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ジョン・コルトレーン購入ガイド:ジャズ初心者のための必聴アルバム10枚

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ジャズの世界では、少しでもジョン・コルトレーンを話題に持ち込もうなら、その場は畏敬の念で静まり返るものだ。その理由とは、彼が持つ音楽のパワーは我々人間が持ち得る力をはるかに超越し“神”として弟子たちが崇めているからだ。実際に1967年にジョン・コルトレーンが亡くなってからというもの、その明らかにスピリチャルで浮世離れした特徴も手伝い、コルトレーンと彼の音楽は他のジャズ・ミュージシャンにはない宗教に近いような崇拝をされてきた(サンフランシスコには彼の名をとった教会、セイント・ジョン・コルトレーン・チャーチが存在するほどだ)。

しかし、ジョン・コルトレーンが生み出した膨大な音楽の数々を考えると、初心者には取っつきにくいものがあるのは事実だ。では、ジョン・コルトレーンを聞きたい初心者はまずどこから手をつけるべきなのだろうか?

初めてジョン・コルトレーンのアルバムを購入したいと思っている方に、このガイドがその礎となることを願い、ここにコルトレーンのお薦めアルバム10枚をご紹介しよう。ここにあげたアルバムは、実績に基づいてランキングしているわけではない。ジョン・コルトレーンの作品を決定的に網羅するのではなく、むしろいかに入手しやすいかという観点で選出している。とはいえ、コルトレーンの需要の高い奥義の作品にも触れ、コルトレーンの雰囲気を掴み、さらに探求を続けたい人へのおすすめとして、リスト後半にあげている。


1.『Blue Train』(ブルー・ノート、1958年)

1957年9月にレコーディングされ、同年初めにヘロインを使用していたことでマイルス・デイヴィスのバンドから解雇されたジョン・コルトレーンの復帰作。麻薬をきっぱりやめ、中毒を乗り越えたジョン・コルトレーンはまるで生まれ変わったようで、特にセロニアス・モンクとの活動を始めてからというもの、その音楽は集中力が研ぎ澄まされていた。

若き日のトランペットの天才であるリー・モーガンを含む6人編成で『Blue Train』をレコーディングしていた頃、まだセロニアス・モンクとの活動も続けていた。『Blue Train』は1曲を除いてコルトレーンによる書き下ろし曲だが、その中の1曲でアルバムのタイトル・トラックであり、かの有名なクラリオンの旋律が最も印象に残るのが「Blue Train」だ。コルトレーンの初めての傑作として幅広く認識されており、初めてのコルトレーンを購入する人は必ずここからスタートするべきだ。

Blue Train (Remastered 2003)

 

2.『Soultrane』(プレスティッジ、1958年)

プロデューサー、ボブ・ワインストックが設立したインディ・レーベルのプレスティッジからリリースしたコルトレーンの作品の中で断トツだった本作は、50年代後半にマイルス・デイヴィスのバンドでともに演奏していた頃から親交のあったピアニストのレッド・ガーランドとベーシストのポール・チェンバースとともに1958年2月7日にレコーディングされた。ラインナップにはさらにドラマーのアート・テイラーも含み、アルバムを通してスイングしたグルーヴを保っている。

5曲収録されたハード・パッブのアルバムには、ジョン・コルトレーンが書いた曲は1曲もないが、彼の派手な“シーツ・オブ・サウンド”のスタイルを表している。ジョン・コルトレーンの世界への入口としては、ハード・バップ流に分析したアーヴィン・ベルリンの「Russian Lullaby(邦題:ロシアの子守唄)」をキラー・ソングに携えたこの確固たる正統な作品が安パイだ。

Russian Lullaby (Rudy Van Gelder Remaster)

 

3.『Giant Steps』(アトランティク、1960年)

