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ザ・ローリング・ストーンズによる80年代のベスト・ソング20【動画付】
1980年代、ザ・ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)の立ち位置は独特だった。当時は、ザ・ビートルズやレッド・ツェッペリンなど、彼らとともに1960年代や1970年代を牽引したロック界のレジェンドはほとんどが既に解散していた時代だった。なかには1980年代に再集結するグループもあったが、活動が長く続くことは稀だった。しかしその中にあっても、ストーンズが勢いを失うことはなかった。
ザ・ローリング・ストーンズが1980年代にリリースした一連の優れた楽曲は、ポップスやロックの概念が大きく変化しても彼らが時代にしっかり順応し続けていたことをあらためて認識させてくれる。それだけでなく、これらの楽曲はシンセ・ポップが流行し、中身より外見が重視されることも多かった1980年代に、真のロックンロール・スピリットを見せつけてくれたのだ。
ここでは、ザ・ローリング・ストーンズが1980年代に至ってなお、“世界最高のロックンロール・バンド”の称号に相応しかったことがわかる名曲の数々をランキングに纏めた。
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20位 All About You(『Emotional Rescue』収録、1980年)
ザ・ローリング・ストーンズが1980年代に入って最初にリリースしたアルバム『Emotional Rescue』のクロージング・ナンバー「All About You」は、キース・リチャーズが自らの歌唱で披露したほろ苦いバラードだ。
これは、パートナーだったアニタ・パレンバーグとの破局を題材にしたものといわれている。なお、聴き手の胸に迫るサックスの演奏はボビー・キーズが演奏している。
19位 Sleep Tonight(『Dirty Work』収録、1986年のアルバム)
パリで行われた「Sleep Tonight」のレコーディングにチャーリー・ワッツは参加できず、彼に代わってロニー・ウッドがドラマーを務めた。その演奏についてチャーリーは「俺にはあれ以上のことはできなかった」と振り返っている。
この曲はピアノを中心に据えた甘いバラードだが、リチャーズはここでも見事なヴォーカルを披露。さらにエレクトリック・ギターとアコースティック・ギターも演奏している。
18位 Too Much Blood(『Undercover』収録、1983年)
1980年代のザ・ローリング・ストーンズは、パンク、ロック、ブルース、ディスコ、ソウル、ヒップホップなど多様なジャンルの音楽性を取り入れた名曲を数多く残している。そのひとつである「Too Much Blood」は、世界各地の凶悪犯罪に対するメディアの過激な報道を題材にした1曲だった。
ミック・ジャガーが歌と語りを披露したこの曲には、映画『悪魔のいけにえ』の名前も登場する。ミックはこう語る。
「俺はすごいラッパーなんかじゃない。あれはその場で考えたんだ。ほとんどの部分はまったくの即興だよ。中には後から整えた部分もある。上品な言葉に直したわけじゃなくて、もっと響きの良い言葉に変えたんだ。とにかく、あれは思いつくままラップしたものだ。紙に書き留めてもいなかったよ」
17位 Neighbours(『Tattoo You』収録、1981年)
ミック・ジャガーがご近所トラブルを題材に書いた1曲。音楽のボリュームが大きすぎると苦情を入れられ、ニューヨークのアパートから退去させられたリチャーズの実体験が基になっており、こう歌っている。
Neighbours / Have I got neighbors?
Ringing my doorbells / All day and all night
ご近所さんよ / 俺にご近所さんなんていたのか?
