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ボン・ジョヴィ『New Jersey』解説:どのようにして地元のヒーローが世界のスターになったのか
大きな成功を収め決定的となった作品『Slippery When Wet』を発売した後、ボン・ジョヴィは80年代後半を代表するハードロック・バンドとなった。3曲のトップ10ヒット、親しみやすいリリック、そして派手なリフで、ボン・ジョヴィはニュージャージー州出身の無名のバンドから世界的なロックスターへと躍進を遂げたのだ。
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しかしそれでも当時のボン・ジョヴィは、”有名になった途端に挫折するのではないか”と言う評論家たちに過小評価されていると感じていた。『Slippery When Wet』のツアーが終わった後すぐにバンクーバーに身を沈め、更に自身を推進させる曲の数々を作り、評論家たちに一発屋でないことを証明しようと意気込んでいた。
そこで行われたセッションにて、メンバーたちは再び『Slippery When Wet』のプロデューサー、ブルース・フェアバーンと作曲家のデズモンド・チャイルドとタッグを組んだ。『New Jersey』は初め『Son Of Beaches』というタイトルが付けられ、最終的には12曲へと絞られたがセッションでは17曲を手掛けていた。短い間奏曲(ローファイの「Ride Cowboy Ride」)以外の曲はすべて4分以上で、あまりラジオ向けではなかったものの、『New Jersey』はそこそこの成功を収め、1988年9月19日に発売されたバンドの最もヒットした楽曲を収録したアルバムとして世間に受け入れられた。
最初に収録されている2曲「Lay Your Hands on Me」と「Bad Medicine」は、『New Jersey』の迫力あるサウンドの雰囲気を作り上げている。6分にわたりゆっくりと盛り上がっていく「Lay Your Hands on Me」がボン・ジョヴィの大胆な方向性を切り開いた。アリーナ級のノリの良いトラックではジョン・ボン・ジョヴィのトレードマークとも言える“ウォウウォウ”が披露されているが、「Let It Rock」や「You Give Love A Bad Name」とはまた違った曲調になっている。
病み付きになるアルバムからのファースト・シングル「Bad Medicine」は全米チャートで1位を獲得した。デヴィッド・ブライアンの弾くキーボードがリードする5分間のアドレナリン放出のトラックは、「Livin’ On A Prayer」と同じぐらいキャッチーであり、ともするとそれを超えているかも知れない。今でもバンドの最も代表曲であり続け、ライヴでは不可欠なトラックとなっている。
「Bad Medicine」は『New Jersey』の頂点でありながら、このアルバムはボン・ジョヴィが様々なタイプのラジオ・ヒットを絶え間なく作れることを証明した。力強いバラードはヘア・メタルの人気の理由の一つだった。「I’ll Be There For You」の派手なコード進行と恋愛について歌い上げる繊細なヴォーカル、そして“Five words I swear to you(この5つの言葉をきみに誓うよ)”などのリリックは、ナンバーワン・ヒットになるには欠かせない要素だった。今作には「Living In Sin」「Wild Is The Wind」、そして「Stick To Your Guns」などのバラードも収められているが、「I’ll Be There For You」の空気よりも軽やかなアンセムはクロスオーヴァーな魅力も放っていた。
今作全体を通して、リッチー・サンボラの電動ノコギリのようなリード・ギター(そして彼のバックヴォーカル)とティコ・トーレスの激しいドラムがボン・ジョヴィの高いオクターブのテノールを空高く羽ばたかせる。21世紀まではそれがボン・ジョヴィのサウンドだった。「Blood On Blood」やブルース調の「Homebound Train」など他のロック・トラックは、『New Jersey』のクールな境界線を描写しており、アルバムのDNAを守りながら助演俳優のように価値ある存在であり続ける。
彼らの世界的スターとしての地位を肯定した『New Jersey』は、再び勝利を奪い取るアルバムとなった。発売から2週間で全米アルバム・チャート1位となり、4週連続でそのポジションを守り続けた。アメリカ以外でも5ヶ国で1位に輝いた。
アルバム発売後から間もなくして、ボン・ジョヴィ及び彼らの音楽全体が、新たな方向性へと向かった。『New Jersey』から次のアルバム『Keep The Faith』には4年のブランクがあり、バンドはあからさまに、よりハード・ロックを目指した。その2作品の間に、ジョン・ボン・ジョヴィは作曲家として優れた能力を披露し、特に映画『ヤングガン2』のサウンドトラックに収録された「Blaze Of Glory」ではそれが際立っている。リッチー・サンボラのソロ・デビュー・アルバム『Stranger In This Town』に関しても同じことが言える。
しかし、ヘア・メタルが終焉を迎えていたためか、『New Jersey』は80年代を代表するロック・アルバムとして取り上げられることが少ない。しかしボン・ジョヴィという集合体の成長という意味では、『New Jersey』はとても大胆な目的を持った作品だったと言える。この作品によって、彼らは音楽界にその旗を立て、後にロックンロール殿堂入りへと続く道を大きな音を搔き鳴らしながら大きな一歩を踏み出した。
Written By Wyoming Reynolds
ボン・ジョヴィ『New Jersey』
『ディス・ハウス・イズ・ノット・フォー・セール』
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