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ウィーザーのベスト・ソング20:ポップ・ミュージックの概念を変えた名曲たち
“第3章”まで活動が続いているロック・バンドはそう多くない。音楽シーンに初めて登場したころのウィーザーはまさに、ヘヴィ・メタルを愛するオタク集団といったイメージのグループで、ハード・ロックのような派手なギター・プレイとグランジのように激しくエモーショナルなサウンドが特徴だった。
そんな初期の活動の中で、ウィーザーは1990年代を代表する2枚のアルバムをリリースした。それがセルフ・タイトルのデビュー・アルバム (“Blue Album”の愛称で親しまれている) と、その次作に当たる『Pinkerton』である。だが当時『Pinkerton』は支持を得られず、メンバーは失望。グループに解散の危機が訪れた。
2000年になって再び結集したウィーザーの面々は、それまでの音楽性を踏襲しつつ活動を再開。一般大衆にも受け入れやすいポップなサウンドを取り入れた、とことんキャッチーなオルタナティヴ・ロックを生み出していく。
2010年には再び休止期間に入るが、2014年の傑作『Everything Will Be Alright In The End』でカムバックし、ウィーザーの第3章がスタート。その新章は現在に至るまで勢いを落とすことなく続いている。ここでは彼らのすばらしいキャリアを称えるべく、名作揃いのディスコグラフィーの中からウィーザーのベスト・ソング20曲をランキングに纏めた。
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20位 The End Of The Game
2021年に発売された15枚目のアルバム『Van Weezer』からのリード・シングルは、高い期待に応えるに十分な1曲だった。アルバムのタイトルが示す通り、「The End Of The Game」はエディ・ヴァン・ヘイレンが完成させたギター・テクニックである、タッピング奏法 (ライトハンド奏法) の刺激的なサウンドで幕を開ける。そして、それに続くのは華やかなハード・ロック・スタイルのギター・リフだ。
ウィーザーが久しぶりに聴かせてくれた王道ハード・ロックの快作である。
19位 Keep Fishin’
2002年に発売された4枚目のアルバム『Maladroit』は今でも”過小評価された”アルバムといえるだろうか?批評家の同作への評価はリリース当時から日に日に高まっており、現在ではウィーザーのディスコグラィの中でも5本の指に入る秀れたアルバムとみなされている。
「Keep Fishin’」は、そんな『Maladroit』の大きな聴きどころのひとつになっている1曲だ。コール&レスポンス形式のヴォーカルから小気味良いギターに至るまで、一度聴いたら決して忘れられないことだろう。
18位 El Scorcho
1995年のある日、リヴァース・クオモはある女性をグリーン・デイのコンサートに誘った。残念ながらその誘いは受け入れてもらえなかったものの、この経験から「El Scorcho」の次のフレーズが生まれた 。
I asked you to go to the Green Day concert
You said you never heard of them
俺はきみをグリーン・デイのコンサートに誘った
聴いたことないって言ってたよね
というのがそれだ。ゆったりしていてどこかファンキーなサウンドを伴った「El Scorcho」は、アルバム『Pinkerton』の中でもとりわけ耳を奪われる1曲であり、ウィーザーの代表曲のひとつにも数えられよう。この曲は彼らのコンサートでも定番になっており、状況が落ち着いてツアーができるようになればセットリストに入ってくることは間違いない。
17位 The British Are Coming
この曲ではウィーザーの楽曲の特徴ともいえる、壁のように押し寄せるディストーション・ギターが影を潜めている。クオモはその代わり、ダイナミックかつメロディックなサウンドに仕上げることを選んだ。結果として出来上がったのはウィーザー屈指の名曲である。
16位 The World Has Turned And Left Me Here