俺の家のベルを一日中鳴らしやがる
ほか人の部屋を窓からのぞき見るアルフレッド・ヒッチコック監督の映画『裏窓』からも影響を受けている同曲「Neighbours」では、ジャズ界の名手、ソニー・ロリンズが高揚感のあるテナー・サックスを披露している。
16位 Rock And A Hard Place(『Steel Wheels』収録、1989年)
ロンドンのオリンピック・スタジオで行われた「Rock And A Hard Place」のレコーディングには、オールマン・ブラザーズ・バンドの名キーボーディストであるチャック・リーヴェルが参加した。ミック・ジャガーは次のように話す。
「これは“Start Me Up”みたいな類の曲さ。曲が始まった途端、ダンスフロアに駆け出したくなるようなね。本当に良い意味で、すごく70年代っぽい曲だ」
そんな同曲は、激しいギター・プレイとパワフルな管楽器の音色が印象に残るアップビートなナンバー。管楽器の演奏は、熟練のセッション・ミュージシャン集団であるキック・ホーンズによるものだ。1980年代のストーンズの代表曲と呼ぶに十分相応しい1曲である。
15位 Winning Ugly(『Dirty Work』収録、1986年)
当時ソロ・アルバム『She’s The Boss』を完成させたところだったリード・シンガーのミック・ジャガーは、ザ・ローリング・ストーンズとしてのバンド活動に復帰してすぐに「Winning Ugly」を書いた。
ジョン・レーガンがベースを弾いた同曲は泥臭いハード・ロック・ナンバーで、シングルとしてもリリース。なお、『Dirty Work』はザ・ローリング・ストーンズのスタジオ・アルバムとして初めて、米国盤に歌詞カードが付属した作品だった。
14位 Hang Fire(『Tattoo You』収録、1981年)
ミック・ジャガーとキース・リチャーズは1980年代初頭に発表した「Hang Fire」で、UKの厳しい現実を描き出した。キースはこの曲について、「金が足りなくなって」国家の衰退を招いた「醜い政治家たち」への非難と表現している。
同曲はアメリカのラジオ局で人気を博し、米ビルボード誌のシングル・チャートで20位まで上昇。なお、ここでピアノを弾いているのはイアン・スチュワートである。
13位 One Hit (To The Body)(『Dirty Work』収録、1986年)
『Dirty Work』の1曲目に配された「One Hit (To The Body)」は、ミック・ジャガー、キース・リチャーズと並んでロニー・ウッドが作曲に関わったストーンズにとって初めてのシングルでもある。クールなアコースティック・ギターで幕を開ける同曲のバック・コーラスには、豪華すぎるほどのメンバーが参加。
ボビー・ウーマック、パティ・シャルファ、ジミー・クリフ、トム・ウェイツらのほか、プロデュースを手がけたスティーヴ・リリーホワイトの妻だったカースティ・マッコールも華を添えている。ミュージック・ビデオでは、ミックとキースが手合わせをする姿も見ることができる。
12位 Black Limousine(黒いリムジン)(『Tattoo You』収録、1981年)
キース・リチャーズ曰く、ブルージーなサウンドの「Black Limousine」は「女性との関係を広い心で描いた」1曲だ。ロニー・ウッドによる力強いギター・プレイは、テキサス出身のブルースマン、ホップ・ウィルソンの演奏に影響を受けたものだという。
11位 Send It To Me(『Emotional Rescue』収録、1980年)
ミック・ジャガーはアルバム『Emotional Rescue』で幅広いスタイルの歌声を披露している。「Where The Boys Go」では軽いロンドン訛りで歌っているほか、「Send It To Me」でのヴォーカルは、往年のブルースの影響が色濃かった60年代の彼のそれを想起させる。
心地よいレゲエ調のビートや、リチャーズがR&B風に仕上げたすばらしいギター・ソロが印象的な「Send It To Me」は、まさに1980年代のストーンズの名曲と呼ぶに相応しい。随所に聞かれるハーモニカの演奏は、70年代のシングル「Miss You」にも参加したハーレム生まれのミュージシャン、シュガー・ブルーによるものである。
10位 Almost Hear You Sigh(『Steel Wheels』収録、1989年)
