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ザ・キラーズのベスト・ソング20:アメリカが誇る最高の“ブリットポップ・バンド”

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Photo: Jim Dyson/Getty Images

2001年、アメリカが誇る最高の“ブリットポップ・バンド”が、ネバダ州ラスベガスの砂漠地帯で結成された。2004年のデビュー作『Hot Fuss』で脚光を浴びたザ・キラーズ(The Killers)は当初、シンセ・ポップ/ポスト・パンクのグループに分類され、世間のリスナーからも批評家からも高い評価を受けた。

そのサウンドは世界中で数多くのファンの支持を得たものの (あるいは、支持を得たからこそ)、彼らはその音楽性を転換。アメリカーナ風の音楽性でカルト的な人気を誇るセカンド・アルバム『Sam’s Town』は、UK寄りの音楽性だった『Hot Fuss』から一転して、音楽的にもテーマ的にも本国アメリカを意識した作品になった。そうして時は流れ、2021年までに彼らは7枚のスタジオ・アルバムと1枚のベスト・アルバム、そしてシングルA面としても十分通用するB面曲の数々で構成された1枚の編集盤をリリースしてきた。

しかし、彼らはどうしてこれほどの大物になったのだろう?フロントマンであるブランドン・フラワーズの書く歌詞のおかげだろうか?確かに、

僕は君の家の前に車を止める
その僕の脊椎には魔法が溢れている
I pull up to the front of your driveway
with magic soaking my spine

などという歌詞を書くことができる (そして歌うことのできる) 人物はフラワーズ以外にいないだろう。あるいは、アメリカを舞台にした泥臭い物語を華やかなサウンドに乗せる絶妙なバランス感覚のおかげだろうか? 確かに、彼らの華やかで艶やかなパフォーマンスには人気コミック『シン・シティ』に登場するトップ・ストリッパーも真っ青である。

ここでは、その難題にきっぱりと答えを出すため、各曲にもっとも合う会場のタイプとともにザ・キラーズのベスト・ソング20曲をご紹介しよう。

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ライヴ・ハウスで歌い上げた初期の楽曲

1. Glamorous Indie Rock & Roll

下積み時代のザ・キラーズは、ラスベガスにある地元のライヴ・ハウスやライヴ・バーで腕を磨いていた。そうしたアンダーグラウンド・シーンは、彼らの初期の楽曲の舞台にもなっている。夢追い人や売春婦、罪人たちが住む、はかないネオン街での恋物語は、彼らの実体験から生まれたものなのだ。

実際、ザ・キラーズの面々も夢追い人にほかならなかった。例えば、「Glamorous Indie Rock & Roll」の歌詞に耳を傾けてみてほしい。当時の地元のシーンでは、ニュー・メタルやラップのグループが幅を利かせていた。フラワーズはそんな中で出会った気取り屋たちに対して、この曲の歌詞を通じて反撃しているのである。

Glamorous Indie Rock & Roll

 

2. Mr. Brightside

そして「Mr. Brightside」は、誰でも口ずさめるザ・キラーズの代表曲である。思わず一緒に歌いたくなるキャッチーなサウンドは、ウェンブリー・アリーナにも、いとこの結婚式のような場面にもぴったり。

では、なぜライヴ・バーに合う楽曲に分類しているのか?それは、フラワーズがこの曲の着想を得たのが、ディープな雰囲気のクラウン&アンカーというパブだったからである。彼はそこで、恋人がほかの男性といる場面に遭遇してしまったのだという。

The Killers – Mr. Brightside (Official Music Video)

 

3. Jenny Was A Friend of Mine

デビュー・アルバム『Hot Fuss』のオープニング・トラックである「Jenny Was A Friend of Mine」は、マーク・ストーマーによる力強いベースラインの振動を感じやすいという点で、是非ともライヴ・ハウスで聴いてみたい1曲だ。

しかし、それだけでなく「Jenny Was A Friend of Mine」には、下積み時代の彼らのサウンドと精神が反映されてもいる。当時はまだザ・キラーズが現在のようなサウンドを確立していなかったことから、この曲はデュラン・デュランやザ・スミスと比較されることが多かった (きわどい内容の歌詞をあたかもイギリス人風に歌うフラワーズの歌唱スタイルも一因だった)。

Jenny Was A Friend Of Mine

 

4. Smile Like You Mean It

ノスタルジックだが皮肉のこもった「Smile Like You Mean It」も、いくつかの理由でここに分類している。だが主たる理由はもちろん、有名な青春ドラマ『The O.C.』の中で、ザ・キラーズによるこの曲の演奏シーンが使用されたからである。その会場は、テレビ・ドラマに登場する架空のライヴ・ハウスとして屈指の知名度を誇る“The Bait Shop”であった。

The Killers – Smile Like You Mean It

 

