Stories
ボン・ジョヴィ『These Days』解説:内省的な歌詞と信念を貫いたサウンド
1990年代半ば、ボン・ジョヴィ(Bon Jovi)は重大な岐路に立たされていた。バンドは1992年の5枚目のアルバム『Keep The Faith』で1980年代のヘア・メタルの路線から離れ、よりヘビーでストレートなロック・サウンドを選択。長いソロやピアノ・バラードなどのポップな傾向を維持したまま、彼らは多くのヒット・シングルを出していた。
次作となる6枚目のスタジオ・アルバム『These Days』を制作するにあたり、バンドは前作のシングル「Keep The Faith」「Bed Of Roses」「In These Arms」や、1994年に発売したベスト・アルバム『Cross Road』に収録したパワー・バラードのヒット曲「Always」と同じ道を辿るべきなのか、それともこの時代に主流だったグランジ、オルタナティブ、インディー・ロックの道を進むのか、彼らはどのようなタイプのバンドになりたいのかを決めなければならなかった。
<関連記事>
・『Slippery When Wet』:バンドの人生を変えた1986年の名盤
・ボン・ジョヴィ「Livin’ On A Prayer」ヒットの裏側
・ボン・ジョヴィのジョンとリッチー、二人が同じステージに立つことを夢見
未知の領域への挑戦
『Keep The Faith』ツアーの終わりに、バンドは休暇を取り、ジョン・ボン・ジョヴィは『These Days』のための40曲ものデモのうちの最初の曲である「Something to Believe In」を書いた。
より大きなサウンドを目指したバンドは、プロデューサーにラッシュやアリス・クーパー、クイーンズライチを手掛けていたピーター・コリンズを起用することを決めた。この種の野心的な作品に精通しているコリンズの手腕は高く評価されたが、ナッシュビルで行われた最初のセッションをジョンが消去し、その後のレコーディングは、ロサンゼルス周辺のいくつかのスタジオと、ニューヨークのウッドストックにあるボン・ジョヴィのホームスタジオで行われるなど、なかなか簡単には進まなかった。
いったん落ち着くと、バンドは未知の領域に足を踏み入れることになる。ジョン・ボン・ジョヴィが書いた歌詞は、グループが比較的調和のとれた状態にあったにもかかわらず、それまでに書いたことのないようなダークなものだった。
暗い歌詞であっても、『These Days』はボン・ジョヴィの作品であることに変わりはない。1995年6月27日にリリースされたこのアルバムは、ボン・ジョヴィの特徴であるロック・サウンドに、ソウル、R&B(特に弾むようなシングル曲「Damned」と「Hearts Breaking Even」)、1970年代のクラシック、そしてモダン・ロックの要素がブレンドされている。ラジオやロック・ファンの気まぐれな好みの変化のおかげで、音楽シーンの地面は急速に変化していたが、ボン・ジョヴィは流行のサウンドに飛びつくのではなく、自分たちの信念を貫き、サウンドをより野心的な場所へと押し進めていったのだ。
典型的なスタジアム・ロックではないもの
それまでのボン・ジョヴィの多くの名曲と同様に、デズモンド・チャイルドがボン・ジョヴィとリッチー・サンボラのコンピに作曲家として加わり、アルバムのセカンドシングル「Something For The Pain」、「This Ain’t A Love Song」や「Diamond Ring」の作曲を担当した。『These Days』のオープニング曲である「Hey God」で歌われるのは、まもなく路上生活になりそうな男、警官を射殺してしまった息子を持つシングルマザーであり、典型的なスタジアム・ロックではないことは明らかだった。
グランジのサウンドやフランネルの服を取り入れたりはしなかったかもしれないが、ボン・ジョヴィは「Something To Believe In」や「These Days」で1990年代の内省的なリリシズムを取り入れ、「This Ain’t A Love Song」「Hearts Breaking Even」、そして同じニュージャージー出身のアズベリー・ジュークスにインスパイアされたホーン・セクションをフィーチャーした「Damned」では、ちゃんとしたR&Bナンバーを披露しているのだ。
「Hey God」はともかく、『These Days』はポップ・ロック・バラードが中心で、ボン・ジョヴィはハード・ロックの枠を取り払ったとしても、まだ何かを語れることがあることを証明した。「Lie To Me」でのサンボラとジョン・ボン・ジョヴィのセレナーデや、アルバムのタイトル曲「These Days」をきくと、胸がいっぱいになるだろう。
新しい時代の幕開け
『These Days』がリリースされると、ポップスやロックのラジオ局や批評家たちがこのアルバムを高く評価しました。国際的にも多くの国で1位を獲得し、イギリスの音楽雑誌「Q」は、オアシスの画期的なアルバム『(What’s The Story) Morning Glory』に次いで、1995年の年間ベストアルバムの2位に選出したほどだ。全米アルバム・チャートでは9位となったが、『These Days』ツアーではボン・ジョヴィは母国のスタジアムで観客を魅了した。
『These Days』は、ボン・ジョヴィの新しい時代の始まりとなった。ポップ・ロックへの移行は、この後に発売される「It’s My Life」や「Have A Nice Day」などのヒット曲で成果を上げていくが、これらの曲は『These Days』での下地作りがなければ決して作られなかった。ヘア・メタルからハードロック、そしてポップ・ロックへと軸足を移したことで、多くの同世代のアーティストが道半ばで挫折していく中、彼らは生き残ることができたのだ。
ボン・ジョヴィの初期のアルバムが、駐車場でのロマンスや深夜の悪ふざけといった若者のためのサウンドトラックだったとすれば、『These Days』は大人になってからのサウンドであり、それに伴うすべての喜びと傷を表現しているのだ。
Written By Wyoming Reynolds
ボン・ジョヴィ『These Days』
1995年6月27日発売
LP / iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music
ボン・ジョヴィ『Bon Jovi 2020』
2020年10月2日発売
CD / iTunes Store / Apple Music / Spotify
- ボン・ジョヴィ アーティスト・ページ
- ボン・ジョヴィ「Livin’ On A Prayer」ヒットの裏側
- ボン・ジョヴィ、デビュー・アルバム『Bon Jovi / 夜明けのランナウェイ』
- 『Slippery When Wet』:バンドの人生を変えた1986年の名盤
- ボン・ジョヴィのジョンとリッチー、二人が同じステージに立つことを夢見
- 初の全米シングル1位「You Give Love A Bad Name」