Stories
クラプトン、ピート・タウンゼント、キース・ムーンが夢の競演を果たした3夜
1974年の夏、エリック・クラプトンは忙しい男だった。6月中旬から新作アルバム『461 Ocean Boulevard』を引っさげたUSツアーを始め、中でも8月1日にアトランタのオムニ・コロシアムで行われたライヴ音源はスローハンドのファン達の間ではブート化され、未だに語り継がれている。
その理由は、その夜のステージ上で起った出来事にあった。24時間後にノース・キャロライナのグリーンズボロでも起こり、その後2日間もウェスト・パーム・ビーチでも起こった。なんとピート・タウンゼントとキース・ムーンがエリック・クラプトンとステージで共演したのだ。
<関連記事>
・クリームがどのようにしてサイケ・ブルースの伝説バンドになったのか
・12万人の観衆を前にしたブラインド・フェイスのデビュー・ライブ
エリック・クラプトンのバンドには、セカンド・ギターにジョージ・テリー、デレク・アンド・ザ・ドミノズ期の同僚カール・レイドルがベース、キーボードにディック・シムズ、ドラムにジェイミー・オルダカー、バッキング・ヴォーカルにイヴォンヌ・エリマンがいた。セットは「Smile」から始まり、「Let It Grow」「Willie and the Hand Jive」、そしてクリーム時代のお気に入り「Badge」などが演奏された。
しかしアトランタのショーでは、ザ・フーのメンバーの二人が袖から登場したのだ。ピート・タウンゼントはエリック・クラプトンと共に「Layla(いとしのレイラ)」でジャム・セッションをし、キース・ムーンは「Baby Don’t You Do It」のメドレーの中で、チャック・ベリーの「Little Queenie」で一緒に歌い、そこでピート・タウンゼントはプラスチック製のウクレレをエリック・クラプトンの頭で破壊するというパフォーマンスを見せた。
翌日、ノースカロライナ州グリーンズボロでのコンサート(チケット値段は$7.50)でもピート・タウンゼントはセットの序盤の「Hand Jive」と「Get Ready」で登場し、アンコールでは、キース・ムーンと共に「Little Queenie」だけでなく「Layla」や「Badge」でも共演した。
このエリック・クラプトン、ピート・タウンゼントとキース・ムーンのコンビネーションはもう1度、数週間のツアーの休み直前となる8月4日にウェスト・パーム・ビーチ・レースウェイで実現することになる。この日はピート・タウンゼント、キース・ムーンだけでなくジョー・ウォルシュまで共演し、ザ・フーの「Can’t Explain」を披露したのだ。
残念ながらこれらの公演の公式音源は存在していない、しかし1974年のエリック・クラプトンのツアーの模様は、アトランタでも演奏された4曲と共に、12月のハマースミス・オデオンでの音源で聴くことができる。
Written by Paul Sexton
エリック・クラプトン『E.C.Was Here』
1975年8月1日発売
CD / iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music