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クリームの「Badge」はビートルズのジョージの恩返しで出来上がった
あまりに短い2年間というキャリアの中で、クリームはヒット・シングルを量産するような存在ではなく“アルバム・ロック・バンド”という存在だった。それでも、全英シングル・チャートでトップ40入りを7回達成。そして1969年5月には、友人であるザ・ビートルズのギタリスト、ジョージ・ハリスンの手助けもあり、「Badge」はクリームにとって最後となるシングル・チャートのトップ20入りを達成した。
エリック・クラプトンが友人のジョージ・ハリスンと共作したこの曲は、クリーム最後のアルバム『Goodbye』に収録、アルバムが発表されてすぐにシングルとしてもリリースされた。アルバムには前年の10月にロサンゼルスのフォーラムで収録されたライヴ音源3曲に加え、新たにスタジオで収録した3曲が含まれ、「Badge」はその内の1曲だった。
ジョージ・ハリスンは「Badge」という曲にとって名実ともに“秘密”という存在だった。実は、ジョージ・ハリスンが「Badge」で演奏したリズム・ギターは、契約上ジョージ自身だと明記されておらず、イタリア語で“ミステリアスな天使”を意味する“ランジェロ・ミステリオソ”という名義で発表された。それは、ほんの数週間前にジョージ・ハリスンが書き下ろしたザ・ビートルズの傑作「While My Guitar Gently Weeps」に、エリック・クラプトンがクレジットされずにリード・ギターを演奏してくれたことに対する恩返しだったのだ。
ジョージはクリームとプロデューサーのフェリックス・パパラルディとともに、サンフランシスコにあったウォーリー・ハイダーの新設されたスタジオでレコーディングし、のちにロンドンのIBCでオーバーダブを行った。エンジニアのビル・ハルヴァーソンはのちにその西海岸でのセッションを振り返ってこう語っていた。「ハイダーのスタジオを去って他の所でレコーディングをするようになったら、あんなに許容量のあるスタジオは珍しいんだと、初めてハイダー・スタジオの良さが身にしみたよ」。
「大体いつもドラムとベースをスタジオの右側において、ギターを反対側にセットしていた」とハルヴァーソンは続けた。「あそこでトム・ジョーンズのヴォーカルもやってのけたんだ、マーシャルもフルにぶっ放した状態で。あそこはとにかく寛容なスタジオだったよ」。
「Badge」でのエリック・クラプトンの独特のギター・サウンドは、レズリーのキャビネットを介した結果だった。ちなみに曲のタイトルがコード進行から名付けられたという説は誤解であり、本当はジョージが歌詞シートに“bridge(ブリッジ)”とメモ書きしたのを、エリックが読み間違えたのだった。
「Badge」はアメリカでは60位と控えめな記録だったが、イギリスでは4月半ばから5月半ばにかけて着実にチャートを登った。チャート入りして5週目には10ランク上がって最高記録となる18位を達成した。皮肉にも、ザ・ビートルズ&ビリー・プレストンの「Get Back」はチャートを登り続け、1位を達成した。
Written by Paul Sexton
クリーム『Goodbye』