1959年、まだマイルス・デイヴィスのバンドで活動している頃にレコーディングされた『Giant Steps』はコルトレーンにとって大きな前進となった作品だ。下がりながら転調を繰り返すコード進行に基づいたタイトル・トラックは、おそらくビバップの究極な表現を捉えていたと言えるだろう。ビバップを限界まで突き詰めたコルトレーンが、このアルバム以降に新たな音楽の方向性を模索したのは当然であり、それによってインプロヴィゼーションへの自由が生まれた。

名曲であるタイトル曲以外にも、『Giant Steps』には最初の妻の名をタイトルにした美しいバラード「Naima」も収録されている。また、ハード・スウィングしているハード・バップの楽曲「Cousin Mary」と「Syeeda’s Song Flute」も印象深い収録曲だ。

Giant Steps

 

4.A Love Supreme(邦題:至上の愛)』(インパルス!、1965年)

神聖な創造主へ捧げた4部のサウンドの祈りからなるアルバムは、ジョン・コルトレーンのキャリアが頂点を迎えるにつれ、音楽を通してさらに深く探求していく彼の精神を見事に捉えている。時にその音楽は激しく、熱く、徹底的であるが、逆にこの上なく穏やかな場面もある。コルトレーンは、ピアニストのマッコイ・タイナー、ベーシストのジミー・ギャリソン、そしてドラマーのエルヴィン・ジョーンズの名カルテットでレコーディングを行った。

ジョン・コルトレーンのベスト・アルバムとも言える本作は、同時にジャズ界でも最も偉大なアルバムの1枚であり、スピリチャルなジャズ・ムーヴメントを生み出すこととなった。コルトレーンのプレスティッジ時代の作品より手に入り難いが、『A Love Supreme』のヒプノティックな要素は、ジャズを敬遠している人さえをも魅了し、ジョン・コルトレーンの音楽を追い求めるように変えてしまうだろう。

A Love Supreme, Pt. I – Acknowledgement

 

5.『Ballads』(インパルス!、1963年)

ジョン・コルトレーンの音楽が難解だと考えている人はこのクールな1枚を聞いてみればいい。穏やかなムードのコルトレーンが、ジーン・デ・ポールの「You Don’t Know What Love Is」を含むジャズ・スタンダード8曲を、深夜にゆったりとした雰囲気で演奏している。

『Ballads』も『A Love Supreme』と同じミュージシャン(マッコイ・タイナー、ジミー・ギャリソン、エルヴィン・ジョーンズ)が参加しているものの、音楽はより思慮深く、『A Love Supreme』のような激しさはない。それでも変わらず圧倒的で、徹底したサクソフォンのサウンドを奏でるコルトレーンの名作と言える。初めてジョン・コルトレーンを購入する人にとって『A Love Supreme』が一歩行き過ぎだとしたら、『Ballads』の方がお口に合うだろう。

You Don't Know What Love Is

 

6.『My Favorite Things』(アトランティック、1961年)

メインストリームのポップスが好きの多くの人は、このアルバムのタイトル曲でありヒット・ミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』の人気曲を、当時まだ慣れ親しまれていなかったソプラノ・サックスで東洋に影響されたジャズ・インプロヴへと変身させたシングルを聴いて、ジョン・コルトレーンを知ることになった。

アルバムのフル・ヴァージョンは約14分にも及び、ライヴで演奏する際はそれを30分まで伸ばして演奏し、4曲収録されたアルバムでのキー曲だった。アルバムにはオリジナルの楽曲は一切なかったが、コルトレーンがいかに「Ev’rytime We Say Goodbye」や「Summertime」といったスタンダードを激しいジャズの瞑想へと変貌させることができるかを示した。

My Favorite Things

 

7.『Coltrane』(インパルス!、1962年)

このアルバムの制作時、ジョン・コルトレーンはモード・ジャズ時期の真只中であり、『My Favorite Things』の発売から1年後のことだった。この時点でもまだ通常のレコーディングの基準に合わせることを拒み、ハロルド・アーレンとジョニー・マーサーが書いた「Out Of This World」での彼の解釈は、オリジナル曲とはほど遠い作品に仕上がっていた。