クオモは「The World Has Turned And Left Me Here」と、アルバムでその前に配された「No One Else」についてこのように話している。
「あの“No One Else”は恋人に対しておかしな妄想を抱く、嫉妬と執着心にまみれた自分の中の大バカ野郎な部分について歌っている。“The World Has Turned And Left Me Here”では、その大バカ野郎が彼女に捨てられてクヨクヨしているんだ」
確かに、クオモが書いた『Pinkerton』収録曲の歌詞は今聴くといささか問題があるかもしれない。しかしながら、この曲を聴けば、彼は楽曲を通して女性嫌いを広めようとしていたというより、そうした心理をじっくり分析していたということが理解できるはずだ。
15位 LA Girlz
クオモが『Pinkerton』のようなアルバムを作ることはもうないだろう。だが「LA Girlz」のような曲を聴くと、今でもその気になれば『Pinkerton』のような作品を作れるのだろうと思える。
ギターのフィードバック・ノイズに乗せて始まる「LA Girlz」は、アンセムに相応しいギター・ソロで盛り上がりの最高潮に達する。だがクオモの書いた歌詞は、『Pinkerton』以来最もダークで奇妙な内容だ。
The kids are asleep / We’re haunting their dreams
子どもたちは眠っている/俺たちはその夢に出てやるんだ
14位 Getchoo
ウィーザーの代表曲をいくつも収録しているとはいえ、『Pinkerton』はクセのあるアルバムである。当時のクオモは、心身ともに苦痛を抱える中で曲作りをしていた。そのとき彼は長さが2cm違った左右の脚の長さをそろえる手術を受けたばかりで、同時にロック・スターとしての生活に幻滅してもいたのである。
その中で書かれた「Getchoo」は、やはり絶望感に満ちたクセのある楽曲になった。同曲はどうやら恋人との関係が破綻しつつある男の視点で描かれており、緊張感に満ちたサウンドも物騒な内容の歌詞を引き立たせている。コーラスで”GETCHOO!”と叫ぶクオモの声からは、生々しい心の苦しみが感じられる。
13位 Island In The Sun
『Pinkerton』から5年という長い時間を経て発表されたウィーザーの”Green Album”は、風変わりでシンプルな”Blue Album”時代のサウンドに回帰した作品となった。同作はまた、バンド名を冠したセルフ・タイトルのアルバムをいくつもリリースし、ジャケットの色で区別するという手法が確立された1作でもある。
そんな同作のリード・シングル「Hash Pipe」はキレの良いメタル調のリフがひたすら繰り返される1曲だが、それに対して「Island In The Sun」はもっと肩の力の抜けたサウンドだ。ウィーザーとしてもシンプルすぎるほどの楽曲だが、入り組んだサウンドでなくとも印象に残る曲にはなり得るのだ。
12位 Burndt Jamb
おそらく「Burndt Jamb」という曲名はウィーザー史上最も浅はかなネーミングだろう。良い言葉が見つからないが、曲としては超格好いいだけに、余計に勿体無い感じがする。
サウンドの面では、「Island In The Sun」の変異型といった趣だ。口ずさみたくなる陽気な歌の途中に突飛なギター・ソロが差し挟まるのも同曲に似ている。違いを挙げるとすれば「Burndt Jamb」の方が短く、ギター・ソロもこちらの方が激しい。
11位 Buddy Holly
クオモが”Blue Album”から「Buddy Holly」を外そうとしていたとは驚きだ。というのもこれは、一見軽薄に聴こえるギター・サウンドからは想像できないほど真面目な内容の曲なのだ。
クオモはアジア系の恋人のことを友人にからかわれた経験から、この曲を書いたという。最終的にはプロデューサーを務めたリック・オケイセックが、”WE WANT BUDDY HOLLY(“Buddy Holly”を入れるべきだ)”というメモをスタジオ中に残してクオモを説得。同曲は晴れて収録されることになった。危うくウィーザー屈指の名曲がアルバムから漏れるところだったのだから、オケイセック様々である。
10位 Foolish Father