5. Sam’s Town

著名なライヴ会場という意味では、「Sam’s Town」は小さなライヴ会場が併設されたホテル/カジノからそのタイトルを取っている。アメリカ南西部に生息する生物を模したロボットや、レーザー光線を使用したショーで有名なホテルだ。

だが、「Sam’s Town」の中でフラワーズは、故郷という象徴的な場所のことを歌っている。故郷を出て行ったのが間違いだったと気づいたころには、すっかり放蕩息子のようになっているものである。

Sam's Town

 

各地のコンサート・ホールに響く子守唄

6. For Reasons Unknown

各地に点在するライヴ・ホールに合う楽曲というのはつまり、次のステップに進んだことを意味する。基礎を学んだところで、今度はラジオであまり流れないザ・キラーズの楽曲を深掘りしていこう。

「For Reasons Unknown」はシングル・カットされたが、プロモーションは控えめにしか行われなかった。シンセ・サウンドが驚くほど影を潜め、ギターが大きくフィーチャーされていることからも、ここに分類すべき1曲だろう。それもそのはず、この「For Reasons Unknown」では、ストーマーがデイヴ・キューニングとともにギターを弾いており、ザ・キラーズの楽曲で唯一、フラワーズがベースを担当しているのである。

the killers – For Reasons Unknown (Live On Letterman)

 

7. A Dustland Fairytale

「A Dustland Fairytale」はライヴで取り上げられることも多いが、内省的で落ち着いたサウンドのナンバーで、2008年のアルバム『Day & Age』の聴きどころのひとつになっている。

フラワーズの両親がこの曲のモデルになっており、「シンデレラ / Cinderella」と「光沢のあるクロムメッキを纏ったアメリカの王子様 / slick chrome American prince」が砂漠地帯でロマンスを繰り広げる。

心に響く感傷的な内容の同曲には、小規模なライヴ会場が最適だろう。薄暗い会場では、フラワーズの歌に思わず涙がこぼれても隣の友人に気づかれなくても済むからである。

Now Cinderella don’t you go to sleep
It’s such a bitter form of refuge
Don’t you know the kingdom’s under siege
And everybody needs you.
シンデレラ、今は眠りにつかないで
そんな風に逃げるなんてひどいよ
王国は敵に包囲されている
誰もがきみを必要としているんだ

The Killers – A Dustland Fairytale

 

8. Bling (Confessions of a King)

「Bling (Confessions of a King)」はシングル・カットこそされていないものの、なぜかステージの定番曲として長年定着してきた1曲だ。しかし、実際に耳を傾けてみれば納得がいくはずだ。この曲はギターを主軸にじっくりと組み立てられていくが、最後には荒々しくも解放感のあるブリッジへと流れ込む。

Higher and higher
We’re gonna take it down to the wire
We’re gonna make it out of the fire
Higher and higher
もっともっと高く
最後の最後まで耐え抜くんだ
炎の中から抜け出すのさ
もっともっと高く

という部分では、観客が一瞬にしてコーラス隊へと変貌を遂げる。

Bling (Confession Of A King)

 

9. My God

「My God」は、賛美歌としても機能し得るザ・キラーズらしい曲作りが光る近年の1曲。ワイズ・ブラッドが歌うパートの後、フラワーズは次のように力強く歌い上げる。

Don’t talk to me about forgiveness
My God just look who’s back in business
赦しについて僕に話すのはやめて
神よ、あの人が戻ってきたんだ

ロニー・ヴァヌッチの劇的なドラミングと見事に調和するその歌声は、馴染み深い地元の会場で聴くのに最適である。

My God

 

10. Dying Breed

同じく『Imploding The Mirage』からのシングルである「Dying Breed」は、王道のロック・バラードとして聴くこともできるザ・キラーズならではのラヴ・ソングだ。フラワーズが、自分が書いた中でもっとも”素敵な”内容だと話している歌詞はこんな感じだ。

From the coveted touch of a girl in love
I was lifted by the sound of a spirit in need
Baby, we’re a dying breed
恋する少女の物欲しげな手つきによって
満たされない心の音が聞こえ、僕の胸は高鳴った
愛するきみ、僕らは絶滅危惧種だね

The Killers- "Dying Breed" (Visualizer Video)

 

フェスティヴァルのステージで映える至高のバラード

11. Spaceman

フェスティヴァルのステージでパフォーマンスを披露するには、それに相応しいセットリストが必要になる。シングルのB面曲や認知度の低いレパートリーに割く時間はなく、 (たとえほかのアーティスト目当てで訪れた人であっても) 観客が一緒に歌える有名曲を揃えなければいけない。

ザ・キラーズにとってその最たるものは、シンセサイザーをフィーチャーした壮大ナンバー「Spaceman」であろう。「oh oh oh oh oh oh oh oh oh」と歌うことさえできれば、それだけで十分なのだ。

The Killers – Spaceman

 

