12. Sing
13. Until