『Everything Will Be Alright In The End』は、クオモが再び (少なくとも一時的には) 私生活を曲作りに反映させるようになったアルバムだった。例えばクオモ自身のことが題材になった「Back To The Shack」では、疎遠だった父親との和解について歌われている。だが、もしそれがなかったとしても、「Foolish Father」に彼自身の姿が投影されていることは想像に難くない。
Forgive your foolish father / He did the best that he could do
愚かな親父を許してくれ/これでもベストを尽くしているんだ
哀願するようなこの歌詞は、クオモが書いてきた詞の中でも特に胸に迫るものがある。
9位 Only In Dreams
“Blue Album”を締めくくるのは、クオモがギタリストとしての真価を発揮した1曲。その「Only In Dreams」では、しばらく静かに演奏が進んだ後、一気に大きな盛り上がりを見せる展開が二度繰り返される。
最後の3分間は長尺のギター・ソロがふたつ続くような構成だが、それをどちらもクオモが弾いているというから見事である。彼はウィーザー結成時のギタリストが弾いた録音をすべて消去した後、たったワン・テイクでそのパートをレコーディングし直したのだという。
8位 California Kids
ビーチ・ボーイズの「Wouldn’t It Be Nice」を想起させるような「California Kids」の冒頭で流れるメロディから、「Endless Bummer」という最後の曲のタイトルに至るまで、ウィーザーの”White Album”は1枚まるごとビーチ・ボーイズへのオマージュのようなアルバムだ。
その1曲目に配された「California Kids」は同アルバムのベスト・ソングであるだけでなく、1990年代から続くウィーザーのキャリアで一番の”純粋なポップ・ソング”でもある。同曲は初期ウィーザーのような荒っぽさとブライアン・ウィルソンのような艶やかさを見事に兼ね備えており、どんな退屈な午後でも快晴のビーチにワープした気分になれる最高にキャッチーなナンバーである。
7位 Pink Triangle
「ある女の子のことが本当に大好きになって、秋学期の間ずっと彼女のことを考えていたんだ。でもその後に、彼女がレズビアンだと気付いたんだ」
クオモは以前、「Pink Triangle」の題材についてそのように話している。問題行動に走る代わりにそれを魅力的なギター・ノイズに乗せて歌った『Pinkerton』の作風を象徴する1曲だ。おそらくクオモは欲望に吞まれていたのではなく、それを必死に頭から消し去ろうとして「Pink Triangle」を書いたのだろう。
6位 The Greatest Man That Ever Lived (Variations on a Shaker Hymn)
「The Greatest Man That Ever Lived」はウィーザー流の「Bohemian Rhapsody」といえる1曲だ。複数のパートから成る空前絶後の壮大な楽曲なのだ。
副題が示す通り、ウィーザーは古いピアノの賛美歌を基にしてこの曲を制作した。そして、スリップノットからジェフ・バックリィ、アンドリュース・シスターズまで、様々なアーティストをイメージしながら10種類ほどの異なるスタイルでそれを演奏したのだ。その中では、クオモのラップまで飛び出している。同曲はウィーザーの楽曲の中でクオモのお気に入りだというが、ファンからの人気も同様に高い。
5位 My Name Is Jonas
ジョナスという名前の男がウィーザーのライヴを観にきて「My Name Is Jonas」のアコースティック・ギターのイントロが鳴った途端に大興奮している、そんなことが実際にあってもおかしくない。
ウィーザーのファースト・アルバムの冒頭を飾るのは、滑稽で不条理な内容の1曲だ。その題材となったのは、クオモの弟が自動車保険の支払いを拒まれた実体験だという。だが、歌詞はじっくり読んでもあまり意味をなさない。「ウィピール (Wepeel)」なんていう名前が実際にあるのか?なぜ「作業員たちは家路につく (the workers are going home)」のか?
