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ディープ・パープル、全米チャート自身最高位を記録した72年夏の熱狂『Made In Japan / ライヴ・イン・ジャパン』
ディープ・パープルの『Made In Japan(邦題: ライヴ・イン・ジャパン)』は、歴史に残る名ライヴ盤のひとつに数えられている。LP2枚組でリリースされたこのアルバムには、1972年の夏に行われたバンド最初の日本ツアーで録音されたライヴ音源が収録されている。同作がイギリスのアルバム・チャートに初めて登場したのは1973年1月6日のことだ。
2枚組というボリュームながら、このアルバムの収録曲はわずか7曲に過ぎない。これらのうち4曲は8月16日に大阪のフェスティバル・ホールで、1曲は15日に同じ大阪フェスティバル・ホールでレコーディングされたもの。残る2曲は、日本市場を開拓しつつあった当時の欧米のアーティスト/グループに広く知られていたであろう会場「日本武道館」での模様がテープに収められている。
ディープ・パープルは、以前1969年に『Concerto For Group and Orchestra(邦題: ディープ・パープル・アンド・ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラ)』というオーケストラと共演したライヴ・アルバムもリリースしていた。しかし同じライヴ・アルバムであっても『Made In Japan』は、それとはまったく別物だった。日本のレコード会社からの要請もあって制作されたこの『Made In Japan』はバンドのパワフルなライヴ・パフォーマンスを記録することを目的にしたものだった。またこのアルバムでは、既にディープ・パープルの代表曲になりつつあった「Smoke On The Water」のライヴ・ヴァージョンも聴くことができた(「Smoke On The Water」は、数カ月前にアルバム『Machine Head』で発表されたばかりだった)。
『Machine Head』は、1972年4月から全英チャートに24週間ランク入りしていた。『Made In Japan』には、その『Machine Head』からさらに「Highway Star」「Lazy」「Space Truckin’」の3曲が選ばれている。『Machine Head』と『Made In Japan』双方のオープニング・トラック「Highway Star」は既に高い人気を獲得しつつあった1曲。また「Lazy」は、7分のスタジオ・ヴァージョンに対し、ライヴ・ヴァージョンは11分の長尺の演奏になっている。アルバムを締め括る「Space Truckin’」は『Machine Head』に収録されているスタジオ・ヴァージョンの4分に対し、20分の大作に拡張。LP『Made In Japan』のD面はすべてこのトラックに充てられている。
グループは、『Machine Head』とその次のスタジオ・アルバム『Fireball』の2点を相次いで英チャート首位に送り込んでいる。しかし、ライヴ・アルバムにはしばしば起こることだが『Made In Japan』はそこまでの好チャート成績を残すには至っていない。同作は1973年1週目のイギリスのアルバム・チャートで初登場16位を記録。ちなみにこの週の首位はオールディーズを集めたコンピレーション『Twenty All Time Hits of the ‘50s』で、2位以下の3点も、すべて同様の企画盤に独占されていた。チャートの上位に入ったロック色の強いアルバムはスレイドのトップ10ヒット・アルバム『Slayed?』くらいのものだった。
ローリング・ストーン誌はこのアルバムをこう評している。「『Made In Japan』は間違いなくパープルのメタル・アルバムの決定版で、火花が散るような刺激的な瞬間が随所に記録されている……ディープ・パープルは、コンサートでまだまだ現役だ」。
『Made In Japan』は、イギリスでは、初登場時の16位が最高順位になったものの、ドイツ、オーストリア、カナダではチャートを制覇している。イギリスでの地味な成績は、アメリカでの大成功と比べると余計に際立って見える。『Made In Japan』は4月に全米チャートに初登場し、最高6位に到達。2カ月のうちにゴールド・ディスクに認定され、1986年にはプラチナ・ディスクも獲得している。パープルが全米アルバム・チャートでこの順位にまで登り詰めたのは、あとにも先にもこのときだけだった。
Written By Paul Sexton
『Made In Japan』
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