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ブッカー・T&ザ・MG’sが今までやってきたことすべてを表現した圧倒的な作品『Melting Pot』

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1971年にはブッカーT&ザ・MG’sはすでにソウルのレジェンドになっており、自身の作品だけではなく、スタックス・レコードの多くのアーティストにも数々のヒットを提供していたが、万事順風ではなかった。キーボード・スターのブッカー・T・ジョーンズが、スタックスの仕事のやり方や環境、雰囲気が変わってしまったことにうんざりし、カリフォルニアに拠点を移したのだ。それは、ギタリスト、スティーヴ・クロッパーがそこで自身のスタジオを設立していたからだった。

当時の音楽シーンはフィラデルフィアから派生したファンクがメインストリームとなり、その影響を受けソウルは変わりつつあった時期だった(ディスコが出回るのはまだ数年先のこと)。ファンキーなソウルをやりたかった小さいグループは他にもおり、ニューオーリンズのザ・ミーターズやアトランタのザ・カウンツなどがそうだった。そんな中、MG’sが彼らのステータスを保つためには、当時の流れに順応しなければならなかったが、ニューヨークでレコーディングした『Melting Pot』で彼らは劇的に変化し、タイトなグルーヴを保ちつつ、羽根を伸ばすような余裕を見せた。アルバムにはカヴァーはなく、純粋に自分たちで創りだしたファンクとソウルが収録されている。なんなら、スリーヴの写真も少しタフでシリアスな面持ちだった。そしてその結果は完成したアルバムは驚くほどのものになった。

タイトル・トラック「Melting Pot」は彼らの意図を明確にしていた。機関車のような鋭いリズムが、ブッカー・Tのオルガンのメロディが始まった途端に一瞬にしてファンクになり、8分の間で幅広いジャンルを融合しながらもヘヴィなダンスを誘うリズム・セクションは健在だ。オルガン・ジャズ、ソウル、以前に『Hang ‘Em High』で見せたようなスパゲティ・ウェスタンのグルーヴ、サザン・ロック、すべてがこのひとつの曲に詰まっている。「Melting Pot」は偶然ついたタイトルではないだろう。そして十分にヒットしたこの曲は様々なリメイクを誘発し、中でもボリス・ガーディナーとアンダーグラウンド・ベジタブルズが目立ったが、やはりオリジナルが究極のヴァージョンだった。

「Back Home」はザ・クルセイダーズがやりそうな曲にも聴こえるが、意図的なのかそうでないのか不明だが、ザ・クルセイダーズに「Way Back Home」という有名な曲があることから、このようなタイトルになったのかもしれない。しかし「Back Home」は陽気で荒く、最初の1分を突っ走ってから、ブルージーで、まるで酔っているかのようなサウンドのセクションに落ち着き、最後はまた堂々と大きなサウンドになり、ザ・クルセイダーズの「Way Back Home」に比べればはるかに制限がなく自由な演奏だ。「Chicken Pox」はザ・ミーターズをピンポイントで意識した曲で、ポジティヴでもそうでなくても、ザ・ミーターズが「Chicken Strut」で見せたようなグルーヴに強く影響を受けている。「Fuqawi」はネイティヴ・アメリカンの酋長がスタリオンに乗って走っているような、力強く誇りに満ちた曲だ。

Booker T And The MGs Melting Pot Record Label

『Melting Pot』のレコード盤のBサイドは、見事な8分間の「Kinda Easy Like」で始まり、「Greeon Onions」、「Hip Hug Her」などで彼らの代名詞でもあるダウンビートのグルーヴに戻る。しかしスキャットのヴォーカルがあることで、60年代の彼らの楽曲よりもジャジーで、ブッカー・Tの熟練した楽器の演奏が、曲の間でずっと絶妙な色合いを出している。短い「High Ride」は60年代半ばのバーケイズのスタイルのインストゥルメンタルだが、スティーヴ・クロッパーのギターはカントリーのようなフィーリングを出しながら、コード進行は完全なるポップスだ。「LA Jazz Song」は2つのテーマをひとつにしていて、「Melting Pot」のビートと「Hip Hug Her」のヴォーカルが大きなコーラスに戻る前のスティーヴ・クロッパーのイントロは見事だ。アル・ジャクソンとダック・ダンのドラムとベースはその裏で静かにだか確実に漂っている。もうすべて聴き切ったと思うのもつかの間、クロージング曲「Sunny Monday」では、ゴードン・ライトフットとメイソン・ウィリアムズの「Classical Gas」が少し入ったようなメロディーをティーヴ・クロッパーがフィンガー・スタイルで演奏し、そこにブッカー・Tが暖かいピアノを加え、そしてリズム・セクションが突入してパーティーになる。当時の時代を反映し、野心的でビッグで圧倒的だ。ブッカー・T&ザ・MG’s、彼らは過小評価されている神だ。本当に。

そしてブッカー・T&ザ・MG’sはひとまずそこで終わった。その年の後半にシングル「Jamaica, This Morning」をリリースしたが、大そうなことはしていない。ブッカー・Tのプロダクションとアレンジメントの才能は、ビル・ウィザーズをスターにした大きな要素だった。ザ・MG’sは1973年に元リーダー不在でアルバムを制作したが、1975年にアル・ジャクソンが殺害されたことで、そのリユニオンは残酷な終わりを迎えた。その後様々なプロジェクトに参加するため、グループは時折集まった。しかし、『Melting Pot』で彼らは明確なステートメントを残した。今までやってきたことすべてを表現し、彼らにはできないと思われていたことをさらに付加し、完全にコンテンポラリーなものに仕上げたのだ。そして約50年も時を経た今日でも、今この時代のものを聴いている感覚に陥る。『Melting Pot』は古いかもしれないが、今でもぴったりのソウル・フードを調理してくれるのだ。

Written by Ian McCann



ブッカー・T&ザ・MG's / メルティング・ポット【CD】

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