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ジャック・ジョンソン、来日公演ライブ・レポート:13年振りとなるジャパン・ツアー

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All photo by Kizzy O'Neal

2024年2月26日(大阪)と28日(東京)にて来日公演を行ったジャック・ジョンソン(Jack Johnson)。この13年振りとなるジャパン・ツアーの東京公演について、音楽ライターの松永 尚久さんのレポートが到着。

また、この東京公演のセットリストがプレイリストとして公開されている。
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13年振りの単独公演

鼻にかかった独特の歌声と、アコースティック・ギターをベースにしたシンプルかつ優しさに満ち溢れた楽曲の数々で、デビューから20年以上にわたりさまざまなリスナーを魅了。21世紀サーフ・ミュージックのスタンダードを築いた存在として、音楽だけでなく自然と寄り添うライフスタイルも注目を集めるジャック・ジョンソン。実に13年ぶりとなる単独来日公演が、東京ガーデンシアターにて開催された。

会場には、デビュー当時からジャックの音楽とともに人生を歩んでいるリスナーを中心に、その子どもたちと思われる世代まで、さまざまな人々が客席を埋め尽くしている(チケットは即日ソールドアウト)。ただ、彼の音楽・人間性のおかげか、他のライヴによくある開演前の興奮や緊張感があまりなく、和やかな雰囲気のなかで、ジャックの登場を待っている印象。しかし、ステージの袖から手を振りながら登場すると、大きな歓声が轟く。そして、自身の音楽キャリアがスタートしたきっかけになった2001年発表の楽曲「Rodeo Clowns」を披露する。

Tシャツにデニム、ショートカットの髪型といったヴィジュアルはもちろん、奏でるアコースティック・ギターやヴォーカルは、当時とずっと変わらないまま(もうすぐ50代になるとは信じられない!)。ゆえに、デビュー当時から彼に親しんでいるファンは、当時にタイムスリップしたようなキラキラした表情を浮かべながら、サウンドを楽しんでいる様子だ。しかし、サウンド面に関しては、3人のバンド・メンバー(キーボードのザック・ギル、ベースのメルロ・ポドゥルフスキ、ドラムのアダム・トポール)も参加しているということもあるが、厚みのあるものに。またダブの要素を加え、さらに陶酔感のある仕上がりになっていて、瞬く間にジャックの暮らすハワイのノースショアへとトリップさせてくれた。

バックスクリーンに流れていた映像(これはジャックの盟友であるマロイ兄弟の撮影なのかもしれない)も、非日常感を演出している。その後、2008年に発表された子どもたちの素朴な視点から生まれたというヒット曲「If I Had Eyes」を披露すると、日本語で「ウツクシイ。サイコーデス。コンニチハ」と挨拶してくれたジャック。

 

名曲のパフォーマンス

さらに、映画『おさるのジョージ』のサウンドトラックとして書き下ろした2006年リリースの「Upside Down」などヒット曲をパフォーマンス。ちなみに、この楽曲ではベースのメルロのソロ・パートも組み込まれるなど、要所要所にバンド・メンバーとの即興ジャム・セッションを展開。ライヴならではの演出も加わり、観客をエキサイトさせていた。

そして、2022年発表の最新アルバム『Meet the Moonlight』からのリード・トラック「One Step Ahead」や、2010年発表のシングル「You and Your Heart」では、ロック・バンドさながらのキレのあるサウンドを展開し、会場をヒート・アップさせると、「ウタッテクダサイ」と言い、ジャック・ライヴの鉄板盛り上がりソングである2001年に発表の「Bubble Toes」のイントロを演奏し始める。すると、これまでにはない歓声が響き、サビの<ラッタタラタッタ>というフレーズでは大合唱が巻き起こった。言葉や世代の壁を超え、そこにいる人すべてが手を繋ぎながら、今という時間を全力で楽しんでいる様子が伝わってきたのだ。

その様子にジャックやバンド・メンバーも(もう何百回以上もこの楽曲を演奏しているに違いないにも関わらず)、楽しそうな表情を浮かべながらパフォーマンスしていると、ステージ奥からビールのボトルが数本登場。ジャックが会場の雰囲気に便乗して、乾杯でもするのか?と思いきや、全部を抱えてフルートのように演奏。最新アルバムからのユーモアあふれる楽曲「Costume Party」をパフォーマンス。日常のあらゆるものを大切にしながら、それをいかに暮らしやクリエーションに活かしていくのか?を考えている、ジャックらしいアイデアの一端を感じられた。

