Stories
グラディス・ナイト&ザ・ピップスがモータウンの魂をさらけ出した「If I Were Your Woman」
グラディス・ナイト&ザ・ピップスは1960年代を通して、モータウンの王冠の中で最も輝く宝石としての評判に磨きをかけていた。70年代を迎えると、会社との関係は残すところ約3年ほどだったが、彼らのソウルフルな標準は常に高いところにあり、それは今日でも記憶に残る彼らの最後のモータウンからのR&BのNo.1ヒット「If I Were Your Woman(邦題:恋の苦しみ)」に現れている。
<関連記事>
・グラディス・ナイトの経歴と名曲:007主題歌も担当したソウルの歌姫
・グラディス、パティ・ラベル、ディオンヌの珍しい共演「Superwoman」
最初はヴィー・ジェイ・レコードから1961年にリリースされた「Every Beat Of My Heart」でチャートのトップを獲得したアトランタ出身の家族で構成されたグループは、ベリー・ゴーディの帝国に移ってからも、素晴らしい作品を次々と発表した。マーヴィン・ゲイより先に1967年に「I Heard It Through The Grapevine(邦題:悲しいうわさ)」で1位を獲得、「The End Of Our Road」、「The Nitty Gritty」や「Friendship Train」など、数多くのR&Bやクロスオーヴァー・ヒットを含んだ。
1970年にグラディス・ナイト&ザ・ピップスはすでに「You Need Love Like I Do (Don’t You)」でトップ3の成功を収めていたが、その頃に当時意識が高まっていたウーマン・リヴ運動に合致した曲が遠回しに舞い込んできたのだ。「If I Were Your Woman」は多作の作曲家、パム・ソーヤーと作詞家かつアーティストで、「Tainted Love」のオリジナル・ヴァージョン(ノーザン・ソウルの賛美歌でもある)で最もよく知られ、のちにマーク・ボランのパートナーとしても知られることになるグロリア・ジョーンズが作り出した感情を揺さぶるバラードだった。
「If I Were Your Woman」のバッキング・トラックは1970年2月にレコーディングされ、グロリア・ジョーンズがその数週間後にデモ・ヴォーカルを収録した。『The Complete Motown Singles Vol.10』にあるように、それをプロデューサー/エンジニアのクレイ・マクマレーに持ち込んだ所、彼は最初にソンドラ・‘ブリンキー’・ウィリアムス、次にダイアナ・ロスを失った生活に慣れようとしていたシュープリームスを挙げた。
楽曲をグラディス・ナイトの方向に向けたのはノーマン・ホィットフィールドで、当時(バレット・ストロングと共に)グループのヒット曲を共作し、プロデュースしていた。歌詞の感情は、当初グラディス・ナイトの好みよりも強い内容だったが、幸いにも彼女はその要望に屈した。背筋が凍るようなヴォーカル・パフォーマンスと、頼り甲斐のあるピップスにより、いつになくソウルフルになった楽曲は、1970年11月28日にR&Bチャート入りを果たした。
1月23日のチャートでは頂点に達し、グループにとっては通算3作目、モータウンでは2作目のソウルNo.1となった。グラミー賞においても2部門でノミネートされた。シュープリームスも1971年に「If I Were Your Woman」をレコーディングしたが、そのヴァージョンは2006年までリリースされなかった。
1988年にはステファニー・ミルズが再びこの曲をR&Bトップ20に返り咲かせ、それはジョージ・マイケルがロンドンのウェンブリー・スタジアムで開催されたネルソン・マンデラ・トリビュート・コンサートでこの曲を披露したのと同年のことだった。
Written by Paul Sexton
- グラディス、パティ・ラベル、ディオンヌの珍しい共演「Superwoman」
- 映画『007 / ジェームズ・ボンド・シリーズ』の主題歌ベスト・ソング15選
- クィーン・ラティファ:一流ラッパー、女優、ジャズシンガーまで幅広く活躍する才能
- ダイナ・ワシントン:歌いたいように歌い、自分が望むように生きたポップ・スター
- エリカ・バドゥの魅力:R&Bシーンを変えた新ヴォーカルと次世代への与えた影響