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アメリカでブレイクしたカッティング・クルーの「(I Just) Died In Your Arms」
カッティング・クルーがイギリスでブレイクしたのは1986年の夏だった。とはいえ彼らが最大のヒット曲を出し、イギリス、アメリカの双方のチャートで大成功を収めたのは翌1987年の春のこと。このグループのメンバーは、ニック・ヴァン・イード(ヴォーカル、ソングライティング)、ケビン・マクニエル(ギター)、コリン・ファーリー(ベース)、マーティン・ビードル(ドラムス)という顔ぶれだった。1987年5月の第1週、彼らの代表曲「(I Just) Died In Your Arms(愛に抱かれた夜)」は全米シングル・チャートのトップに登り詰めた。
ヴァン・イードが作ったこのミッドテンポのメロディアスな曲は、イギリスではヴァージンの系列レーベル、サイレンから1986年7月にリリースされたが、英チャートにランクインした際の順位は96位という控えめなものだった。しかしながらそれから6週間後、「(I Just) Died In Your Arms」は最高位4位をマーク。イギリスのチャートのトップ10圏内に4週に亘って留まっている。
1980年代中期は、イギリスのポップスまたはロック・アーティストがアメリカで大成功を収めていた。それはビートルズのアメリカ征服以来の盛り上がりとなり、「セカンド・ブリティッシュ・インヴェイジョン」と呼ばれることになった。カッティング・クルーにとっては、まさに完璧なタイミングと言ってよかった。「(I Just) Died In Your Arms」はアメリカのラジオ向けにリミックスされ、ヴァージン・アメリカ・レーベルの最重要シングルとして1987年の元旦に発表された。またこの曲が収められたアルバム『Broadcast』は、ヴァージン・アメリカが最初に発売するLPとなった。
「(I Just) Died In Your Arms」はゆるやかにアメリカでの人気を上げていき、ラジオやMTVでの放映回数を少しずつ増やしていった。そして3月初旬に至って、米シングル・チャートに初めて登場。5月2日付のチャートではついに首位に到達し、2週に亘ってそのポジションを維持したのだった。この曲はカナダのチャートでも1位を記録するなど世界各国で大ヒットを記録し、さらに後年、エミネム、ジェイ・Z、ブリトニー・スピアーズといったさまざまなアーティストによってサンプリングされてもいる。
1987年のうちにカッティング・クルーはバラード「I’ve Been In Love Before」で再び全米チャートのトップ10に返り咲いており、また、ビルボード誌が同年末に発表した1987年の新人ポップ・アーティスト・ランキングでは、彼らは8位に入った。ちなみにランキングのトップに選ばれたのは、アメリカではビースティ・ボーイズ、ヨーロッパではエクスポゼだった。
「(I Just) Died In Your Arms」がイギリスでヒットしたあと、アメリカで発売される前の時期、ヴァン・イードはイギリスのラジオ番組”Rock Over London”に出演した。そのとき筆者は、この曲がヒットすると前から感じていたかどうか、イード本人に訊ねてみた。彼の答えは次のようなものだった。「正直に言って、あの曲は本当に特別な1曲だった。これを聴いた人は、みんなこう言ってたよ。“ああ、その曲は大事に育てなきゃいけないな”ってね」。
残念なことに2002年にマクニエルが亡くなったため、ヴァン・イードの言葉には悲しい意味が加わってしまった。先のインタビューで、彼は以下のように続けている。
「この曲には魔法がかかってる。でも最初の段階では、僕がバックでギターをごちゃごちゃ弾いてるだけの曲だった。ケビンの功績はすごく大きいと思う。彼がああいうアレンジを施してくれたおかげで、ギターが刺激的な感じで仕上がったからね。でもその前の骨組みしかない段階では、“それは大事に育てなきゃいけないな”って感じだったね」
Written By Paul Sexton
カッティング・クルー『Broadcast』
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