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ジョージ・ハリスン「Cosmic Empire」に隠された物語
1960年代末、自分の意識を広げようと、開け放たれた知覚の扉から中を覗く世代が登場し、それに続く宗教意識の高まりが見られた頃、ジョージ・ハリスン(George Harrison)は自我の目覚めの真っただ中にいた。
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アルバム一枚につき1曲、あるいは2曲だった
グループの主導者レノンとマッカートニーは、ジョージを優秀な作家というよりも、ギタリストであり影のヴォーカリストとして見ていた為、彼のソングライターとしての貢献は、引き続き不当に抑えられていた。従って『The Beatles』(1968)制作中のザ・ビートルズでの日々は、その輝きを失っていた。ジョン・レノンは後年次のように認めている。
「僕達がシンガーとして彼に認めたのは、アルバムにつき1曲だけだった。彼とリンゴが最初に歌った曲は、僕のダンス・ホールのレパートリーだったんだ。僕は自分のレパートリーの中から彼等の曲を選んでいた…歌い易い曲をさ」
ハリスンはザ・ビートルズに却下されたか、披露されることなく終わった価値のある曲を積み上げながら、その日々を耐え抜いた。そうした曲が漸く日の目を見たのは、1970年4月のグループ正式解散後のことだ。ジョージと1969年に短いツアーを行ない、その翌年の『All Things Must Pass』のレコーディング・セッションでは、自分のコアなバッキング・グループを提供したデラニー・ブラムレットはこう語っている。
「あの中に何か特別なものがあるのを彼は分かっていたし、もう毛布を被るのは止めたんだよ。そう、一緒にいる時、ジョージは僕にたくさんの曲をプレイしてくれたんだけど、僕はその時、“こうした曲がビートルズのレコードに入っていないのは何故なんだ?”と何度も聞き返したものさ。そうしたら彼は、“彼等がやらせてくれるのは、アルバム一枚につき1曲、あるいは2曲だったんだよ”と言っていた。彼は十分成熟していると僕は思った。準備は出来ていた。人間どれだけ成熟していなければならないと言うんだ?」
『All Things Must Pass』の制作
『All Things Must Pass』の制作開始前、ジョージは蓄えていたもの全てをプレイしてみせる為に、プロデューサーのフィル・スペクターに会った。スペクター曰く、「永遠に続いた。そうして披露してくれたものはどんどん良くなっていった」。過去と未来の区別をつける為に、あらゆることを考慮しなければならないとジョージは主張。「なにひとつ捨てたくはなかった。自分を取り戻す為にみんな解放したかったんだ」とハリスンは告白した。
多数の候補作とディスク上の限られたスペースにより(最終的にトリプル・アルバムになったことを考慮に入れても)、当然使用しないものが出るのは必至で、そんな中「Cosmic Empire」は収録されなかった。
完成された曲は「コーラスの声で一杯」でなければならないという指示の元、デモにはジョージのアコースティック・ギターがフィーチャーされ、初期ナンバー「Old Brown Shoe」を思い起こさせる明るい4/4シャッフルに入る前に、その後も曲中で繰り返されるリフから始まる。
「僕はコスミック・エンパイアで列に並んでいる、コスミック・エンパイアで再前列の席が欲しんだ」と歌うジョージの声は、冒頭のモチーフを描写している。彼が表現しているのは、人生が展開されるにつれて徐々に明らかになっていく、人生の内なる真理を見ることのできる、バーチャルな領域という観念だ。この場合はシアター。ザ・ビートルズが1965年12月に、地元リバプールでの最後のギグを行なった会場“エンパイア・シアター”等、イギリス中に点在する無数のエンパイアを基にしている。そこから彼は、宇宙に対して“普遍的な見方”をする。
答えを求めて心の内側を見る
この形而上学的洞察は、ビートルマニアと逃れられない名声の重圧により、長年取り組んでいた疑問に対する答えを求め、心の内側を見るようなった、60年代半ば以降、ジョージの作品中の多くに浸透していたテーマだ。
1965年初め、ジョージはLSDを試みるようになり、その幻覚体験によって自分を取り囲む世界との一体感を味わうようになっていった。「僕は恋に落ちた。具体的に何かとか誰かに対してではなく、あらゆるものに対してさ」と彼はドラッグの影響について語った。同様に、長年潜んでいた神学に対する好奇心も掻き立てられた。
インド音楽と精神修行の影響
同年、ジョージは「Norwegian Wood」で初めて使用した、ネックの長いインド弦楽器シタールと出会った。これをマスターしたいと切望したジョージは、やがてインド人マエストロのラヴィ・シャンカルの元で学ぶことになる。シャンカルはすぐに、ハリスンのシタールの先生以上の存在になった。ラヴィはジョージについてこう言った。
「出会った瞬間から、ジョージはあれこれ質問してきて、彼がインド音楽と宗教に心から関心を持っているのを感じたよ」
ラヴィをスピリチュアル・ガイドとして認めたジョージは、ヒンズー教の東洋哲学と教義に打ち込んでいった。「ラヴィは僕をヴェーダの世界へと導いてくれた。ラヴィは僕を全ての現実に繋げてくれた」とジョージは言った。ジョージの精神探検は、1968年初め、ザ・ビートルズがマハリシ・マヘーシュ・ヨーギーの元で超越瞑想を学ぶ為にインド滞在中にリリースされた、「Within You Without You」や「The Inner Light」等ナンバーに反映されている。
その後、1968年12月、ハレー・クリシュナ教団の信者Shyamasdar Dasとのアップル・オフィスでの偶然の出会いに駆り立てられたジョージは、「どちらにいらしたのですか? あなたをお待ちしていたのですよ」と謎めいた調子で聞き、その運動と提携し生涯支持し続けた。
こうしたことは全て、当然ながらジョージの曲中に染み込み、その幾つかは実態のあるものと関連付けて解釈することもできる一方、「Cosmic Empire」は紛れもなく、神との拝謁を受ける場所、 “真実が明るく照らされる”ところ、“魂が喜びに包まれる”ところ、そして我々が必ず至福を見出せるところの青写真だった。
Written By Simon Harper
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