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エミネム vs 政治・権力:アルバム『Revival』へ至る道
エミネムはいつも辛口な歌詞で物議を醸すことで知られていたが、それでも2017年10月BETヒップホップ・アワードでの彼のパフォーマンスは世界を改めて震撼させ、最大の話題のひとつとなった。
トランプ大統領に真っ向から狙いを定めた4分間の罵倒は、どきつい意固地な歌詞と共に急速に広まり、エミネムのニュー・アルバム『Revival』を方向づけることにもなった。しかし、それはエミネムにとって、初めて世界の出来事を相手にした小競り合いではない。彼と政治とは何年もの間、爆発寸前の組み合わせだった。
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政府との衝突
エミネムの活動初期は、彼のリリックはブラック・ユーモアに満ち、対立的なライムは概ね家族やポップ・スターたちに対しての内容だった。しかし、4枚目のアルバムとなる2002年の『The Eminem Show』の頃には、より大きな世界に対して自身自身の名前と音楽が影響を与えることができることに気がつき、怒りの矛先をより大きなターゲットへと変更した。
エミネムにとって、政府からの弾圧や圧力は大きな問題となっており、アルバム収録曲「White America」の中で、“政府は、郊外に住む白人のティーンエイジャーがエミネムから悪影響を及ぼされていると思い込んでいる”ことを非難したことで、エミネムと政治は真っ向から衝突した。子供たちのエンターテインメントと暴力についてヒアリングを行った2000年の国会を引き合いに出しながら、前副大統領ディック・チェイニーの妻であるリン・チェイニーがエミネムを暴力的な女性蔑視と非難したことについて、エミネムはこうラップした。
I must have struck a chord with somebody up in office
Cause Congress keep tellin’ me I ain’t causin’ nothin’ but problems
And now they’re saying I’m in trouble with the government
I’m loving it, I shoveled shit all my life, and now I’m dumping it on
オフィスに閉じこもっている誰かの気分を害したようだ
国会は俺に言い続ける 俺は問題しか起こさないって
そして俺が政府とまずいことになってるって彼らは言うんだ
最高だ 俺は生まれてこのかた ずっとクソから這い上がってきた そして今やそれを投げつけてやってる
続く2004年のアルバム『Encore』では、さらに政界の深い問題に猛攻していた。その年の大統領選挙と時を同じくして、リリースされたシングル「Mosh」は猛烈な反ブッシュの政治的抗議の歌でこう歌い、イラク戦争と中東の対テロ戦争を行ったことに対して大統領を非難している。
Let the President answer a higher anarchy
Strap him with an AK-47, let him go
Fight his own war, let him impress daddy that way
No more blood for oil
We got our own battles to fight on our own soil
高まる政治的混乱の責任を大統領に負わせろよ
ヤツにAK-47を縛り付けて行かせろよ
アイツの戦争なら自分で戦え そうやって自分のパパを感動させればいい
石油のためにこれ以上 血を流すのはごめんだ
俺たちの国で、俺たちが戦うべき戦いがあるんだ
またアルバム未発表曲、「We As Americans」では
F__k Money! I don’t rap for dead presidents
I’d rather see the President dead
It’s never been said, but I set precedents
ファック・マネー!俺はくたばった大統領(*紙幣の意)のためにラップはしない
むしろ大統領が死ぬのを見たいね
一度も言われたことはないが 俺が前例を作ってやる
と歌った一節があり、その結果、エミネムはブッシュに対する滞在的脅威として政府のシークレット・サービスによって調査されることになった。
トランプへのフリースタイル
エミネムの続くアルバム3枚、『Relapse』(2009年)、『Recovery』(2010年)、そして『The Marshall Mathers LP 2』(2013年) では政治への優先攻撃順位は下がったが、インタビューでは積極的に政治的発言を続けていた。2012年にはオバマについて「オバマは素晴らしい。俺はオバマに投票した。彼は人々に希望を与えてくれている。彼は頭脳明晰だ」と発言し、オバマ支持を表明。どの候補者にも興味を感じなかった2016年の選挙だったが、エミネムはヒラリー・クリントンの電子メール疑惑を言及しながら、2015年のラジオ出演の際に
I promise to wipe my server clean if you face subpoenas
サーバーを綺麗に拭うと約束するよ もし召喚状を受けるなら
とラップ、初めに両方を追い込んでいる。
2016年には白熱した選挙運動の真っ只中に、エミネムと政治は再び激しく入り混じり、彼はドナルド・トランプに狙いをしっかりと定めた。三度目の大統領候補討論会の少し前に、エミネムはフリースタイルのトラック「Campaign Speech」をリリース。そこで彼はこうラップした。
Consider me a dangerous man
But you should be afraid of this dang candidate
You say Trump don’t kiss ass like a puppet
‘Cause he runs his campaign with his own cash for the fundin’
And that’s what you wanted?