会場が大きな一体感と興奮に包まれるなか、ジャックはウクレレを手にして、特にサーファーたちから愛される2005年発表の「Breakdown」を披露すると、瞬く間にチルなムードに。そして、最新アルバムのタイトル曲であり、今回のツアーのテーマ・ソングのような存在である「Meet the Moonlight」を語りかけるように披露する。

「ソーシャル・メディアの発展によって、さまざまな情報を簡単に得られるようになった便利さがある反面、自分にとって有益ではない情報に感情を揺さぶられていないか。たまには、そういった情報から離れて、月を見ながら、自分の本質は何かを考え直す時間をとることも必要なのではないか」というメッセージを綴った、シンプルなアコースティック・ナンバー。ジャックの心のこもった問いかけに、多くの人は改めて自然と対峙すること、そして自分らしい生き方を選ぶことの意味を、感じ取っていたのではないだろうか。

以降は、家族との何気ない日常の風景を描いた「Banana Pancakes」、我々を良い世界へと導く素晴らしい人間の不在を嘆いた「Good People」など、2005年発表のアルバム『In Between Derams』の収録曲を次々と披露。発売から20年近く経過しても変わらない、ジャック音楽の輝きを感じられたと同時に、当時抱えていた問題は現代になってより深刻なものに変化しているのかもしれないという思い(懸念)を巡らせながら、本編は終了したのだった。

 

ジャム・セッションのようなアンコール

アンコールでは、ジャックがアコースティック・ギターを抱えてひとりステージに登壇。観客からのリクエストに応えるかたちで、映画『A Brokedown Melody』のサントラとして2006年に発表した「Home」などをパフォーマンス。この楽曲は、ジャックにとって久々の演奏だったのか、途中でフレーズが飛んでしまう場面も。すると、会場から自然に手拍子が響き、ジャム・セッションのような雰囲気に。この観客の温かで柔軟な対応によって、ジャックの記憶が戻ったようで、その後はエンディングまで無事にたどり着いたが、そういうハプニングがライヴをさらにスペシャルなものに変える演出のように思えた瞬間だった。

ラストには「今から30年前にボクはある女性に一目惚れをしたんだ。今でも関係は続いていて、これは当時のことを綴った楽曲」と、2005年発表曲「Do You Remember」を披露。途中では歌詞を変更し、妻のキムに向けてこれまでの感謝の気持ちを表現していたジャック。さらに「交際して5年後にクリスマス・プレゼントの代わりに贈った」という2008年発表の「Angel」、2005年の発表曲で今や<究極のラヴソング>として幅広いリスナーに親しまれている「Better Together」をメドレーで披露。途中からは、バンド・メンバーも演奏に参加し、穏やかな愛に包まれたアンサンブルで、2時間にわたるステージは終了したのであった。

ジャックのこれまでのキャリアを総括するような、ベスト・ヒットな構成でありながらも、時代とともに進化・変化している様子を感じられた、13年ぶりの来日公演。ちょっとしたハプニングもあるなかで感じたのは「今という瞬間はもう2度とやってこないのだから、それを思う存分に楽しむ」ジャックの姿勢だった。きっと、会場に足を運んだ観客の多くは、ジャックとの貴重な時間のなかで同じ気分を共有して穏やかな気持ちで、それぞれの<ホーム>へと足を運んでいったのだと思う。

4月にオーストラリアのバイロン・ベイで開催されるフェスティバルのヘッドライナーをもって、最新アルバムにおけるツアーが終了。その後は家族との時間を大切にしながら、ゆっくりと新曲の制作に取り掛かるというジャック。次に彼の柔らかな笑顔や声に触れられる機会は、ちょっと先になってしまいそうだが、彼が発信する愛に溢れたメッセージ・楽曲の数々は、これからも人生のさまざまなシーンで指針となってくれそうだ。また会える瞬間まで、(ジャックの得意な日本語である)「キヲツケテ」日々をエンジョイしたい。

Written By 松永 尚久 / All photo by Kizzy O’Neal


ジャック・ジョンソン来日公演@東京ガーデンシアター(2024/2/28)
「Meet The Moonlight JAPAN TOUR ’24」

セットリストがプレイリストになって公開中

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