1989年8月リリースのアルバム『Steel Wheels』は、ベースのビル・ワイマンにとってストーンズ脱退前最後のフル・アルバムとなった。同作に収録された「Almost Hear You Sigh」は、ジャガーとリチャーズがテレビ番組『サタデー・ナイト・ライヴ』の専属バンドでドラムを叩いていたスティーヴ・ジョーダンと共作した1曲。キャッチーで感動的なラヴ・ソングに仕上がっている。
この曲はグラミー賞で”最優秀ロック・パフォーマンス賞 ヴォーカル入りデュオまたはグループ部門”にノミネートされたが、エアロスミスの「Janie’s Got A Gun」に敗れて惜しくも受賞を逃した。リチャーズは「Almost Hear You Sigh」について、「“Beast Of Burden”のいとこ」のようなバラード曲だと表現している。
9位 Harlem Shuffle(『Dirty Work』収録、1986年)
ボビー・バードとアール・ネルソンから成るボブ&アールは、50年代にネルソンがリード・ヴォーカルを取った「Buzz-Buzz-Buzz」で成功を収めて以来、数々のヒット曲を生み出してきたデュオだ。ストーンズは『Dirty Work』の中で、そんなふたりが1963年にヒットさせた「Harlem Shuffle」をカヴァー。
アルバムからのリード・シングルとしてリリースされ、アニメを交えたミュージック・ビデオも作られた。ボビー・ウーマックがバック・コーラスで華を添えた同曲は、全米5位、全英13位の好成績を残した。
8位 She Was Hot(『Undercover』収録、1983年)
アップテンポな昔ながらのロックンロール・ナンバーである「She Was Hot」を語る上で欠かせないのは、セックス・ピストルとの仕事で知られるジュリアン・テンプルが監督したミュージック・ビデオだろう。
MTV向きのこのビデオには、トニー賞の受賞経験もある女優のアニタ・モリスが出演。彼女がバンド・メンバーをひとりずつ誘惑していくという面白おかしな内容に仕上がっている。リリースから四半世紀経ってもライヴで演奏され続けていた、1980年代のストーンズによる代表曲のひとつである。
7位 Mixed Emotions(『Steel Wheels』収録、1989年)
ミックとキースはバルバドスでの休暇中、リラックスした雰囲気のまま「Mixed Emotions」を作曲した。結果として完成したのは、肩の力の抜けた王道サウンドのロック・ナンバーである。
同曲は世間からの反応も良く、現在でもストーンズによる1980年代の名曲とみなされている。1989年8月には『Steel Wheels』からの最初のシングルとしてリリースされ、全米チャートで5位まで上昇した。
6位 She’s So Cold(氷のように)(『Emotional Rescue』収録、1980年)
どうしても振り向いてくれない「素敵で優しい美女 (sweet, sweet beauty)」について歌ったジャガー作の1曲。30年もの間ライヴの定番となっていた人気ナンバーでもある。
歌詞に登場する「彼女は忌々しいほど冷たい (She’s so goddamned cold)」という一節はキリスト教系のラジオ局の怒りを買ったため、電波に乗るチャンスが減らないよう、歌詞を修正したクリーン・ヴァージョンも制作された。ロニー・ウッドによるスティール・ギターも印象的な同曲は、全英チャートで33位を記録した。
5位 Tops(『Tattoo You』収録、1982年)
ストーンズの面々は「Tops」のパーカッションに、以前の彼らの作品でプロデューサーを務めたジミー・ミラーを起用(同曲にはニッキー・ホプキンスも参加)。実に才能豊かなミラーは、ソウルを下地にした印象的なグルーヴの中核を担う働きを見せた。
歌詞の内容は、スターを夢見る女性を利用して利益を得ようとする業界人を描いたもの。その中では、音楽業界の権力構造に身を置く「男たちの誘い文句はどれも同じ (every man has the same come-on)」であると歌われている。
偶然にも、『Tattoo You』はジャケット・デザインの面で”トップ”・レベルの作品になった。事実、アート・ディレクターを務めたピーター・コリストンは、グラミー賞の最優秀アルバム・パッケージ賞を受賞している。
4位 Undercover Of The Night(『Undercover』収録、1983年)