12. Human

「Human」も同じく、フェスティヴァルにおあつらえ向きの1曲。ひとつ問題があるとすれば、「僕らは人間か、それともダンサーか / are we human or are we dancer?」という秘密の呪文を歌っていると、「よくわからないし文法上正しくない」とケチをつけてくる人がいるかもしれないことくらいだ。

The Killers – Human (Official Music Video)

 

13. Somebody Told Me

キャッチーかつ (良い意味で) 難解なフェスティヴァル向きの歌という意味では、「Somebody Told Me」にも似たところがある。

Somebody told me
You had a boyfriend
Who looks like the girlfriend
That I had in February of last year
誰かに聞いたんだ
きみに彼氏がいたってさ
その人は僕の前の彼女に似ているらしい
僕が去年の2月に付き合っていた人さ

という一節は、思わず耳を疑ってしまうような内容である。

The Killers – Somebody Told Me (Official Music Video)

 

14. All These Things That I’ve Done

「All These Things That I’ve Done」はダイナミックな歌といい、迫力のあるギター・イントロといい、じっくりと進んだあとに盛り上がりの絶頂を迎えるブリッジといい、どこを取ってもフェスティヴァルにぴったりの楽曲だ。

「僕には信念がある、だけど僕は兵隊じゃない / I’ve got soul, but I’m not a soldier」というパートをひたすら歌っていると、噴射された紙吹雪が頭上を舞い始める、そんな様子が目に浮かぶようだ。

The Killers – All These Things That I've Done (Official Music Video)

 

15. The Way It Was

歌詞を覚えるのが苦手な人も、心配はいらない。フェスティヴァルで「The Way It Was」を演奏するとき、フラワーズはいつも合唱の仕方を手ほどきしてくれる。

If I go on with you
Could it be the way it was?
Darling
きみのそばに居続ければ
昔のように戻れるかな?
ダーリン

というパートでは、一緒に歌ってほしいと呼びかけてくれるはずだ。だから、予習しておく必要はないし、自信たっぷりに歌おうとして高価なドリンクを地面に置く必要もないのだ。

The Killers – The Way It Was

 

燦然と輝くアリーナ級のアンセム

16. The Man

5作目のスタジオ・アルバム『Wonderful Wonderful』をリリースしたころのザ・キラーズは、生まれ育ったラスベガスのイメージそのものである華やかさや艶やかさをすっかり自分のものにしていた。

このアルバムからのファースト・シングルである「The Man」は、そのことを象徴する1曲だ。堂々たるディスコ・サウンドや、コーラス隊によるハーモニー、そして大胆な内容の歌詞といった要素がそれを物語っている。

The Killers – The Man (Live From Jimmy Kimmel Live!)

 

17. Runaways

彼らが真のアリーナ級アーティストになる前から、その片鱗を感じさせていた楽曲のひとつが「Runaways」だ。繊細なピアノの音色で幕を開け、ブリッジとコーラスではスタジアム級のスケールへと展開するこの曲は、1980年代の名曲群と比べても遜色ないバラードである。

「僕らは明日まで待っていられないんだ! / We can’t wait till tomorrow!」というパートでは、一緒に叫んで声を潰すこと請け合いである。

The Killers – Runaways (Live On Letterman)

 

18. When You Were Young

その点では、セカンド・アルバムに収録されている「When You Were Young」にも似たところがある。キューニングのエモーショナルなギター・ソロも印象的な同曲でフラワーズは、悪魔の水と救世主について歌っている。

ライヴではパフォーマンス中、火花のシャワーが降り注ぐ演出がなされることも多い1曲だ。

The Killers – When You Were Young (Live From The Royal Albert Hall)

 

19. Read My Mind

他方で「Read My Mind」は、満員のスタジアムにいても、窓の開いた車中で友人ふたりに挟まれて座っていても、どちらのシチュエーションにも合うナンバーだ。

だが、特定の料理に合わせて出されるワインと同様、この壮大な曲に最適なのはアリーナ級の会場である。

The Killers – Read My Mind (Live On Letterman)

 

20. My Own Soul’s Warning

2020年の『Imploding The Mirage』は、ザ・キラーズがスタジアム級のグループであることを堂々と自認し始めたような作風だった。同作の冒頭を飾るアンセム「My Own Soul’s Warning」はその最たる例である。

自信たっぷりで大胆な、スケールの大きいサウンドが特徴の1曲だが、力強いドラムや渦巻くようなギターをかき分けて轟く「きみのいる場所に戻りたかっただけなんだ! / I just wanted to get back to where you are!」というフラワーズの歌声に合う会場は、アリーナ以外に考えられない。

The Killers – My Own Soul’s Warning (Michael Hili Video)

ここで触れられていないザ・キラーズのベスト・ソングに心当たりがあるなら、下のコメント欄を通じ、是非教えて欲しい。

Written By Erica Campbell



ザ・キラーズ『Pressure Machine』
2021年8月13日発売
CD / iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music


ザ・キラーズ『Imploding The Mirage』
2020年8月13日発売
CD / iTunes Store/ Apple Music / Spotify



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