また、ワイルドなソプラノ・サックスがリードするフランク・レッサーの「The Inch Worm」の3/4拍子の曲も然りだ。しかし両曲ともコルトレーンのインプロヴィゼーションに対する自由なアプローチを表す最高峰であり、オープンエンドの2コードのグルーヴの上にサックスを吹いている。『Coltrane』に収録され、コルトレーンが書き下ろした楽曲の中では、瞑想的な「Tunji」がその後の作品となった『A Love Supreme』におけるスピリチャルな探求を予見している。

Tunji

 

8.『Crescent』(インパルス!、1964年)

『Crescent』はジョン・コルトレーンが1961年にアトランティックを出てABC/パラマウントのジャズ部門だったインパルス!に移籍してリリースした9枚目のアルバムである。名カルテット(マッコイ・タイナー、ジミー・ギャリソン、エルヴィン・ジョーンズ)と称されたメンバーとともに、すべてオリジナル楽曲を収録している。

マッコイ・タイナーの豊かでラプソディーのようなコードで始まり、メローなトーンでコルトレーンのテナー・サックスへのお膳立てする美しいメロディーが繰り広げられる印象的な「Wise One」を頂点にした、非常にスピリチャルなLPだ。アルバムのB面には「Lonnie’s Lament」と「The Drum Thing」の2曲収録されており、いずれもコルトレーンによるソロ・パートがないことが印象的だ。スタイルとしては、翌年にリリースされた『A Love Supreme』を聴くにあたって準備を整えるには良作だ。

Wise One

 

9.『Ascension』(インパルス!、1965年)

フリー・ジャズの奥義に親しんでいなければ、この作品をジョン・コルトレーン必聴10枚のトップに置くのは間違いだろう。しかし、コルトレーンのアヴァンギャルドなスタイルに慣れてくれば、『Ascension』は求めるべき作品となる。『A Love Supreme』の半年後にレコーディングされたが、前作とは極端に違う作品であり、コルトレーンはサクソフォニスト3人(アーチー・シェップも含む)、ベーシスト2人、ドラマー2人を含む10ピースのバンドに囲まれ、ひとつの長い楽曲を収録した。

楽曲は2つのヴァージョンが収録、最近のCDのリイシューでは両方収録されている。集合体としてのインプロヴィゼーションはオーネット・コールマンやアルバート・アイラーの影響が拡大しているが、ジョン・コルトレーンは前例のないグループによる長い形式のインプロヴを生み出した。

Ascension (Edition I / Pt. 1)

 

10.『Interstellar Space』(インパルス!、1967年)

気が弱い人にはオススメしないが、最も変わったジョン・コルトレーンを求めている人にはこのアルバムがぴったりだ。『Interstellar Space』は1967年2月、ジョン・コルトレーンが40歳で亡くなる5か月前にレコーディングされた。この頃には名カルテットはすでになく、コルトレーンは様々なラインナップで実験を繰り返していた。ここではテナー・サックスとベルと入れ替わりながら、ジョン・コルトレーンはドラマーのラシッド・アリと音楽での対話を探求し、「Mars」「Venus」「Jupiter」「Saturn」の4曲を収録した。

変わったメロディー、ハーモニー、構造を持った『Interstellar Space』はファンからも批評家からも賛否両論だった。51年後の現在でもこのアルバムを聴くのはなんとも落ち着かない体験ではあるが、ジョン・コルトレーンをより深く理解し、開拓をし続けた天才の本領を感じたいのであれば、コレクションに必須のアルバムだ。

Jupiter Variation

Written by Charles Waring



  

ジョン・コルトレーン『Both Directions at Once: The Lost Album』
2CDデラックス・エディション」「1CD通常盤
   


♪ 『John Coltrane Best Of

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