聴いていると次々に疑問が湧いてくるのだ。とはいえ、この曲はクライマックスのハーモニカ・ソロに至るまで、ウィーザーによる最高に楽しい1曲である。
4位 Across The Sea
この曲を語る上で、その歌詞の意味に触れないわけにはいかない。「Across The Sea」は、手紙を送ってきた日本人の少女にクオモが妄想を抱くという内容だ。
I wonder how you touch yourself / And curse myself for being across the sea
きみはどんな風に自分でヤッているの/海の向こうにいる自分を呪うよ
クオモはこう歌う。『Pinkerton』の中でも聴いていて一番心乱される1曲だが、見方を変えれば、他人に抱く妄想や人間の孤独を描いた傑作ともいえる。「Across The Sea」はクオモの個人的な想いを歌ったものだが、そこに表現された孤独や羞恥心に多くのリスナーは共感するのだ。
3位 Say It Ain’t So
『Pinkerton』のリリース当時の評判が芳しくなかったことで、クオモが実体験を曲作りに反映させなくなったのは実に残念だ。「Say It Ain’t So」を聴くと彼がどれだけそのことに長けていたかがわかる分、なおさらである。
Somebody’s Heine / Is crowding my icebox
誰かのハイネケンが俺の冷蔵庫いっぱいに詰まっている
こんな冒頭のフレーズから、この曲は鮮やかな語り口で描かれている。クオモは冷蔵庫の中のビールを見つけて絶望してしまう。それは実父がアルコール依存症だったため、継父までも家族を見捨てるのではないかと不安を覚えたからだ。
そこに口ずさみやすいコーラスと力強いギター・ソロが加わって、同曲はクオモのソングライターとしてのひとつの到達点になっただけでなく、1990年代を代表する1曲になった。ウィーザー屈指の名曲であることに疑問の余地はない。
2位 Tired Of Sex
『Pinkerton』のオープニングを飾るこの曲の” Tired of sex (セックスにはうんざり)”というタイトルは、一見自慢のようにも思える。だが、自分がセックスに興味を抱く年頃の若者で、好きなロック・ミュージシャンがそれに飽きたと歌っていたとしよう。少し経てば、実際のところクオモはセックスを求めているのではなく、愛を求めて途方に暮れているのだと気づくはずだ。
サウンド面では、まるで曲自体が生き物かのように、溢れ出すリアルな感情や苦悩が表現されている。それは、ギターによる冒頭のフィードバック、マット・シャープの重々しいベース、最初のコーラスに続くクオモの苦しそうな叫び声に至るまで、曲全体から痛いほどに感じられる。「Tired Of Sex」はウィーザーの楽曲の中でも一際生々しい内容の1曲だ。
1位 Undone – The Sweater Song
1994年当時のオルタナ・ロック・バンドは、憂鬱や疎外感、依存症など、リスナーが共感しやすい題材を歌うのが定石だった。それに反してウィーザーのデビュー・シングルは、セーターの糸を解きほぐすことについて歌ったものだ。
とはいえ、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのようなシンプルさとメタリカようなの凶暴性が同居した「Undone – The Sweater Song」は、ウィーザーの最高傑作と呼ぶに相応しい。
繰り返されるギター・リフは次第に力強くなっていき、やがてすべてを飲み込むようなサウンドへと流れ込む。滑稽に思えるクオモの歌詞にも深い意味合いが隠されており、人間を少しずつ蝕み破壊してしまう精神的なストレスが暗に表現されている。
スパイク・ジョーンズ監督によりワン・カットで撮影されたミュージック・ビデオも話題となり、同曲はMTVやオルタナ系のラジオ曲で凄まじい人気を博した。ウィーザーのベスト・ソングの第1位は、我々の愛するバンドにとって初めの一歩となったこの曲しかないだろう。
あなたが好きなウィーザーの曲が入っていなかったら、ぜひ下のコメント欄から教えてほしい。
Written By Jacob Nierenberg
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