A f__kin’ loose cannon who’s blunt with his hand on the button
Who doesn’t have to answer to no one – great idea!
俺を危険な男だと思ってくれ
だが この酷い候補者を恐れたほうがいい
“トランプは操り人形のようにこびへつらわない”
“だって彼は自分で集めた金で選挙運動を行っているから”とお前は言うが
それがお前の望むことか?
遠慮なくボタンに手をかけたとんでもない危険人物
誰にも答える必要がないヤツ 素晴らしいアイデアだな!
“破滅を起こすカミカゼ”
エミネムの意を決した新しい政治的焦点のさらなる兆しは、「ファック・トランプ」と連呼するよう観客にけしかけた8月のレディング・フェスティバルで訪れたが、10月のBETアワードでここまで抑えきれなくなった毒舌の集中攻撃を予想していたものはほとんどいなかった。
ドナルド・トランプに向けられた彼のアカペラのラップの中で、エミネムは人種差別、大統領の銃に対する考え方、そしてハリケーンにより打撃を受けたプエルトリコを取り上げた。トランプ政権を “おそらく核戦争による破滅を起こすカミカゼ” と呼び、彼は一部のファン層を失うリスクを冒したうえで、大胆にもトランプの支援者にメッセージを送った。
Any fan of mine who’s a supporter of his
I’m drawing a line in the sand – you’re either for or against
And if you can’t decide who you like more and you’re split on who you should stand beside
I’ll do it for you with this: f__k you
俺のファンでトランプの支持者には
お前が賛成か反対でも 俺はどうしても譲れない
そしてもし自分が好きな方を決められないのなら 誰の隣に立つべきなのか意見が分かれるだろう
お前のためにこうやって 中指を立ててやるよ
アルバム『Revival』での批判
『Revival』からの初期スタイルの一曲「Untouchable」で、エミネムと政治の衝突が再び起こったのは当然のことだったかもしれない。ブラック・ライヴス・マター運動、警察の残虐行為、そしてアメリカの人種差別の歴史についてラップを刻みながら、自国に対する彼の評価の中でエミネムは激しく批判した。
Throughout history, African-Americans have been treated like s__t
And I admit that there have been times where it’s been embarrassing to be white boy
F__k your Republican views
Pull ourselves up by the bootstraps
Where the f__k are the boots?
歴史を通して アフリカ系アメリカ人はクソみたいに扱われてきた
そして俺は白人であることが恥ずかしいとすら感じた時がある
共和党の意見がなんだっていうんだ
自力でやり遂げるんだ
ブーツはどこにあるんだよ
『Revival』の初めから終わりまで、彼はさらに指摘し続けている。その最もショッキングな瞬間と思われる「Framed」では、エミネムの車のトランクでイヴァンカ・トランプの死体を発見する間に、殺人の幻想を吐き出すエミネムを見ることができる。無実を公言するにもかかわらず。
I know what this looks like, officers
I ain’t murdered nobody
I know these words are so naughty
But I’m just here to entertain
これがどう映って見えるかわかってるさ お巡りさんよ
誰も殺しちゃいない
この言葉がすごく下品だってわかってる
でも俺は楽しませるためにここにいるんだ
と疑いもなく、アルバムが続くにつれ、エミネムの焦点はトランプ大統領自身にぴったりと合わさってくる。
「Like Home」では彼は全く楽しませようとしていない。“シャーロッツビル事件のために団結” し、”概して黒人や身分の低いヒスパニックを憎悪し”、さまざまな形でナチスやクークラックスクランに関わり、寝ることすらままならない“間抜け野郎”で“やるのはオウムのように繰り返すFOXニュースを観ることだけ”な大統領に対して反対の態度を取るよう彼のファンに呼びかける。『Revival』がエミネム自身の憎悪にあふれていることに気づいたとしても、「Like Home」は楽観主義の旋律を備え、彼は挑戦的に非難する。
But you ain’t runnin’ our country, punk
Or takin’ our pride from us
でもお前はこの国を治めてないだろう 役立たずめ
もしくは俺たちのプライドを踏みにじろうとしてるんだろう
しかしもう一度、アメリカのより明るい未来に期待すら寄せている。
So hands in the air
Let’s hear it for the start of a brand new America
Without him
And be proud of where we’re from
だから両手を挙げて
生まれ変わったアメリカの始まりに拍手を送ろう
彼がいなければ
俺たちの生まれた場所に誇りを持つんだ
エミネムは常に彼の考えを臆さずに発売し、ラップで表現してきた。この方法で態度を明確にしたことで彼は今日、最も政治的発言をする音楽アーティストのひとりとして再浮上している。彼自身をさらけ出すことでキャリアを築いてきた男から、『Revival』では新たに活気に溢れ、彼を取り囲む世界と関わり合う男を見つけ出すことができる。
今にも爆発しかねない世界の中で、エミネムと政治はまさに強力な組み合わせなのだ。
Written by Paul Bowler
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