「Undercover Of The Night」は、ストーンズの楽曲の中でも特に政治色が前面に出た楽曲だ。
All the young men, they’ve been rounded up
And sent to camps back in the jungle
And people whisper, people double-talk
若者はみな駆り集められ
ジャングルの中のキャンプに送られる
そこでは陰の噂や裏切りが蔓延っている
という力強い歌詞は、当時問題となっていた南米諸国での人権侵害のことを歌ったものだった。
ロン・ウッドとキース・リチャーズのギターが見事に絡み合うこの曲について、ミックは、ウィリアム・バロウズの小説『Cities of the Red Night』から「大きな影響を受けた」と認めている。同著は、アルゼンチンとチリで行われていた政治的・性的抑圧を題材にした内容である。
3位 Emotional Rescue(『Emotional Rescue』収録、1980年)
1980年作『Emotional Rescue』の表題曲をジャガーは電子ピアノで作曲した。そのときから、リリースされた音源と同じような裏声を使って歌っていたのだという。ディスコ風のサウンドで全米チャートの3位まで上昇した同曲に関しては、ジョン・レノンもその死の直前に次のような賛辞を送っている。
「ミック・ジャガーはこの20年ずっと良い曲を作り続けている。それなのに彼は十分に評価されていない。『彼はすごいよ、37歳にもなって“Emotional Rescue”みたいな名曲を書いているんだから』なんていう風にあいつを評価する人は少ないんだ。とにかく俺はあの曲が好きだし、ほかにも好きな人はたくさんいるね」
その言葉通り、プリンスも同曲の大ファンだったといわれている。
2位 Waiting On A Friend(友を待つ)(『Tattoo You』収録、1982年)
1982年にリリースされ、現在では1980年代のストーンズ屈指の名曲とされる「Waiting On A Friend」だが、もともとは1972年の『Goats Head Soup』のレコーディング・セッションで制作された曲だった。ミック・ジャガーはのちにこんな風に語っている。
「そのときからみんな気に入っていたけど、歌詞がついていなかったんだ。あとから加えた歌詞は、バンド・メンバーの友情についての優しくて温もりのある内容になった」
同曲ではジャズ・ミュージシャンのソニー・ロリンズがサックスを吹いているほか、サンタナのパーカッショニストとして有名なマイケル・カラベロがギロ、クラベス、カバサ、コンガを演奏している。
また、同年のMTVでひっきりなしに流れていたミュージック・ビデオも、この曲の人気を後押しした要因のひとつだ。撮影場所になったのはニューヨークのセント・マークス・プレイスにある、レッド・ツェッペリンの『Physical Graffiti』のジャケット写真で有名な建物の前である。
1位 Start Me Up(『Tattoo You』収録、1982年)
耳に残るリチャーズのギター・リフで始まる「Start Me Up」は1980年代のザ・ローリング・ストーンズを代表する楽曲というだけでなく、ストーンズのキャリア全体で見ても屈指の名曲である。
もともとは彼らが1975年から温めていた曲だったが、しばらくリリースには至らず、『Tattoo You』の収録曲候補として7年後に再び取り上げられた。エンジニアを務めたクリス・キムゼイによれば、同曲のレコーディングには6時間以上かかったという。
クリスはまた、この曲がうまく形になったのは、ジャム・セッションをしながら曲としての最適解を見つけていく彼らの”魔法のような能力”のおかげだったと話す。ジャガーとリチャーズの作による「Start Me Up」は、名曲とされるに相応しく、世界中でヒットを記録した。
Written By Martin Chilton
ザ・ローリング・ストーンズ『LICKED LIVE IN NYC』
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ザ・ローリング・ストーンズ『Live at the El Mocambo』
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