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『Third Stage』に収録されボストン唯一の全米1位となった「Amanda」
ロック・ファンと話しているときに「ボストン」という名詞がでてきた場合、それがマサチューセッツ州にある街の名前ではないということがわかると、向こうは名曲「More Than A Feeling」のことをきっと思い浮かべるだろう。ボストンが1976年に出したあのヒット曲は、「ロックの殿堂」の中でそれにふさわしい位置を占めている。しかし、実はボストンの曲の中でチャートで最高の成績を収めたのはあの曲ではない。その栄誉は、彼らの唯一のナンバー・ワン・ヒット「Amanda」が手にした。この曲は1986年9月27日にビルボード誌のシングル・チャートに初登場している。
ボストンは何百万枚も売り上げたアルバムを何枚も出していることで有名だが、アルバム発表の間隔が長いことでも有名だ。1976年のデビュー・アルバム『Boston』は驚異的な売り上げとなり、アメリカだけでも17×プラチナ・ディスクに認定されている。その次のアルバム『Don’t Look Back』(こちらは”たったの”7×プラチナ・ディスクに留まった)までには、2年しか待たされなかった。しかし3枚目の『Third Stage』が出るまでには8年もの間が開いた。これはアメリカでは400万枚を売り上げ、前作に続いてチャートの首位を獲得した。そして4枚目の『Walk On』(1994年)が出るまでにはやはり8年かかっている。
それにもかかわらず、ボストンのギター/キーボード担当のトム・ショルツは、3枚目のアルバム『Third Stage』から出た第1弾シングル「Amanda」を1980年には既に書き上げていた。「Amanda」の完成ヴァージョンとアルバム全体のプロデュースは彼が自ら手がけている。このシングルは、アメリカだけでなくカナダでもチャートの首位に立った。またオーストラリア、ニュージーランド、オランダでもトップ30入りを果たしたが、ヨーロッパ各国の中ではノルウェーで最も良い成績を収めている(最高10位)。さらにスイスでも最高12位に達した。
アメリカでの大ヒット曲がイギリスで不発だった例はたくさんあるが、この「Amanda」もそのひとつで全英チャートにはまったく姿を見せていない。(ちなみに1980年代中期は、イギリス勢が全米チャートを席巻して「セカンド・ブリティッシュ・インヴェイジョン」を巻き起こしていた。)
ボストンは今も元気に活動中だ。2016年、彼らはデビュー40周年記念ツアーを敢行。そのツアーについて、ショルツはこう語っている。「ファンのために40年間に亘ってボストンの曲を演奏してきたけど、このツアーは今まで経験したことのないような素晴らしいツアーだった」2017年、このバンドは「ハイパースペース」と銘打ったツアーに再び出発(上写真)。地元のボストン・ガーデンでは凱旋コンサートも行っている。
By Paul Sexton